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ナルシスト、ウサギのボスを狩る

ウサギ親方の咆哮が辺りに響く。


「ウォォォォオ!!」


柔らかい風はその咆哮に打ち消され、辺りには嫌な風が吹く。


「ヤナギさん!こいつはまずいです!逃げましょう」


ハノが武器を構えているヤナギに逃げようと諭す。


「そうしたいのは山々だが、こいつは俺たちを獲物と思っている。少しでも逃げようとしたら、俺たちの首と身体は離れ離れだろうな」


「…やるしか、ないんですか」


ハノが絶望した様子で言う。ヤナギは短剣を握る力を強くする。


「ハノ、そこで後方支援を頼む。俺は何とかこいつの首を掻っ切る。安心しろ、俺のこの美貌がこいつなんぞに負ける訳がない」


「…この状況でその自信はありがたいです。では、僕がファイアでモンスターの顔を狙います。それと同時に、モンスターに向かって突っ走ってください。あと、鏡を見るのはやめてくださいね!」


「………」


「なんか言ってくださいよ!はぁ……いきますよ!」


ハノは杖を構えながら、ウサギ親方に向かって魔法を唱えた。


「ファイア!」


魔法と同時に、ヤナギは短剣を構えながら走り出した。ウサギ親方もこちらに向かっている。ウサギ親方が走る度、地面が揺れているのがわかる。

魔法がウサギ親方に当たったが、どうやらあまり効いていないようだ。しかし、顔面に命中したため、少しだけ隙ができた。


「そんなのに見とれてないで、俺の方を見るんだな!」


短剣がウサギ親方の首筋を狙う、しかし、皮膚はまるで石のように固く、上手く切り込めなかった。


「ヌゥォオオ!」


ウサギ親方がヤナギに向かって思い切り腕を振り、攻撃の構えをとる。

咄嗟に防御の姿勢をとるが、木に向かって吹き飛ばされてしまった。骨がミシミシといっているのがわかる。腕と背中を動かす度に、ジリジリとした痛みがやってくる。


「痛っ………ふっ、親方はお怒りだな。攻撃に感情が乗っているのがわかる」


「言ってないで!追撃来ますよ!」


ハノの言葉にハッと、ウサギ親方の攻撃を避ける。間一髪でよけれたが、空気が切り裂かれる音が耳に入ってくる。受けていたら、骨が折れていただろう。


「恐ろしいやつだよ、お前は!」


ヤナギは短剣を親方の目に刺した。


「ウガアアア!!!」


流石に痛かったのか、ウサギ親方は痛そうに咆哮をする。


「ハノ!この隙に、ありったけこいつの背中に魔法を打ち込め!」


「はい!ファイア!」


ウサギ親方がよろけているうちに、とにかく魔法を打ち込んでいるハノ、一つ一つはあまり効いていないが、連続で攻撃されると流石に効いてきたのか、背中の皮膚が少し焼かれてきた。


「ここまできたら、刃はもう通るだろ!」


ヤナギは力いっぱいに刃を突き立て、思い切りウサギ親方の背中を刺す。肉が焼けて脆くなっていたのか、刃が少し通った。そのまま肉を切り裂き、血が辺りに弾ける。白い毛に、赤色の血が染ている。


「アアアガァアァ!」


ウサギ親方はまた咆哮をあげた。

ウサギ親方は一度、遠くにジャンプに、距離をとった。

ウサギ親方の鼻が荒く鳴る。

地面を踏み潰す音が、さっきより重かった。


「このまま行けば何とかなりそうだな。ふむ、俺は戦ってても絵になるな…」


「鏡なんか戦闘中に見ないで!!来ますよ!」


ヤナギは素早く手鏡をしまい、短剣を構えながら向かい合った。攻撃を寸前で避け、背中を狙うがウサギ親方は腕でその攻撃を弾き、距離をとった。


「…こいつ、学んだな。面倒くさい状況になった。もう一回魔法を叩き込めるか?」


「すいません。さっきのでMPが完全に底を尽きました。回復しようにも、ポーションを飲む時間もないでしょうね」


背中を狙おうにも、ウサギ親方は背中を守るように立ち回る。


「…やむを得ん。これを持ってろ」


「え?」


ヤナギは持っていた短剣をハノに渡した。そして、正面からウサギ親方を迎え撃った。


「ちょっと、正気ですか!?あんた死にますよ!」


「安心しろ、この俺の美貌を武器にすれば、万物を破壊できるだろう。それよりお前は下がっていろ!」


ハノは信じられないと言う顔をしながら、ヤナギを信じ、後ろに下がった。ウサギ親方はヤナギの正面から思い切り突っ走ってきており、どんどんとスピードが上がっている。


「本当は使う気はなかったが…この状況では仕方がない」


ヤナギは手鏡で髪などを確認し、完璧な状態にした。ウサギ親方がヤナギの正面で、攻撃をしようとすると、ヤナギは拳を思い切り握りしめた。

草が、揺れ、空気も揺れる。


「食らうがいい!俺の究極の一撃!ビューティフル……アタック!」


妙に発音の良い言葉をヤナギが言うと、拳が黄金に光り出す。その姿は、確かに美しかった。

思い切りヤナギが拳をウサギ親方の顔面に向かって出すと、ウサギ親方の顔面が一瞬で弾け飛び、凄まじい突風が辺りに吹いた。

顔が無くなったウサギ親方、力なく後ろに倒れ込んだ。


「これが、俺の美貌の力……だ…」


ヤナギは全身から力が抜け、糸が切れた人形のように倒れた。

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