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ナルシスト、一世一代の勝負をする

まるでスケートをするかのように地面を滑りながら、アルベドはヤナギの方へと進み始める。

大剣を天高く振り上げる。


「あばよ!」


ヤナギの頭に向かって刃先がぶつかる。

しかし、大剣は火花を出しながら弾かれ、頭は痕すら出来ずに軽傷の様子。

イータの方を振り返ると、腕をこちらに伸ばしている。


「能力【共通感覚】だよ。ダメージの二人に分ける。今の比率は、僕が九で、ヤナギが一だね。君は絶対にヤナギくんを狙うと思ってたからね」


「生意気なやつだな……そんな能力を隠し持ってるとはよ。まあいいぜ……お前を先にぶっ殺せばいいだけだ!」


「君と僕では相性が悪いのはわかってるだろうに……」


イータは炎を纏わせた剣を軽く横に振る。

それだけでイータの辺りの氷は溶け始め、緑色が見えてくる。


「んな事は、俺が一番わかってる!!」


緑を上書きするように、更に魔法を放つ。

氷が地面を蝕むように進み出し、イータの足元から飛び出す。それをイータは剣を地面に突き刺し、炎を広げることにより、溶かし始める。

魔法と魔法のぶつかりあり、蒸気がどんどんと溢れていく。

二人の戦闘に耐えきれなかった地面は、ヒビがどんどん広がっている。

ヤナギともう一人は傍観することしかできていなかった。


「チッ!埒があかねぇ……叩き壊すぞ!おい!モル!強化(バフ)よこせ!」


「は、はい!」


虹色のオーラがアルベドを包む。大剣に纏っている氷が更に濃くなり、冷気を漂わせている。


「はは、やっぱり強化(バフ)はいい。どんな奴でも掛ける対象次第だからな。だがまだ練度が低い……勝ったら訓練だな」


「そのためのあの子か、別にいいんだけどね。君は僕に勝てない」


「……言ってくれるねぇ、その鼻っ柱、ぶっ潰す」


アルベドの辺りの冷気が更に濃くなる。木から落ちた葉は、一瞬で凍りつき、地面に落ちる。

一気に距離を詰め、大剣をイータの頭に叩きつける。イータは剣で大剣を抑え、そのまま跳ね返し、蹴りを放つ。アルベドの腹の中心に直撃し、少し後退りするが、大剣を使い距離を詰めながら攻撃を行う。


「呼吸は……楽にはなったが、あの戦いについていけるか……」


ヤナギは屈みながら二人の戦闘を見つめている。明らかに、自分のついていけるステージではなかった。

何かできることはないかと考えていると、勝利条件を思い出す。


「一人が殺されるか、降参を宣言する……だったな」


ヤナギはいいことを思いつき、二人の元に向かう。

二人の戦闘は苛烈を極めており、とてもヤナギの入れる隙間はなかった。剣が当たる度に火花が散り、氷と炎が混ざっているように見える。


「お二人の、少し話を聞いてもらいたい!」


「ヤナギくん、正直に言うが、君はアルベドに勝てないよ」


「いや、勝てるさ」


「……何?」


攻撃が止む。

アルベドは一瞬眉を痙攣させ、大剣を肩にかける。そのままヤナギの元に向かい、苛立ちを隠せていない顔をしながらヤナギを睨みつける。


「お前が、俺に?冗談キツイぞ。お前にみたいな未熟者が、俺に勝てるわけないだろ」


「怖いのか?」


「……あ?」


「怖いのかと聞いているんだ。格下の、処刑人ですらない俺に負けることが」


「てめぇ……!!!」


アルベドは大剣を思い切り振り上げ、ヤナギを真っ二つにしようとする。


「一撃、俺の一撃を耐えてくれ。その場から一歩も動かずにな。動いたら、降参を宣言してくれ。この程度もできないのか?処刑人というものは」


「……舐めるな。いいぜ、受けてやるよ。だが、耐えたら大人しくこの場を二人仲良く去ってもらうからな?」


「……喜んで。魔法による防御、強化、それらはふんだんにしてもらって構わない。こちらはイータからの補助はなしでいい」


「相当自信があるようだな……だが、こちらも全力で耐えさせてもらうからな」


アルベドとモルは二人集まり、強化などをふんだんにしている。

イータとヤナギも集まり、話をしている。


「……あれを使う気かい?」


「ああ、だが、全力ではやらん。自分でもどれ程の威力が未知数でな。少し調整する。俺としても、殺すことはやりたくないのでな。そのための強化だ」


「……でも、もしも耐えられたらどうする気なんだい?」


「大人しく引けばいい。別に死ぬ訳じゃない。ただこの場から去るだけだ」


「そうだね」


「……ひとつ、聞きたい」


「どうしたんだい?」


「今の俺は、美しいか?」


「……ふふっ、うん。美しいよ」


ヤナギはニヤリと笑い、手鏡で自身の姿を見る。言われた通り完璧なことを確認すると、アルベドの待つ中央に歩き出す。

準備を済ませたアルベドは、余裕そうに立っている。


「待たせたな。早速始めようか」


強化(バフ)は使ってねぇようだな……よし、来いよ」


大剣を地面に差し込み、アルベドは受けの体制になる。MPを一点に集中させ、完全に守る体制だ。


「……覚悟はいいな?」


「……とっくにな」


ヤナギの拳に黄金の光が纏う。

拳を中心に風が吹き始める。

その場を、静寂が支配する。

黄金の拳をヤナギはしっかり握りしめ、腹に狙いを定める。


「……しっかり受け止めろよ……」


「ビューティフル……アタック!!!」


拳が腹に向かって放たれる。

暴風が吹き、地面の草が宙を舞う。

アルベドは防御をしているが、受けきれず、血を吐きながらそのまま吹っ飛ばされる。


「……俺の、勝ちのようだな?」


ヤナギは拳を天高くあげながら、勝利を宣言した。

拳と太陽が、合わさりひとつに見えた。

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