ナルシスト、再度勉強を始める
「……調整しても、疲れ……るな」
ヤナギは膝から崩れ落ち、呼吸を整えている。
アルベドはこの現状を信じられていないのか、何かをブツブツと呟いている。
「ヤナギくん、大丈夫かい?結構疲れてそうだね」
「……気絶はしてないが、立つのも辛い。肩を貸してくれ」
「喜んで。一応ポーションもかけておこう」
「それ、よりも」
イータの肩を借りながり、アルベドの前に歩き始める。
「俺達の勝ちだ。大人しく、引き下がってくれるか?」
「……はは、そう……だな。約束は約束だ……お前ら、引き上げろ。今日はもう解散していい」
想像以上に簡単に引き下がったアルベド。
もっと難癖をつけてくるかと思ったが、結構聞き分けが良いようだ。
「……その、元々俺達が悪いわけだ。ポーションくらい渡しておこう」
「情けを受ける気はない……別に、負けた訳じゃねぇからな。勝負には負けたが、殺し合いには負けてねぇ……」
「まだ、言うんだね」
「いつか、決着つけるつもりだ。イータ……それと、名前、ヤナギっつたか?……覚えたからな」
二人を見上げながら、ニヤリと笑っている。そのままアルベド達はどこかに行き、つかの間の安心をイータとヤナギは手に入れた。
「ふう……今後、こういった強行はしないでおくよ」
「ホントにな……どうする?あの勝負で広場をついに手に入れたんだ」
「そうだね……まあ、魔法の練習に使おうか。君にはアルベドを軽く倒せるくらい強くなってもらわないと」
「無茶言うな。お前でも倒せなかったやつを倒せるものか」
「あっ、もしかしてあれが僕の本気だと思った?」
「違うのか?やめてくれよ。力の半分も出してないとか言うのは」
「正解」
「……お前は、なんなんだよ……あっ、これプレゼントだ。眠れないんだろ?」
イータの瞳が、少し崩れた気がした。だがすぐに笑顔になった。そのまま訓練を続け、空が暗くなってきた。
イータと別れそのまま帰路に着くと、また人通りの少ない路地を通ることになった。
「嫌な記憶を思い出すな……もう出てこないよな?」
警戒しながら道を通る。
特に変わったことはなく、いつものように歩き始める。その路地は、少しだけ日本に似ていた。
「……なんだか、日本が恋しくなったな……まあ、考えても仕方ない。俺はやるべきことをやるだけだ」
少し寂しい気持ちになりながらも、ゴリナの待つ“家”に戻る。
「帰ったか。もう飯できてるぞ」
「ありがたい限りだ。頂こう」
いつものように夜を過ごし、目を覚ましたヤナギは、今日から三日間は暇なことに気づき、何をしようか考えている。
「決めた。今日一日全てを使い、この世界の言語をマスターしよう……きっと俺ならできるはずだ!」
「……………」
「あの、マジでそろそろ帰ってくださいっす……もう閉めなきゃなんで……」
「クソ!!まだマスターできていないのに!!」
「うるせぇっす!!貸出するから家でやれっす!!」
そんなこんなで、すぐに一日が過ぎた。
家でも勉強を続けるが、一日で全ては覚えれず、夜を過ごした。
「……俺の辞書に、諦めの文字はない!!」
夜まで勉強は続けたが、図書館の閉店時間となった。突然家がノックされ、司書が扉を蹴破ってくる。
「ゴラァ!!本返せっす!!」
「あと……!あと少しだけ……!!」
「無理っす!!!もう限界っす!!!!」
「あああああああ!!!!!!!」
「……というか、なんで俺の居場所がわかってる」
「色々話を聞いてみたら、ここにいるって聞いたっす」
「ストーカーか?やめてくれ。俺の美貌が美しすぎるか?」
「……チッ」
司書の舌打ちを最後に、一日が終わった。




