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ナルシスト、世界を救う  作者: きつね
3/5

ナルシスト、仕事を探す

「ふむ…やはりこの街は素晴らしいな。全員が笑顔で希望に満ちている…」


 ヤナギは優雅に髪を指で流しながら、街を練り歩いていた。街はどこを歩いても美味しそうな匂いもするし、活気溢れており、どこにいても暖かい気分になれる。


「……しかし、困ったことになったな」


 街角にあるベンチに腰掛けながら、ヤナギはなにかに悩んでいた。


「文字が全くわからん…その上、金がないから学ぶこともできん……仕方あるまい…」


 覚悟を決めたように、ヤナギはベンチから立ち上がり思い切り腕を天高くあげ、空を指さしながら叫んだ。


「働こうじゃないか!」


「ママ…何あの人」


「コラ!見ちゃダメですよ!」


 冷ややかな視線を浴びせられながらも、ヤナギは働こうと店を探した。


「ふっ…俺が街を見てきた中でも最も俺の状況にあっているところは……ここだな」


 ヤナギはとある店の前に立った。そこは、果物を売っている果物屋だった。


「すまない!ここで働きたい!」


 思い切り大きな声で果物屋の店主の男に言い放った。周りにいる人達はびっくりした様子でヤナギのことを見ている。


「おいおい…デケェ声だすな。とりあえず、中入れ」


 見かねた店主がヤナギを中へ招き入れた。中はよくある古民家のような内装だった。


「働きたいって言ってたよな?それなら丁度いい。人手不足でな。この老体で店ひとつ切り盛りするのは骨が折れるちまう」


「ひとりであの量の果物を…?やはりその筋肉通りの力の持ち主のようで」


「大したこたぁねぇよ…とりあえず、そこの果実を店前に出してくれ。俺は表で客見とくからよ」


「了解しました」


「オヤジ!この果実欲しいんだけど……」


「あいよ!」


 店主は店前に急いで走り出した。ヤナギは近くにあった箱を持ち上げる。中に入っている果実は、確かに見たことがある果実だが、どこか違うような気もする。

 一つずつ着実に前に運ぶヤナギ。そこまでの重さではないのだが、量が量のためかなり身体に負担がかかる。


「運び終わりました。結構いい運動になりますね。汗をかきましたよ。……ふっ、汗も滴るいい男…」


「ありがとよ。じゃあ箱から取り出して店前に並べてくれ。終わったら中からまた箱を取り出して並べてくれ。今日は客足が多くてな、あんまりそっちに顔出す余裕がねぇんだ」


「了解です」


「オヤジ、今日も美味そうな果実だな。じゃあこれとこれを……」


 ヤナギの戯言を華麗にスルーしながら店主は指示を出した。お互いに自分の仕事を着実にこなしていき、段々と日が暮れ客足が減ってきた時、ふと店主がヤナギに声をかけた。


「結構客も減ってきたな…そういや、名前はなんて言う?名前を聞かずに働かせちまったな」


「サナカ・ヤナギと言います。来月十七になります」


「ほーん…ここらじゃ聞かねぇ名前の感じだな。俺はゴリナ・ラロウって言うもんだ。なんで俺の店を選んだんだ?お前、別にここの常連って訳でもねぇのに」


「山勘ですよ。何となくこの店なら働けそうって思っただけです」


「ならお前は相当運がいいな。ビシバシ鍛えてやる。あの箱、俺が若い頃は全然持てなくてよ。お前、結構筋がいいぜ?」


「ありがたい限りです。ちなみに、この果実はなんという名前ですか?俺がいた国でよくこの果実に似た物がありまして」


 リンゴのような果実を手に取りながら、ヤナギ質問した。


「それはゴリンつう果実だ。美味いぞ?食ってみろ」


「ゴリン……」


 ゴリンに思い切りかぶりつき、皮と中身ごと食べた。それは、本当にリンゴを食べているようだった。


(どうやら、名前などが違うだけで味などは変わってなさそうだな…)


 ヤナギは安堵した。毎朝健康のために食べていたバナナが、この世界でも食べれることに。


「お前…違うとは思うが、もしかして学生か?」


「?ええ、そうですが…」


 店主がなにかをやらかしたような顔をしながら、手を額に当てた。


「悪いが…学生は働かせれねぇ…この国は学生を働かせる罰がかなりでけぇんだ。しくったな…いつもならこんなミスしないのに。俺も歳だな…」


 店主がため息をつきながら言った。


「まあ、学生は働かせられねえのがこの国の決まりだ。……悪いな」


「む……」


 ヤナギが肩を落とした瞬間、店主がニヤリと笑った。


「だが安心しろ。この国には裏ワザがある」


「裏ワザ?」


「この世界には【処刑人】ってのがいる。魔王が作った七人の囚人を殺すための連中だ。学生だろうが何だろうが、処刑人を目指すって言えば仕事くれるぞ」


「……処刑人、か。名前にセンスが感じられんな」


「名前なんてどうでもいいんだよ。とにかく中央のギルドに行ってみろ」


「なるほど……それが裏ワザか…感謝する」


「まあ職を失わせたのは俺な訳だしな…とりあえず、安定した収入が得れるまでは、俺の家泊まってもいいぞ。その代わり、毎朝箱を店前に運べよ?」


「その程度のこと、このヤナギにとっては造作もありませんよ…」


 ヤナギは職を得るため、そして、囚人を倒すための目的、【処刑人】を目指し、心の火を燃やしていた。


「そこが洗面所で、奥に風呂場がある。ここがトイレで…ここがお前の部屋だ」


「ここが俺の部屋…」


 ヤナギはゴリナから部屋の説明などを受けていた。

風呂に入り部屋で眠る準備をしているヤナギ。だが、なにか考えている様子だ。


「…一気に情報が増えたな。七囚人…七と言うのだから、七人いるんだろうな。魔王が作ったと言っていた…」

「考えてもした方ない。もう眠るとしようか…」


 手鏡を使い寝る前のチェックをした後、ヤナギは深い眠りに落ちた。

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