反発
「あら?もう一分経っちゃったのかしら。残念……あの戦いをできないなんて……イータちゃんもまだ――」
「僕に何か用が?」
驚き後ろに振り向くと、優雅に壁にもたれかかったイータの姿が見える。
「……まあいいわ。少しでも消耗させればいいことだから……じゃあ、やりましょうか?」
お互いに長く言葉を交わさず、拳と剣が交差する。
イータは拳を軽く避けると、一瞬にして腕を細切れにする。
再生される前に燃やし尽くし、首を切り離し、燃やす。
「なんだかんだわかってたけど……」
「やっぱ勝てないわね」
色欲は、塵も残さずに燃え、完全な無になる。
「ふう……呆気なかったな。僕は向こうの援護に――」
イータが足踏みし、その場から動こうとする。
強者は、その強さゆえに油断する。
「【太陽の遮断】」
イータの姿が見えなくなる。
代わりに、黒い球体が現れる。
その場は、太陽の光が消えたかのように暗くなる。
「これは、太陽神を塞ぐ魔法。やっぱり、加護を貰ってるイータちゃんにも作用するみたいね……ふぅ、この魔法、展開するのにめちゃくちゃ時間かかる上に、消費MP多すぎるでしょ……丸一日ここで待機してたわよ」
「は……なんで、……おまえ」
「ん?なにかおかしい?私、別にあれが本物なんて言ってないわよ?あれは、私の分身体。もう消えちゃったけどね」
更なる絶望がやってくる。
狂った道化を乗せながら、着々と。
「これはね、太陽神のみ遮断する。だから、それ以外は全てはいることができるの。でも、今入るのはやめた方がいいわよ?」
色欲が黒い球体の中に手を入れ、取り出すと、その手は一瞬にして焼き切れ、断面は黒く変色している。
腕はすぐさま再生し、何事も無かったように色欲は話を続ける。
「これで、イータちゃんは使えない」
「アルベドちゃんも、向こうで戦ってこっちには来れない」
「……どうやって、ここから巻き返すのかしら?教えて欲しいわ」
色欲は近くの椅子に座り、机の上で頬杖をつき、こちらに微笑みかける。
この顔は、悪魔のように見えた。
「終わり……か……」
ヤナギは、絶望した様子で呟く。
その場の全員が、希望が見えず、同じように下を向いている。
「あら?つまらないわね……いいわよ。みんな等しく、“愛して”あげる」
色欲は両手を大きく開け、歩み始める。
「おい……何勝手に諦めてんだ……ナルシ」
その場の全員の視線がひとつに集中する。
先程まで倒れていたヨウが、大剣を杖のようにしながら、こちらに歩んでいる。
息は浅く多く。
全身から血を吹き出しながらも、一歩一歩、着実に。
「……そうね。貴方は一番、頑張ったのよ。貴方が一番最初に愛すのが道理よね。ほら、おいで」
色欲の目の前にヨウは立ち、殴り続ける。
だが、それらはどれも全く効いておらず、色欲は少しも動きをしない。
それでも、殴り続ける。
その行為に意味があるのか、何のためにするのか。
「いいのよ……受け入れてあげるわ。最期ぐらい、自由にさせてあげたいのよ。これは、私の“慈愛”なのよ」
色欲は攻撃を受け入れ、天を仰ぐ。
そして、優しくヨウに抱きつこうとする。
強者は、その強さゆえに油断する。
「【反撃・激】」
反射・激
それは、ただのカウンターではなく、その日、受けた全てのダメージを上乗せし、攻撃を放つ。
ヨウは、先程の戦闘防御を一切せず、攻撃を受け止めていた。
そして、今は能力【死への反発】の力が最大になる状態。
「お前、俺がボロボロだから、獣人だから、魔法を使わないって、もう何もされないって」
「油断、したろ?」




