ナルシスト、国に行く
「ぐわぁ!!」
ワープホールからぶっ飛ばされ、思いっきり地面に打ち付けられた柳。
「…打ち付けられてもカッコイイ俺…」
手鏡を確認しながら、そんな戯言を言っている。立ち上がり周りを確認すると、広大な草原の真ん中に巨大な壁がある。
「……とりあえずあそこを目的にして向かうか」
歩き出し、キョロキョロと周りを見ていると、本当に異世界に来たことがわかる。
空を飛んでいる巨大な怪鳥。
人の背丈ほどの牛。
殴りあっている二メートル越えのカンガルー。
「いくら俺の美貌が凄すぎるとはいえ…ここで生きていけるのか?」
「……」
「まあ何も貰えないよりはマシか…ふっ…一日一回しか使えないとはいえ、俺の美貌なら全てを一撃で倒せてしまうだろうな…」
柳はポジティブであった。そんなこんなで、大きな壁に着いた。そこには門があり、どうやらどこかの国の壁のようだ。門の前には兵士のような人がたっている。
「すまん。俺は佐中柳という。中に入らせてもらいたい」
「……サナカ・ヤナギ…変な名前だな。身分証はあるか?」
「……」
柳は身体をまさぐって色々探したが、あったのは手鏡とスマホだけだった。
「…ないんだったら、一旦こっちに来い」
兵士について行くと、小さな部屋に連れていかれた。そこには小さな箱が机の上にぽつんと置かれていた。
「これに触れ。今からお前の身分証を作る」
「ありがたい限りだ。では…!」
柳は自身の額に手を置き、腕を思い切り伸ばしながら箱に触れた。箱は光をだし、なにか文字が浮かび出した。しかし、柳はこれを読めなかった。
「この質問に答えろ。嘘ついてたら電流流れるぞ」
「…すまないが…何と書いてある?」
「………嘘じゃねぇのか…電流流れてねぇし」
兵士は溜息をつきながら頭を掻き、面倒くさそうに文字を読んでくれた。
「出身地はどこですか」
「日本という国だ」
「どこだそりゃ?聞いた事ねぇぞ…嘘ではねぇようだな…ならいい」
「年齢は?」
「十六だ。あと丁度一ヶ月で十七で、身長は百七十二だ」
「そこまで聞いてねぇが…まあいい」
「職業は?」
「…職業か……学生」
「なんだテメェ…学生かよ。なら学生証忘れちまって災難だったな」
「こんなところだ。正直、質問しなくても勝手に情報読み取って作るから、ただの時間稼ぎなんだけどな」
「なら無駄に電流流されることがあるのか……」
箱がピピッと音を立てると、中からカードのようなものがゆっくり出てきた。その大多数の文字は柳は読めなかった。
「ほら行った行った。そこのドアからこの国入れる。俺の善意に感謝しろよ?学生だから金は取れねぇが……この恩を忘れるなよ?」
「本当に感謝する。渡せる現物はないが…俺のこの美しい顔がプレゼントだ」
「要らねぇよ…そこまでてめぇはカッコよかねぇ…早く出てけ」
そんな言い合いをしながら、ドアを開けるとそこには活気に溢れた街が広がっていた。
無邪気な子供たちが走り回り、どこの店にも沢山の商品が置かれている。街全体から、喋り声が聞こえてくる。
「ふっ…ここから俺の物語が始まる…!俺が来てしまったから、この国の顔面偏差値が上がってしまったな…!」
自信満々にそう言い放ちながら、ヤナギは期待に胸を膨らませながら、第二の人生が本格的に幕を開けた。
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「……おい、さっきの奴はどうだった?危険なやつだったか?身分証がなかったようだが…」
「変わった奴ではあったが…まあ悪い奴ではねぇだろうな」
「変わった奴って?」
「……すげぇ能力を持ってたよ」
「なに?大丈夫だったのか?」
「ああ…何せ、恥を感じられない能力だからな…」




