ナルシスト、決着をつける
「なにを……」
「俺の見立てでは、やつは宝石を治せても、身体の傷は治せていないようだ。その証拠に」
ヤナギは紫宝石蜥蜴の脚を指差す。
完全に傷が塞がったように見えるが、よく見ると、小さいが、傷跡が見える。その奥には、赤い色が薄くあった。
「つまり、側だけ強化しただけ。中身は空っぽ。さっきと変わらん……むしろ」
パープルクリスタルリザードは、のそのそとこちら側に近づいてくる。
先程の素早い動きはどこに行ったのか疑いたくなるほどの遅さだった。
「きっと、脚裏を重点的に補強したせいで、逆に動きずらくなったのだろう。それに、自分で勝手に重くなって貰えたんだ」
「これを勝ち筋と言わず、なんという?」
ヤナギはタティとネルフを見つめ、ニヤリと笑ってみせる。
「そこに気づくとは、やっぱお前さんは俺の見込んだ通りやるやつだな」
「その言い方では先に気づいていたように聴こえるが?」
「正解だ。元々勘付いとった。だが、自分でたどり着いて欲しくてな」
「お前も大概性格の悪いやつだな……まあいい。そこのお前ら、別に戦う気がないならそこで蹲ってろ。紋章がひとつもない新人に、先を越される屈辱付きだがな」
ふたりは無言で立ち上がる。
先程の弱腰は無くなったのか、武器を力強く握りしめている。
四人のことを、パープルクリスタルリザードはギロりと睨みつけている。
「そんなに熱烈に見られても、視線で人は殺せんぞ?」
パープルクリスタルリザードは宝石を背中から発射し、まるでミサイルのように攻撃をする。
リャック達はその宝石を弾くが、ヤナギは足場のようにし上に行く。
「俺が頭を狙う!お前達は脚への追撃を頼む!」
ここで、ヤナギの能力を使えば、きっと勝てるだろう。だが、それではつまらない。
能力は、あくまで保険。
――努力無しで手に入れた能力に頼るほど、落ちぶれていない!
脚に魔法を纏わせ、踵で脳天一直線で振り下ろす。
宝石を放った瞬間だったため、防御がかなり手薄になっていたのか、パープルクリスタルリザードは動きが遅くなった。
その隙に三人は脚を攻撃し続ける。
素早く、鋭く、重たい攻撃が連続でぶつかる。
パープルクリスタルリザードは一度距離を取り始め、水蒸気を口から吸収する。
再生の合図だ。
その隙を見逃さず、ヤナギは素早く目を潰しに行く。
「そんな簡単に動きを止めては!ただの的だぞ!」
右目に渾身のストレートを放つ。
パープルクリスタルリザードは声の出ない絶叫をしながらも、宝石を再生させている。
更に、水蒸気を吐き出し始め、どんどんと濃くなっていき、視界を奪われる。
「クソ!また口から水蒸気を出しやがって……」
タティが悔しそうにそう呟く。
その言葉を聞くと、ヤナギは違和感を覚えた。
――何故、口以外を使っていない
瞬間ヤナギは、何かのピースをひとつ、手に入れれた気がした。
「お前さんら!水蒸気が晴れるまではあんま動くな!こんな視界の悪い状態で攻撃なんかしたら、味方に当たってまう!」
「わかってる!だが!」
「宝石の侵食が強くなってきた!それに、いつ攻撃が来るのかわからん!ッ!もう攻撃は始まってるぞ!」
ヤナギが左肩を見つめると、段々と侵食を進めている宝石が見えた。
「…こんなもの………ハッ!」
ピースが、ひとつひとつ繋がっていく。激痛に耐えながらも宝石を抜き出す。
「お前達!宝石を俺に集めろ!」
「なんで……!」
「いいから!霧が薄くなってきた!霧が晴れたら俺に集まれ!」
ヤナギの言葉に押され、宝石を抜き出し、霧が晴れた瞬間ヤナギの元に走り出し、宝石を渡す。
ヤナギの後ろには、大きく口を開けているパープルクリスタルリザードが、ゆっくりと歩いていた。
ヤナギに気づかれず、一撃で殺すためだろう。
――この作戦は賭けだが、
「その賭けに勝つのが、俺だ!」
四つの宝石をひとつに固める。更に、何度も何度も攻撃を仕掛ける。
四つの宝石がお互いを取り組み合い、粘着力を上げている。
ヤナギは後ろを振り向き、両手に張り付いたバランスボール程の大きさになった宝石を、魔法で無理やり剥がし、口の中に押し込む。
「後ろにいることに、気づいてないと思ってたのか?」
パープルクリスタルリザードの喉にこびり付いているのが、よくわかる。
「お前は、水蒸気を吸い込む時、そして吐き出す時、どちらも口でしかしていなかった。もしかして、肺呼吸しかできないんじゃないか?」
どんどんと動きが鈍くなっていく。
いつしか、パープルクリスタルリザードは動かなくなっていた。




