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ナルシスト、修行の成果を出す

「あっ……」


ガラス球は怒りと共に弾けた。

その音は、ヤナギの敗北を意味していた。


「あ…あ…あ…」


「……流石に、ここで終わろうか……横になっていいよ」


ヤナギはそのまま芝生に倒れ込んだ。ガラス球を握っていた手はガラスの破片で傷ついており、血が溢れていた。

イータはその横に腰を下ろした。


「ふう……ヤナギくんも結構戦えるようになったね。これなら次のステップに行けそうだね」


「お前はなんだ?俺を怪物にでもしたいのか?まだギルドに登録して一週間程度だぞ。俺の美しさは無限のように見えるが無限ではないのだ……」


「ははっ、“怪物”ね。……そうだね、僕は君をそうするつもりだよ」


「……冗談厳しいぞ」


「いや、冗談なんかじゃないよ。君の才能は見張るものがある。MP総量も鍛えることで五割増しにできるし、何よりそのストイックさ。それが気に入ってるんだ」


イータは手を筒のようにし、その手から覗くようにヤナギのことを見つめている。

まるで、宝石を見つけたかのように。


「このまま行けば、色欲との戦いになるだろうしね。正直、この国は僕以外にまともに色欲と戦える人は数える程しかいない。その中に、君が入って欲しい」


「……まあ期待しておけ。俺の成長性は無限だ。傷を治療したら次の段階に移ろう」


「そういうところ、だよ。よし、手を貸して……だいぶだね。すぐに治すよ」


腰のポーチから出したポーションをヤナギの手に塗りたくるように掛ける。

傷を塞ぐようにその上から包帯を二重に巻く。


「完了……よし、次の段階に移ろう。次は、魔法を上手く使えるようにしてもらうよ」


「……今の段階では不満か?」


「別にそうじゃないんだけど……ヤナギくんはまだ遠距離魔法しか知らないでしょ?」


「近距離があるみたいな言い方だな」


「……やっぱり知らなかった?」


「待て、ならなぜヨウは使っていない?あいつも近距離ファイターだぞ」


「獣人は、基本的に魔法を使わずにMPは身体強化に全部回すんだ。だから、ヨウくんは使っていないということだね」


「……もう何も聞かない。続きを言ってくれ」


ヤナギはどこか遠くを見つめながらイータの話を聞こうと耳をすませている。


「えっと……簡単に言うと、攻撃に魔法を纏わせるみたいな感じだね。僕が炎を剣に纏わせてるみたいな感じ。それ以外にも攻撃魔法とかもあるけど、それはまだ早いと思うから、纏うところまで行こうか」


「纏わせる……それなら普通の時にやっただろ。ほら」


ヤナギは指先に魔法を纏わせる。黒いMPがヤナギの指先を回るように張り付いている。


「それじゃダメなんだ。こんな感じに……」


イータは腕全体に魔法を纏わせる。

太陽のように眩しく、暑いMPがヤナギのことを照らしている。

そのMPは、ヤナギのMPとは全く違って見える。


「……練度の違い、いや、それだけでは説明できんな。密度が違う」


「そうだね。遠距離なら指先にMPを出すだけでいいんだけど、近接戦にするなら、常に、高密度で纏わせなければいけない。攻撃のためだけでなく、防御の為にもね。……というか魔法について詳しいね?今の一瞬でよくわかったね」


「……それは、当然だ。俺はサナカ・ヤナギだ。これくらいできなくては、世界一の美貌は務まらん」


禁書のことをイータに伝えるとろくな事にならないと感じたヤナギは、心の奥にそっと言葉をしまった。

ヤナギは感覚とイータの言葉を元に、高密度のMPを、腕全体に纏わせるように放出する。


「やっぱり……ヤナギくんは素晴らしいね……多少荒いところもあるけど、いい感じにできてるよ」


「当たり前だ。俺のことをあまり舐めるなよ?」


「ははっ、そうだね。じゃあそこの木を、前の感覚などを意識しながら殴ってみて」


「任せておけ……今の俺に出来んことはない!」


言われた通りに木の前に立ち、さっきの感覚を思い出しながら拳を突き出す。

力を抜きながらもトップスピードを維持し、直前で全力を出す一撃。

拳が木に当たると、まるでクッキーを殴っているかのようにどんどんと割れていく。

木の皮、幹と、どんどんと。

拳は、反対側まで突き抜け、木に大きな穴を開けた。

数秒遅れて、

巨木が軋む音を立てながら倒れ始める。

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