ナルシスト、異世界へ行く
初投稿です。
「むむ…ここに寝癖が…俺の美貌がダメになってしまうところだった…」
鏡を見ながらブツブツと何かを言っている彼は佐中柳、重度のナルシストである。
整えられている金髪の長髪。
いつ何時でも手鏡を常備しており、常に自身の美貌を確認している。現在は部屋で学校に行く前に、鏡を見ながら身なりを整えている。
「こうすれば…ふっ、完璧な俺になった…!」
戯言をいいながら、鏡の中の自分に触れるとまるで水面を触ったかのような感触だった。ガラスは液体とは言うが、ここまでではない。
「?一体どういうこと…」
不思議に思い鏡をぺたぺたと触れていると、鏡に入った腕が何者かに引っ張られ、鏡の中に落ち、最後に歪んだ自分の顔が見えた。
彼のここでの人生は、一度幕を閉じた。
眩い光が柳を包む。目を閉じていても感じられる光、思わず柳は目を開ける。
「…起きました?私、女神です」
「…俺、まさか死んだのか?というか、あの現象は一体…?まさか、あまりの美貌に俺を神の次元に…」
「あっ、違います。そんなことしません。とにかく、あなたは死んでしまいました。ですが、蘇るチャンスを手に入れたのです」
「と、言うと?」
意味がわからない状況だが蘇るチャンスを手に入れた。自身の美貌を全世界に伝えることができなかった柳は、その言葉に引かれた。
「あなたは死亡した人間の、なんと一兆人目なんです!イェーイ!」
どこからともなく祝砲の音が鳴る。
「全く嬉しくない祝われ方だな…というか、俺は本当に死んだ扱いなんだな」
「これからあなたにはミッションを与えます。異世界に行き、魔王を倒してもらいます。無事倒せたら、あなたを蘇生させます」
「まあ、安心してください。生身で異世界に送るだなんて、そんな非人道的なことはしません。私は神ですが」
「…とんでもないマッチポンプだな。それで、何か貰えるのか?」
「それはですね…貴方が望むものをひとつ、あげましょう!」
「望むものをひとつ…」
魅力的な提案だった。望むもの…色々と思い浮かんだが、柳にとってはこれがなくては行けない。
「ちなみに…今持っている物はそのまま異世界に持っていけるか?」
「ええもちろん。それがどうしました?」
話が変わってきた。本当は手鏡にするつもりだったが、手鏡を持って行けるなら別だ。
「決めた」
「お?何にします?なんでも切れる剣?空間を砕くハンマー?どんな魔法も使える杖?」
「美しいほど強くなる攻撃をくれ」
「…なるほどそう来ましたか……わかりました!では少しお待ちを…」
彼女はなにかの呪文を唱え始め、柳の周りに文字が浮かび始める。
「…ハァ!」
文字が空中に分散する。そして柳は、身体が変化したことに気づく。
「おお…何か力が溢れるのがわかるぞ!」
「ふふっ。すごいでしょう?その力は、自分が美しいと思っているほど強くなります」
「なるほど…異世界が楽しみになってきたぞ…」
「ちなみにその力は一日一回しか使えませんし、使うと全身の力が抜け、気絶します。使い所に気をつけてください」
「……まて、話が変わってきたぞ」
「それでは…!異世界に…!行ってらっしゃい!」
「落ち着け!せめて鏡を見させて…ふっ、やはりかっこいい…」
彼は落ちる瞬間まで手鏡を確認していた。
ここから、佐中柳の人生の幕が再び上がった。
「……ふふっ。あなた、案外すぐに戻ってきそうですね」
女神は、小さく、そう呟いた。
小話
「え?もしも他の武器を選んだ場合?」
「んー剣の場合は一回しか使えないですし…」
「ハンマーは反動で身体がぐちゃぐちゃになっちゃいますし」
「杖は身体の栄養全部吸われて枯れ果てちゃうでしょうね」
「どれ選んでもロクな事になりませんね」
「…まあ彼の場合は美貌関連以外選ばないでしょうけど。そう考えると彼結構運がいいんじゃないですか?これが、美貌の力ってやつですかね?…全然そんなことないですけど」
ーー
気に入って貰えたらブックマークや評価をしてくれるとありがたいです。




