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ナルシスト、生還する

「……ん……」


目を開けると、黒色の空が見えた。

横には仲間達が、ボロボロになりながらも治療をしていた。


「ヤ……ナギさん……」


「……どうした、そんな泣きそうな顔して」


「だって……死ぬかもって……」


「俺の生命力を舐めるな。だが、能力の過剰使用は流石に死を覚悟したがな……」


ヤナギは身体を起こし、周りを見渡す。

建物は多くが崩れており、沢山の人が治療をされている。

怪我をしていない人の方が少なく、多くの人が包帯をしている。

包帯には血が滲み、していない人は傷口からダラダラと血を垂れ流している。

身体の一部を失い、虚ろな表情をしている者もいる。

明らかに勝利の余韻に浸る雰囲気ではなく、むしろこちら側に与えられた被害の方が多く感じた。


そして、白色の布を置かれた人の横で、静かに涙を流している人が多くいる。


「……街は大混乱だな……向こうも大変だっただろうな。そういえばヨウ、お前は平気だったのか?」


「んあ?ああ……まあ安心しろよ。獣人は身体の回復力が半端ねぇんだ」


「なるほどな……む……」


右腕に違和感を覚え、確認する。

よく見ると、紫色に少しだけ変わっている。

そして、あの違和感を思い出す。


「……あのトカゲ……何をしたんだ」


「なにか、あったのですか?」


「いや、なんでもない。被害がどの程度あったのか知りたくてな」


「僕が説明しよう。ヤナギくん、身体は無事かい?」


「なんとかな……まだ身体の節々が痛いが、心配はいらん」


イータから色々な事情を聞かされる。

向こうはモンスターの大群が攻められ、多くの負傷者、死者が出たこと。

そして、モンスターの中には未確認のものもいたとの事。

多分、色欲のやったことだろうが、ヤナギはそれを伝える気にはならなかった。


奥の方から白衣を着た者がこちらに歩き出している。

ヤナギの目の前に立ち、じっくりと観察する。


「……君であってるね。ちょっと来てもらえる?仲間の方は……まあ来てもらって構わないよ。あっ、私は医者でね、はいこれ」


言われた通りに、ヤナギ達は奥の方へと進む。

テントのようなところに入ると、色々な道具が置かれている。

医者は、一枚の紙を渡してくる。


「これね、君の今の身体の状態をまとめたヤツ。簡単に言うと、これから一ヶ月ほど、毎日君の適正魔法と同じ魔法の人からMPを分けてもらわないといけない。でないとまだ倒れちゃうし、最悪死ぬよ。本当に」


「……そんなことを言われてもな……闇の人なんぞ知らん……」


「それなら、いい人がいるよ。君が死にそうになっている時に分けてくれた、図書館の司書さんだ」


イータが後ろから声をかけてくる。

司書と聞いて、少し嫌な気持ちになる。別に仲が悪い訳では無い……とは思うが、あまりそういうことを頼みたくない仲のため、遠慮をしようとする。


「司書か……」


「僕じゃダメなんですか?一応全部の属性の魔法使えるんですけど」


「珍しいね。でもダメなんだよね。全属性はいらない属性も多く混じって、効率が悪いし、違う属性を入れる方が身体に悪いんだよね」


「そう、ですか」


「まあ何とか探しておいてくださいね。見つからなかったら、こちらから紹介させてもらうのでね。では、帰ってもらって大丈夫ですよ」


「……色々と感謝する。では、」


テントを出ようと席を立つ。

仲間達はもう外に出てるが、ヤナギは医者に呼び止められる。


「……ごめんね。こっからが、本題」


医師の真剣な表情に、ヤナギは深く息を飲む。



「―――――」


ハノはヤナギが帰ってくるのが遅かったため、心配でテント近くで待っている。

中での会話はよく聞こえないが、何やら深刻そうな話をしている。

中からヤナギが歩き出してくる。

その表情は、出てくる瞬間は曇った表情だったが、ハノを確認するとすぐに元の表情にもどる。


「なにか、あったのですか?」


「いや、何も無い。ただの医者のお節介だ。まあありがたいがな……」


「そうですか……なら、いいんですけどね。それじゃ、行きましょうか」


ヤナギは歩き出すハノの背中を見つめながら、手に握りしめた一枚の紙を見つめる。

紙には


【診断結果】

『貴方の残り―――――――』


ヤナギは広げた紙を、クシャクシャに握りつぶした。

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