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ナルシスト、世界を救う  作者: きつね
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ナルシスト、ギルドに向かう

「……ろ。…きろ!起きろ!朝だぞ!」


目を覚ますと、ヤナギの前には果物屋の店主、ゴリナがいた。


「俺としたことが…寝すぎてしまった……」


(やはり異世界に来たのが影響しているのか?)


「待ってください、身なりを整えてから向かう。今の俺は完璧ではないので」


「なんでもいいが、さっさと来な。飯が冷めちまう」


「そのお気遣い、感謝する」


ゴリナが部屋から出ていき、ヤナギは優雅に、素早く準備を始めた。ここには全身鏡がないため、手鏡で細かく確認している。


「寝癖はひとつも残してはならん…ふっ、そんなところに隠れようが無駄だ!クシがないから直しずらいな…」


苦戦しながらも髪を整え、残すは顔を洗うのみになったヤナギ。


「…ここか?洗面所は」


部屋を出て突き当たりの洗面所に向かった。老人の男が一人のため、スキンケア用具はない。


「スキンケア用具に頼ってばかりではダメだからな…質素な状態の俺…カッコイイ!」


いつものようにポーズを決め、ゴリナの待つ部屋へ向かう。扉を開けると、コンガリとしたいい匂いが漂ってきた。


「おせぇよ。飯が冷めちまうぞ」


机の上には焼きたてのパンと、数種類のジャムが並んでいた。

ヤナギは一口かじると、目を輝かせた。


「これは……!外はカリカリ、中はふわふわ……ジャムのフルーツの風味が最高だ!」


「だろう?俺のお気に入りだ。ほら、遠慮なく食え」


二人は仲良く朝食を済ませた。ゴリナはふと、遠くを見つめながらぽつりと零した。


「……こうやって誰かと食卓を囲むのなんて、久しぶりだな……」


「どうしたんだ?そんなに遠くを見つめて…」


「いや……こうやって人と食卓を囲んだのなんか、何時ぶりだろうってな…」


「今はいないのか?」


「…昔な、俺には妻と息子が居た……息子は生意気でな…でも、可愛かったよ。妻は、世界で一番美しかった。俺の中の太陽のような存在だった」


「一番美しかった…まあ俺は総合一位を狙っているのでな、個人全員の一位でなくても良い。それに、そう思うほど、大切な存在だったんだな」


「ああ、あいつが来るまではな…」


「あいつ?」


「……七囚人の一人、【暴食の罪】名前は【星を喰らう者】。昔、あいつがこの国に来たんだ。この国は、太陽の神から祝福を受けている。多分、名前の通り太陽を喰いに来たんじゃないか?」


「だが今、この街はまだ活気に溢れている」


「今は、な。あいつが来て、数年は地獄だったよ。何とか太陽は守れたが、皆家族を、大切な人を失った。全員心が荒んで、犯罪なんか日常だった」


「……良くない話をさせたな。すまなかった」


「気にしちゃいねぇよ…こうして話せて少し楽になった。ありがとよ」


「俺は何もしてない。辛くても会って間もない俺に、こうやって話してくれて嬉しい」


「………そりゃ、良かった」


ゴリナはスッキリした顔をしていた。その顔を見て、沈んでいたヤナギの気分は少し上がった。


「俺は、俺を見た人を幸せにしないと気が済まないのでな…!では、そろそろ出るとしよう」


「このまま左の道に沿っていけば、ギルドに着く。気をつけていけよ」


「ご気遣い、感謝する。では、行ってきます」


「おう」


果物屋を出て、道なりに進む。街はキラキラと輝いて見える。肉を焼く匂い、美味しそうなパンの匂い。魅力的な陶器。思わず寄りたくなるような、そんないい街。

……そんな街を一度壊した暴食。


「……不愉快だな」


ヤナギの中の正義心が、静かに、しかし熱く燃えていた。

歩いて数分、どうやらギルドらしきところに着いた。


「……ここがギルド。思ってたよりも綺麗な外装だな」


もっと古びた外装を覚悟していたが、思っていたよりも綺麗な外装だった。建物自体もかなりの大きさで、存在感を表していた。


「さて、俺の伝説が今!始まる!」


ヤナギは、ギルドの扉に手をかけた。

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