「愛して」
色欲の身体がバラバラになり、宙を舞う。
しかし、色欲にはまだ再生できるMPが存在する。
余計なところを再生せず、身体を繋げ、そこからMPが回復するのを待てば、時間はかかるが完全復活できるだろう。
でも、色欲は、顔を再生することを選んだ。
どんどんと元の形に戻る色欲の顔。
身体は粉々。
存在するのは色欲の頭のみ。
それでも、色欲は満足そうに笑っている。
「……良かった……顔が無事で……壊されないかと怖かったわよ」
ヤナギは色欲を見つめる。
もう限界で、今にでも倒れそうだが、彼の美を止めるには足りなかった。
「お前のことを……自分に自信がなく、見た目を変える愚か者だと考えていた。だが、最期に生きることを捨ててでも、顔を再生したその生き様、敬意に値する」
「ありがと……あと、半分正解よ。私、自分の顔も、身体も、何もかもが大好き。でも、それを好きになれない人がいるものわかっているわ」
「だから、見た目を変えるのか?」
「そう、ありのままを愛して欲しいけど、できない人もいる。だから、姿を、性別を、性格を、何もかもを変えて、愛してもらうのよ」
「私は……みんなに愛して欲しかっただけよ」
「だが、努力を怠れば、俺はそれを認めれない。どんな姿形になろうがな」
「ふふっ……貴方、いい男ね……好きになっちゃう。あーあ、本当はイータちゃんを封印して逃げるつもりだったのに、みんなが愛しすぎてこうなっちゃったわ。責任、とってくれる?」
「……善処しよう」
「なら、一度でいいから」
「今の、素の私を肯定して。愛して」
ヤナギは沈黙する。
その姿を見て、色欲は少し残念そうな顔をした。
やはり、無理かと思った。
そう思った、その時。
ヤナギは急に、色欲の頭を持ち上げる。
そして、目を見つめながら、話す。
「お前は、美しい」
色欲は、メモータルは、その者は、
久しぶりに向けられる、性欲ではない、純粋な好意。
それに深く感動し、涙が溢れ出す。
「……なんで、私はこんなことになっちゃったのかしらね……」
「それは、俺にはわからん」
「……いいわ、別に。貴方は、私を愛してくれた数少ない人の中のひとりよ」
「もっと生きたかった。純粋に愛して欲しかったし、愛したかった……」
「でも、それでも、最期に愛してくれて」
「ありがと」
そっと涙の溢れる目を閉じ、ヤナギの腕の中で息を引き取る。
ヤナギは涙を隠すように目を手で隠す。
あの世で、愛してもらえることを祈って。
ヤナギの身体に激痛が走る。
地面に身体が思い切り倒れ込む。
――これは……
反動が、来た。
息ができない。
全身が焼き焦げるように痛い。
目から涙が止まらない。
汗が溢れ出す。
喉に何かが詰まっているように感じる。
血の味がする。
声を出そうにも、痛みにより何も出ない。
心臓の鼓動が、いつもの何倍にもなる。
身体を動かそうとするが、少しも動かない。
ヤナギはその場に、倒れることしか出来なかった。
目からは、赤い涙が溢れ続ける。
鮮明に、死という文字が頭に浮かぶ。




