ナルシスト、トカゲと対峙する
扉の奥に居たのは、巨大なトカゲ。
だいたい車と同じぐらいだろう。
だが、鱗は紫色の宝石のように輝き、鋭く尖っている。爪も同様に。
「紫宝石蜥蜴……予想はしとったが、まさかここに住み着くとはな」
「なんだそいつは?」
「知らないのか?元々クリスタルリザードは、生まれた鉱山によって性質が変わる。基本的には生まれたとこを住処にするが、こいつはよく住処を変える。だから、たまにこんなことが起きる」
「お前さんら、気合い入れろよ!こいつは体格が普通よりデケェ……」
パープルクリスタルリザードは、こちらに襲いかかることはなく、ただただ見つめている。
見つめてるだけだが、なんだか威圧感がある。一同の額に、一筋の汗が流れる。
そいつは、シッポの先に着いている宝石を、一瞬光らせた。
「……威嚇、しかも最終警告だ。お前たち、気をつけろよ」
タティが武器を構え始め、戦闘態勢をとる。
「こっから先に来たら、容赦はしないとのことだな……だが」
ヤナギは両手で髪をかきあげ分け目をつける。
その顔に恐怖は一切なく、自信に満ち溢れていた。一歩、一歩と歩を進める。
「おい!ヤナギ!お前さん本気か!?」
パープルクリスタルリザードの目が、紫に光出した。
その図体からは考えられない速さで動き出す。
すぐにヤナギの目の前まで近寄り、大振りの爪の攻撃を行う。
ヤナギは冷静に、横に移動し避ける。パープルクリスタルリザードはすぐに身体を捻り方向転換してくるが、ヤナギはそれよりも早く魔法を足に纏い、蹴りを行う。
「ハッ、柔らかいじゃないか。栄養不足か?」
足に着いていた鱗が宙を舞う。すぐにパープルクリスタルリザードはシッポで薙ぎ払う、ヤナギは反応が少し遅れ、右脚を被弾する。
「無事か!無理するからだ!」
「平気だ、宝石が刺さったこと以外はな。安心しろ、このまま俺に続け!」
「待て!それは――」
ヤナギは走り出すが、動きが止まる。
右脚に、変な感覚がする。痛みではない。だが、確実に蝕むなにか。
右脚の方に視線をやると、宝石がまるで脚を纏うように広がっている。
宝石が血管を伝うように、どんどんと根を伸ばしている。
「そいつの宝石は毒だ!すぐに引き抜け!」
「そういうことは……早く言え!!」
ヤナギは素早く宝石を引き抜く。だが、根を深く張っているため、神経を引き抜くような激痛が脚を刺す。それに負けず、宝石を抜き出す。
脚から違和感は去ったが、大きな痛みがやってきた。
「お前さんは無理しすぎなんだ!とりあえず、このポーションを足にかけときな!」
リャックはポーションをヤナギに投げ、交代するように、奴に向かっていった。
他のメンバーもそれに続くように向かっていった。
「クソッ!先走りすぎたか……」
手に持っている宝石を壁に投げつける。
壁にぶつかった瞬間、一瞬で広がり、まるで染みのように壁に張り付いた。
脚にポーションをかけながら、壁に張り付いている宝石を見つめる。
――なにか、弱点はないか
だが、あれば他のメンバーが試しているだろう。
考えるだけでは仕方ないと割り切り、ヤナギも戦闘に参加しようとし、苛立ちをぶつけるように、宝石目掛けて空になったポーションの瓶を投げる。
瞬間、壁に瓶が張り付いた。
まるで、接着剤を張り付けられたかのように。
「……これは……」
ヤナギの頭に、一筋の電流が走る。




