ナルシスト、怪物を知る
「……早食いを言う必要はあったか?」
「ああ、重要な要素だろ?あと、ただ守るだけの魔法だと思うなよ」
レインは手のひらの上に防御魔法を展開し、それに風魔法で回転をかける。
防御魔法の回転が増していき、風によって削られた角が鋭さをどんどんと増していく。
「こんな言葉を知ってるか?防御こそ、最大の、攻撃ってな!」
防御魔法を放ち、怪物の脳みそを半分に割る。
「これが俺の得意技、【防御回転刃】だ。これで貸し一な?」
「勝手に貸しを作らないでもらいたいな……それに、まだあいつは生きてるしな」
脳みそを完全に真っ二つになったのに、怪物はまだ前進し続ける。怪物を抑えている防御魔法は、その勢いに押され始め、ヒビが入り始める。
「チッ……まあすぐに終わる訳ないか……もう一発――」
「まあ待て、ここは俺に任せておけ」
「あ?まだルーキーのお前に?」
「貴様はそのルーキーに怯えるんだ。覚悟しておけ」
ヤナギは向かってくる怪物の前に立ち、拳に魔法をまとい始める。
「初めは魔法を放っていたが、慣れた頃には身体に纏うだけ。これでは魔法の真価は使えない……だからこそ」
拳に纏う魔法の量を更に増していく。
荒々しくも、美しさを放つ魔法の集合。
「さて、しっかり目に収めておけよ?」
魔法を使ってほんの数日だったが、ヤナギの練度は既に並の者が使う魔法を超えていた。
それは、元々の才能もあるが、禁書での経験が更に練度を磨きあげる。
「どうだ?美しいだろう?闇の刃が禍々しくも神々しく纏っているこの姿」
「……なんでもいいが、そろそろ防御魔法が突破されるぞ」
「好都合!見ておけ」
ガラスが割れたかのような音と共に、防御魔法が崩れる。
怪物は一直線にヤナギ達に向かった走り出す。
ヤナギは怪物の中心へ腕を伸ばし、息を整える。
「これが、俺の開発した魔法……【爆裂する闇】」
腕からまるで光線のように飛び出し、魔法は怪物をどんどんとえぐり取るように突き進む。
怪物の表面を削り取り、内部に進み、同様に削り取る。
怪物は痛みに悶え、絶叫する。
その声は色々な人の声が重なったかのような声をしていた。
声により、家に着いている窓ガラスは音を立てながら割れ始める。
「ほお……いいじゃないか。破壊力抜群だ」
「いや、これは想定外だ」
「……なに?」
「本来この技は、刃をわざと鈍くし、より痛みのますようにしてる。だが、滑らかに入りすぎだ」
「お前結構えぐいことするんだな。……んな事言われてもな……」
怪物はすぐに傷を再生し、前進し始める。
再生速度が異常と考えたレインは、一度防御魔法で怪物を閉じ込めた。
「大概こういうやつには、なにか裏があるんだが……」
「……」
ヤナギは無言で怪物を見つめる。
よく見ると、人の顔のようなものが大量に浮かんでおり、人の手足のようなものもびっしりと着いている。
その表情は、痛みを感じているのか、悲しんでいるのか、悔しいのか、だが負の感情を帯びていた。
ヤナギの中に、嫌な考えが浮かぶ。
「なあ、色欲は、姿を変えることができるんだよな?」
「ああ、そうだ。面倒な能力だ」
「それは、本人にだけ作用するのか?それとも、他の人にも使えるのか?」
「そういう系の能力なら、だいたい他の奴にも使うことは出来ると思うが…………おい………まさか――」
レインが言葉を続けようとするも、ひとつの小さな、囁くような声に遮られる。
「痛いよ………」
レインとヤナギの顔が、怒り、悲しみ、絶望の混ざった表情へと段々と変化していく。




