ナルシスト、仲間を集める
扉を開けた先は、人がとても多く、なんだか息苦しい空間だった。
「ふむ…あまり長居はしたくないな」
とりあえず辺りを見渡すと、明らかに人間じゃない者もいる。
人間の背丈ほどの獣。
耳がとんがっている者。
トカゲのような風貌の者。
上げだしたらキリがない。ヤナギは適当な人に話しかけた。
「すまない。俺はここに初めて来たのだが、まずどうすればいいんだ?」
「んあ?お前さん。ルーキーか。ならまずは、あそこにいる嬢ちゃん達のところに行きな」
「なるほど、感謝する」
「いいってことよ。困った時はお互い様だ」
なんだか人の温かみに触れたような気分だった。
相手は二メートル越えの狼だったが。
「すまない。依頼を受けたいんだが……」
そこに居たのは、ショートカットの茶髪の少し背の低めの女性だった。
「はい。依頼の受付ですね。ギルドカードはありますか?」
「持ってないな」
「では、あちらの窓口に向かい下さい。あそこでギルドカードを作ってから、またこちらにお越しください」
「なるほど、感謝する」
言われた通りに違う窓口に向かう。そこに居たのは、メガネをかけたウルフカットの黒髪の背が高めの女性だった。
「すまない。ギルドカードを作りたいんだが…」
「…新規ですね……なら身分証を」
先程とは違い、少し雑な対応。たが、ヤナギはあまり気にしていなかった。こんなことを気にしていては、世界一の美貌が腐るというものだ。
「これでいいか?」
「……はい、登録できました。七つの紋章があり、それを全て集めることを目標に頑張ってください。最初は紋章なんもありません。じゃ」
「……適当だな?まあいい……感謝する」
思ってた以上に早くギルドカードを貰えたため、なんだか拍子抜けしたヤナギ。とりあえず、さっきの窓口に向かった。
「お早いですね……では、ギルドカードを提示してください」
「これだ」
ヤナギはポーズを決めながらカードを渡した。受付の女性はカードを受け取り、素早く確認した後、少し困ったような顔をした。
「……はい、確認できました。ヤナギさん、ですね。……お仲間はいらっしゃいますか?」
「いないが」
女性は小さく息を吐いた。
「申し訳ありません。紋章をお持ちでない方は、最低二人以上でのパーティでないと、危険度の高い依頼を受けられません」
「ほう? なぜだ?」
彼女はギルドカードを返しながら続けた。
「このギルドは魔王の七囚人を討伐するための処刑人を育成しています。ですが……新人の方が一人でモンスターの出る依頼に行くと、命を落とす確率が非常に高いんです。だから新人は安全のために、パーティを組むことを義務づけています」
ヤナギは興味深そうに目を細めた。
「なるほど。……それで紋章というのは?詳しいことは知らないんだ」
「七つの元徳の証です。この紋章を集める度、処刑人として、国の目に留まることが多くなります」
「なかなか面白いシステムだな…まあ要するに、パーティを組めばいいわけだな」
「はい。……ただ、紋章なしの新人の方は、信頼できる仲間を見つけるのが大変なんですけど……」
その言葉を聞いた瞬間、ヤナギの目が輝いた。
「ふっ……問題ない。俺ほどの美貌とカリスマがあれば、仲間などすぐに集まるさ」
受付嬢は呆れたように肩を落とした。
「……頑張ってくださいね」
何かを決めたヤナギ。その足は、ギルドの中央へと歩みを進めていた。ヤナギはギルドの中央にある大きな机の上に、優雅に飛び乗った。
周囲が一瞬で静まり返り、数百の視線が集中する。
「皆の衆、聞け!」
声高らかに、ヤナギは右手を天に掲げた。
「我が名はサナカヤナギ! 今しがたギルドカードを入手したばかりの新参者であるが、宣言しよう!」
「俺は七囚人をこの手で討ち、魔王をも倒す!そんな俺の仲間になりたい者よ、今すぐ俺の元に来い!」
ギルド内がざわついた。
「なんだあいつ……」
「ルーキーが調子乗りやがって」
「頭おかしいんじゃね?」
嘲笑、呆れ、好奇の視線が一斉にヤナギに突き刺さる。
(ふっ……注目されたな。当然だ。俺のこの美貌とカリスマを使えば、この程度なら余裕だ)
「…おいおいお前さん!一旦落ち着きな!周りの目を気にしろ!お前さんはいま、ヤベェやつを見る目で見られてるぜ?」
先程の狼が近づいてきた。それも当然。ヤナギは現在、かなり浮いている。
「関係ない。俺ほどの美貌なら、何もしなくても仲間が増えるが、こうした方が早いのでな」
「落ち着け!たしかにお前さんはカッコイイけど…!そこまでではねぇよ!過大評価するな!しかも、そんな変な服まで着て……」
「何を言ってるんだ?」
狼は心底呆れた顔をしていた。
「なんで理解できねぇんだよ…はぁ…俺はよ、お前さんが心配なんだ。こんなルーキー、初めて見たぜ」
「光栄だ」
「褒めてない。とりあえず、頭冷やせよ?俺はこの後用事があるからよ」
掛け合いをしながらも、狼はヤナギを心配していることがよくわかる。
「ふむ、とりあえず感謝する。ちなみに、名前は?」
「俺?俺は…リャック。大したやつじゃねぇよ」
「リャック…いい名前だな。また会おう」
「お前は頭を冷やせよ…じゃ」
リャックが居なくなったあと、椅子に座りながら二時間ほど経ったが、ヤナギに話し掛ける者はいなかった。あんなのを見せられて話しかけるなど、相当な奴だろう。
ギルドの関係者にも注意され、次は出禁だと言われた。
(ふむ…俺の美貌が眩しすぎて、話しかけられないのか……)
「あの…」
「おや?君は」
ヤナギ前には、小柄のトンガリとしている帽子をかぶり、一メートルほどの杖を持った、まるで魔法使いのような人が居た。
首元にはマフラーをしており、目は綺麗に輝いているエメラルドグリーン。
「僕、ハノって言います。僕もまだパーティを組めてなくて、さっき…って言えないほど時間経ちましたけど、あの演説見ましたよ」
「ほほう…ようやく俺の魅力に怯えずに話し掛けれる者が現れたか」
「別にそういう訳じゃないです……まあこういう職種の人にとって、自信があることはいいことですから。仮パーティ、組みません?あっ、合わないと思ったら速攻解散ですからね。僕、まだ信用してないですからね?」
「ふっ、わかっている。俺を選んだんだ。後悔はさせない」
「では、これからよろしくお願いします。ヤナギさん」
「よろしく頼む。ハノ」
二人は、手を力ずよく握りあった。
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「おいリャック、ああいう派手なルーキーには近づかない方がいいぜ?」
「……わかってるよ。でもなんだか、見てられなくてな」
もう一人の男がため息をついた。
「はあ……確かにあいつは大物になるかもしれね、が……頭は相当イカれてるだろ」
リャックは小さく笑った。
「いや……あいつはきっと、俺たちなんか比べ物にならないくらい強くなる。…何より、あの異常な自信が、ちょっと羨ましかった」
「……お前が言うなら、そうなんだろうな」




