ナルシスト、壇上へ上がる
仲間の元に帰ろうとすると、どうやら先に宿に帰ったようだった。
ヤナギは適当に近くの宿を借り、そのまま筋トレ後に就寝した。
「……もう朝か……」
窓から迫ってくる朝日を手で塞ぎながら、ヤナギは宿を出て仲間の元に向かう。
ギルドに向かうと、仲間がひとかたまりになっていた。
「あっ、来たかナルシ。昨日はなんも言わずに帰って悪かったな」
「いやいい。それほど疲れていたのだろう……それと、ハノはどこだ?」
「それがよく分かんなくてよ……部屋にこの紙ひとつ置いてどっか行っちまった」
「む?どれ……『急用が出来たため、今日の表彰式には出れません』……表彰よりも優先すべきものはあるのか?」
「さあな……というか、そろそろ時間だぞ。みんな移動開始してる。俺達も行こうぜ」
ヤナギはどこかに行ったハノを置いて、ヨウとミラと共に表彰式へと向かう。
「まあ、この表彰はあまり気にしなくても良いかもな。多分だが、街の修理で忙しく、来れる人は余りいないだろうしな」
「……甘いぜ、ナルシ」
意味深なことをいうヨウを横目に、ヤナギは一足先に会場へと向かう。
会場はコロシアムのような闘技場で行われた。
あまり期待せずにヤナギが中心に出ると、大きな歓声に包まれた。
観客席には隙間なく人が座っており、見るだけでその熱量が伝わってくる。
「……これは……」
「普通に考えろよ。ずっと世界に被害を与えていた七囚人の一人がやっと討伐されたんだ。そりゃ、こうもなるだろうぜ」
「……確かに、そうか」
ヤナギは歓声の熱量に押され、普段の様子は身を潜めていた。
手鏡が壊れてしまったため、勘で髪を直していると、会場に声が響いた。
「あ〜〜聞こえとるかのう……」
声の方向を見ると、王冠を被り、以下にも王っぽい人がマイクのようなものを持ちながら話をしている。
「まずは!!色欲討伐に大きく貢献したものに盛大な拍手を!!!」
耳が痛くなるほどの拍手喝采が響く。
ヤナギは耳を抑えそうになるが、ヨウに止められその音を聴く。
「はは、俺もこんなの初めてだぜ……正直緊張してる」
「しないやつがいるか……でも、こういうのもいいものだな……俺の美しさがよく伝わるだろう?」
「調子でてきたな……ミラ、平気か?」
「人混み……無理」
「……ナルシ、よろしくな」
「何?」
ヨウはそう言い残し顔色が悪いミラと共にそそくさと会場から外に出てしまった。
ヤナギは広い会場の人混みの中、ぽつんとたっていた。
「何ボサっとしてんだ。せっかく国王が話し始めてんだ、聴いてやれよ」
「……レインか。俺はあまり国王に興味がなくてな……」
「それは同意だが、一応この国で一番偉いやつだぞ」
レインと軽い会話を交わしながら、国王の話を軽く聞き流す。
「――というわけだ。そのため、実際に色欲を討伐したものに壇上に上がってもらう!!まずは!サナカ・ヤナギとその御一行!!!」
名前が呼ばれると、歓声が少し強くなった。
「……ん?」
「どうやら出番みたいだな。行ってこいよ。ナルシスト」
「……ふっ!!俺の美貌を、ここにいる全人類に伝えて見せようじゃないか!!」
ヤナギはいつものテンションで壇上へと進み出す。
壇上に上がったヤナギはいつものように堂々と立ち、その溢れんばかりの歓声を身体を浴びていた。
「……お主の仲間は一体どこに……?」
「すまないが、三人は今日ここに来れなくてな。俺だけで我慢してくれ」
「三人……誰と誰じゃ?」
「ハノ、ヨウ、ミラの三人だな」
「ならあと一人いるではないか……レイン・バ・ガーデン!!!壇上へ!!」
「……あ?」
その名前が呼ばれると、ヤナギが呼ばれたと以上に歓声が大きくなる。
黄色い女性からの歓声。
そこからは、【イケメン】などのワードがよく聞こえる。
ヤナギの気分が一気に下落する。
先程までの表情と一転、一気に険しい顔になる。
「……御一行の一人に数えられんのか……嫌だな……」
「いいではないかレインせっかく壇上に上がって歓声を独り占めできるんだからな良かった良かった」
「早口で嫉妬むき出しにすんなよ……めんどくせぇ」
ヤナギは前の軟化態度から、一気に初めにあった時の態度へと変化させ、ライバル心剥き出しになる。
「勘弁してくれよ……」
レインは面倒くさそうに、軽く頭をかいた。




