ナルシスト、紋章を得る
「……え?本気、です?」
「この島……確かに民族はいるらしいが、別にそこまで発展してないらしいぞ?」
「……遠い」
「安心しろ。俺は常に正気だ。やっと見つけたんだ……」
不気味に笑っているヤナギを見た三人は、円を作り話し合っていた。
「多分ですけど、本気ですよ」
「マジか……あそこの島に本気で行くのか……」
「あんまり……行きたくない」
ヤナギの目をチラチラと確認するが、あれは本気で考えている目。
三人はどうにか丸め込もうと、ヤナギへと近づく。
「えっと……ヤナギさん?あそこの島はですね、名前もないような島ですよ?」
「それに、別にそこまでいいもんがある訳でもないしよ」
「他のところでも、いい」
「……お前達にはわからんだろうが、俺にとっては大切なところなんでな……どれだけの時間がかかろうが、俺はあそこに向かうぞ」
話し合っても意味がないと考えた三人。
何とか妥協案を出そうと絞り出すが、いい案があまり思い浮かばない。
「行くとしても……ここからだと相当時間かかりますし……それに順次も必要なんです。他にもかなりやることあるので、行けても、半年後とかに……」
「よし、それでいい。いくら時間がかかろうが、俺は行ければいい。そこに何があるのか、見つけたいだけなのだ」
案外簡単に妥協してくれたヤナギ。
三人は安堵するが、半年後には行かないといけないと言う事実に、あまり乗り気ではなかった。
三人が頭を抱えている時、ヤナギは後ろから声をかけられた。
それは、いつも受付で聞く女性の声。
「こんにちは、ヤナギさんですね?色欲を討伐してくれたということで、報酬などがございます。お仲間様もご一緒に、奥の部屋に来て貰えますか?」
「ん?ああ、別に構わんが……」
四人は一度動きを止め、受付嬢に言われた通りに奥の部屋へと入る。
入った瞬間、目入ったものは、机の上にある茶色の袋だった。
それには、かなりの何かが入っているのか、今にも破れそうになっている。
四人がソファーに座ると、前にいる男が話を始まる。
「よく来てくれました。ヤナギさんと、その御一行様。私は、マルクス・クラウスと言います。この国のギルドを管理している者です。以後、お見知り置きを」
「早速ですが、どうぞ。こちらが、国の防衛戦に参加してくれた報酬です」
「……にしては、多すぎるのでは?」
ヤナギは手で大きさを軽く見てみるが、明らかに大きい。机が悲鳴をあげるほどの重さをしており、触ってみるが、その質量がよくわかる。
「もちろん、色欲討伐に大きく関わっていると聞いているため、その分色をつけてお渡ししてますよ」
「なるほど……」
三人は袋を開け、輝く金貨を見て圧倒されているが、ハノは冷静にマルクスに話を続ける。
「それだけですか?これを渡すだけなら、外でもできそうですけど……」
「かなりの量ですので、あまり見られたくないかと思いまして……ですが、他にも用はありますよ。すみませんが、ギルドカードを渡してくれませんかね?」
四人は素直にギルドカードをマルクスに渡す。
すると、マルクスは何やら変な装置を取り出し、そこにカードを入れる。
装置に手をかざし、少し光ったと思うと、すぐにカードを取り出しこちらに返してくる。
「お待たせしました、色欲討伐に参加する勇気、それを成し遂げる正義の心。それにより、あなた方に【勇気】【正義】の紋章をお渡しいたします」
「おお……そういう事か……ふっ、一気にふたつも増えるとはな……流石は俺だ」
「多少依頼をこなせば【信仰】は貰えますけど……他の紋章を貰うのは初めてですね……」
「俺は勇気が被ってるから、一個だけだな。まあいいけどよ」
「私は、二個増えた。四個」
「少しでも喜んで貰えたら幸いです……さて……」
四人がカードに記された紋章を眺めていると、マルクスがソファーにさらに深く腰掛け、こちらを見つめる。
その表情は、先程の優しい顔ではなく、凛々しく、真剣な顔をしていた。
「すみませんが、ここからが本題です。まずは、こちらをご覧ください」
マルクスが一枚の紙を机の上に乗せる。
そこには、皮がただれ、肉が腐敗し、骨が露出している動物の姿があった。
一部の動物は身体が溶けているようになっており、ハノは思わず口を塞ぐ。
「こちら、最近多発している現象です。動物達が、まるで【腐った】ようになっている姿が多く見られます。そして、よく見ると動物だけでなく、周りの植物も同じようになっています」
「……愉快犯か?それとも、モンスターか?」
「まだ全容は見えていないのです……そのため、あなた達に調査をお願いしたい。最近、ギルドの依頼が少ないのは、安全が確保できるまでは、極力仕事をさせたくないためです」
「今はイータさんが調査に向かっています」
「確かに、表彰の時も、街でも見かけてないな……そういう事か」
「ですが、あまり決定的な証拠は見つかっておりません。見つかるのは、腐った痕跡のみ……どうか、調査をしてくれませんか。もちろん、報酬はその分弾みます」
ヤナギ達は軽く目線を合わせ、小さく頷く。
口角を少しあげ、ヤナギは腕を組み、自信満々に口を開く。
「日本に行くまでの準備運動に丁度いい……いいだろう。このヤナギが、その依頼を受けてやろう」
マルクスは表情を明るくし、微笑む。
「その海のように広い心に、感謝いたします」




