ナルシスト、油断する
「……動かなくなった、な。ふっ、流石は俺」
動かなくなった紫宝石蜥蜴を横目に、仲間の元へ歩き出すヤナギ。
だが、パープルクリスタルリザードは、最後の抵抗か、少し揺れ始めた。
揺れは更に強くなる。
一瞬、揺れがおさまる。
突然、パープルクリスタルリザードに付いている宝石全てが、ヤナギを狙うように発射された。
違和感を感じたヤナギが振り返ると、宝石はもう目と鼻の先だった。
【死】
その文字が、頭に浮かぶ。
「油断は禁物だ」
瞬間、剣の起動が見えた。
こちらに向かってきた宝石は、空に浮かぶ星のようにバラバラの破片となり、そのまま地面に落ちた。
「お前さんは、腕も立つ。洞察力も高い。だが、慢心するやつは直ぐに死ぬ。そこんとこ、気ぃつけな」
リャックは剣に付いている破片を手で落としながら、ヤナギを見つめて話す。
「すまない……やはり、急激に強くなると慢心が生まれてしまうな」
「……もう、優秀なやつが死ぬのは見たくないんでな」
「何か言ったか?」
「……いやな、これどうしようか考えててな。普通、宝石蜥蜴系統は首から上を持ってくんだけど、こいつは、如何せんデカいんでな」
「それなら、ネルフが拡張袋を持ってきてたぞ」
「ああ、ここに」
ネルフ達が集まり、腰から手のひらサイズ袋を取り出す。
それに頭全てが収まるなど、ヤナギは信じれていない様子だった。
「よし、大丈夫そうだな」
リャックはパープルクリスタルリザードの首元に立ち、そのまま剣で一刀両断にする。
大きな音と共に切り裂かる。
リャックは頭を持ち上げる。断面からは血が溢れているが、とても綺麗に切れており、少しのズレもなかった。
「解体屋に向いていそうだな」
「昔は解体屋で働いてたぞ。でも、潰れてしまってな。そのまま職を探すのに苦労しとったから、ギルドで働いている」
リャックは小さな袋を開け、そのまま頭を入れ始める。入れるのに苦労するかと思っていると、するすると入って行く。
すぐに入れ終わる。
袋のサイズは全く変わっていなかった。
「やっぱ便利だな。この袋」
「自分の特注品。当然」
ネルフは袋を自慢げに紹介する。
「あとは、この頭から下を解体屋に渡すだけだな。この量なら結構な額になるはずだ」
「なに?」
「……そんな驚いた様子でどうした」
ヤナギは狩ったモンスターは証拠に取ったもの以外は全て置いてきたので、その他も換金出来ることに驚きを隠せなかった。
「その様子なら、換金出来ること知らなかったのか?仲間に聞けばよかったのに……まあこれも成長の糧にしろよ?」
「ギルドは意外と説明しないからな……初心者にはよくあることだ。そんな落ち込むな」
ヤナギは少し損をした気分になったが、気持ちを切り替える。
首から下は別の袋に詰め、外に出てそのまま解体屋に向かう。出入り口を塞いでいた宝石は、いつの間にか溶けていた。
何も思わずにヤナギは通り過ぎるが、一瞬腕に違和感を覚える。
腕を見つめるが特に何も無く、気のせいだと割り切り外に向かう。
「こいつは結構な上物だな……これなら、だいたい五金貨でどうだい?」
「それで大丈夫だ。いつもありがとな」
「いいってことよ。俺達も解体してるだけで、素材は他の店に売ってるしな」
ちょっとした小話を終え、ギルドに向かう。
今回の依頼は結構疲れるものだったため、ヤナギ達は帰りたそうにしていた。
「……はい、討伐を確認しました。こちらが報酬の金額一枚となります」
「やっぱ苦労に合わんな……仕方ない。この報酬と解体額を合わせて金貨六枚。一人一枚として、残った二枚をどうするかだな」
「……いつもなら残ったやつで飯を行くが、今日もそうするか?」
「すまないが、今日は疲れがかなり来ている。俺はこのまま帰らせて欲しい」
「初心者には厳しいものだったからな……ほら、受け取れ」
ヤナギは扉に向かって歩き出していると、後ろから金貨が一枚飛んでくる。
それをヤナギはしっかりとキャッチした。
「今回はお前のお手柄だった。……完全には信用してないが、腕は認めてやる」
「……おつかれ」
「お疲れ様。ゆっくり寝るんだぞ」
「ああ、お疲れ様」
金貨を握りしめながら、ヤナギは家へと向かう。




