ナルシスト、ようやく見つける
ガツガツと料理を食べているミヤモトを横目に、ヤナギはチビチビと料理を喉の奥に流す。
口に入れる度に、絶妙な味が広がり、不快感が増す。
それでも、手を止めずに食べ続ける。
ミヤモトが食べ終わった数分後に食べ終わったヤナギ。
店主から小さいが拍手を貰う。
「……ふぅ……きついものがあるな……さっきから気になっていたが、この店はあまり繁盛していないのか?」
「まあ、料理を食べたらわかることですが、僕はあまり料理が上手くないので……本当は店仕舞いするつもりだったんですが、その時にミヤモトさんが常連さんになりまして……」
「俺からすりゃ、他の奴らの方が分からねぇな。こんなに美味いもん、俺はほかに食ったことがない。どうだ?お前さんもここの常連になるか?」
「それは遠慮したいが……だが、こういった場もあった方がいいか……料理は頼まないが、偶に顔を出すとしよう」
「それはありがたい限りです。僕も少しでもここにお客さんが来てくれたら嬉しいですしね」
「……そろそろ時間だな。ご馳走様。代金はここに置いておくぞ」
「はい、丁度。ありがとうございました」
「またな!お前さん!」
二人に軽く手を振り、ヤナギは仲間の待つギルドに向かう。
「……そういえば、あの人の名前、聞いてませんでしたね」
「……あっ、すっかり忘れとったな……まあ、いつか会えるだろう」
そんな会話を、ヤナギの去った後の店で二人は交わしていた。
ヤナギがギルドに着くと、もう三人は集まって何やら話し合いをしていた。
「どうした?なにか困り事か?」
「あっ、ヤナギさん。おはようございます。実は……」
話を聞くと、どうやら現在は依頼が極端に少なくなっており、その少ない依頼はもう他の人が受けてしまったため、依頼が受けれないとの事。
「なるほどな……俺の美しさで何とかなるか?」
「残念ながらなりません……どうしましょう……」
「ん〜〜なあ、ミラ。俺達はこういう時にどうしてたっけ?忘れちまった」
「……だいたいは、他のギルドに行ってた」
「他のギルド……となると……」
ハノは途端に嫌そうな顔をする。
ヤナギは不思議に思い話を詳しく聞こうとする。
「ギルドというのは、だいたいはひとつの国にひとつ、つまり」
「……別の国に、行くしかないんですよね」
「ん?何がダメなのだ?俺の美しさをせっかく他の国に広めるチャンスだぞ?」
ハノは大きくため息を着く。
すると、カバンから何やら大きな紙を取り出す。
その紙を机の上に広げる。
その瞬間に、ヤナギの頭に電流が流れる。
「ヤナギさん、地図を見たことはありますか?この国から他の国に行こうとなると、かなりの時間と労力がかかりますよ?……ヤナギさん?」
地図に書かれている大陸。
それは、間違いなく、元の世界の地図と同じだった。
細かい部分は違うが、大陸の位置などは一致している。
ヤナギは口元を手で覆いながら地図を見つめる。
そして、さっきあったミヤモトのことが頭によぎる。
地図の中の、日本に近しい島を探す。
島はすぐに見つかった。
だが、名前は書かれておらず、島がひとつぽつんとあるだけだった。
「……ヤナギさん?」
「……決めたぞ……」
「どうした……?なんか怖いぞ?」
ヤナギは思わず笑みを浮かべる。
不気味な笑いがギルドに響く。
その場にいる全員の目線が、ヤナギ集中する。
いつもであれば、自分を称えるかのようなことを言っていただろうが、異世界に故郷である日本の存在を発見できたヤナギに、そんな視線はどうでもよかった。
この島は本当に日本なのか?
この地図は本当に正確なのか?
帰れる保証はあるのか?
まだ他の転生者はいるのか?
色々な考えが浮かぶが、それでもヤナギの意思は、揺るがなかった。
「俺は、この島、日本を目指す」
ヤナギは小さな島を指差しながら、仲間に宣言する。




