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運命の奴隷

ある、一人の画家がいた。その者こそ、魔法の始祖だった。

魔法の始祖は、売れない画家だった。だが、インスピレーションは頭の中で常に生まれる。それは、生活を蝕むほどに。始祖にとって、世界は白黒にしか見えなかった。

画家はそれらを絵につぎ込んた。絵が好きだったから。しかし、書いても書いても成長しない。人に見せれるとは言え、【自分らしさ】がなかった。

限界が来た始祖は、このインスピレーションの正体を明かそうとする。

始祖は元々優秀だったため、段々と正体を掴めてきた。それは、実態を持たない【何か】だった。

始祖は何とかそれを実体化させるため努力した。何をすれば良いのか、どうすればこの祝福(のろい)から抜け出せるか。


「……はは……できた」


乾いた笑いとともに、始祖の指先から炎が溢れていた。小さいが、それは確かに美しい炎だった。風に揺られ、ほのかに温かさを感じる。

それを、自分の絵を褒めてくれた少年に見せる。少年は、異形の力に恐れずに


「すっげぇ手品!俺にも教えて!」


と興奮しながら教えを乞うてくる。始祖はやり方を伝えたが、少年には才能には才能がなく、何も出来ずにいた。

インスピレーション正体を知った始祖は、それを磨きあげることで、段々と普通の生活をできるようになった。始祖は、それの名前をMP(マジックポイント)と名付け、それにより生まれる事象を魔法と名付けた。

生活に彩りが出てきた。それにより、白黒に見えた世界に色が着き始めた。画材の色が段々と分かるようになり、異常な色ではなく、普通の色で絵を描いた。それにより、始祖の絵は認められていった。

順風満帆に見えた始祖の世界。

だが、そんな世界は直ぐに終わりを告げる。

朝目が覚め、いつも通りの生活をしていると、突然ドアを蹴り飛ばされる。


「こいつか……おい、連れて行け」


始祖はそのままどこかに連れ去られていった。着いた先はどこかの地下深く。始祖の持つ異形の力をどこかで聞いたのか、国はその力を欲し、始祖を誘拐したのだ。


「その力はお前だけのものか?やり方があるのか?」


質問攻めにされる始祖。始祖にとってそれはどうでもよく、ただ絵の続きを描きたかった。だから全てを教えた。自分の持つ全てを。

その部屋での生活は、地獄そのものだった。娯楽はなく、最低限の食事のみ。硬いベッドの上で毛布もなく、ただただ眠るのみ。鎖につながられており、動けるのはせいぜい一、二メートルほど。そして数ヶ月後。


「嘘をついたな!!」


始祖は頬を思い切り殴られる。鋭い痛みが走り、頬が赤くなる。そこだけ体温が上昇しているのがよくわかる。ヒリヒリとしており、痛みはいつまでも引かない。魔法は、誰も使えなかった。一般人から、始祖と同じ画家まで、全てを試したが誰も使うことはできなかった。


「……いや、そうか……貴様だけが特別な血筋という可能性も……」


そいつは、小さく呟き、そのまま部屋を出ていった。

その日から、地獄は続いた。その日からは【適合者】を作るため、血筋を残すだけの機械に成り果てた。

色は、もう白も黒も残っていなかった。

そして、魔法は誰でも使えるものとなり、一般的になった。人々は魔法に頼り、技術の発展をせずに永遠と魔法を極めた。

誰も、始祖のことなど記憶から無くなっていた。


魔法の力。それは努力では埋まらず、生まれ持った才能が全て。

そして始祖は、MP総量、才能、全てを持っていた。その異形と言える力を使い、食料もなく、水すらない空間でも生きながらえていた。

頭に残るのは、書き途中の絵。

錆びた鉄の手錠を溶かし、始祖は家に向かい歩みをすすめた。

地下の道を進む。だが、兵士達が道を防ぐ。始祖は何も言わず、ただ手を横に振る。

強い風が吹き、地面や壁が欠られ、兵士達はそのまま跡形もなく塵となり、消えた。

始祖は何の感情も出さず、また歩みを始めた。

何人の人を葬ったのか、自分でも分からないほどになった時、始祖は外に出た。

その国は魔法の発祥の地となり、ただ稲富と名声を得ていた。そして、その国の王は、あの男だった。


「き、貴様!!!兵士達よ、武器を持て!!!!」


兵士達はやせ細った始祖を見て、余裕そうに魔法を放つ。

始祖は身動きひとつ取らずに、その場にただ立ち尽くしていた。

雫がひとつ、王の鼻に落ちる。瞬間、焼けるような痛みが鼻にどんどんと侵食していき、鼻が溶け、地面にボタボタと落ちていく。

その国は、一瞬で地獄となった。どこからも叫び声が響く。空を見上げると、大きな雨雲があった。落ちてくる雫は全て透明で、冷たそうに見えるが、肌に当たる度、焼けるような痛みが肌を刺し、そのまま溶けだしていく。

王は始祖に目線を向ける。そこには、無傷で雨を当たっている始祖が居た。


「……これは、苦しみを生み出す雨。攻撃されそうだったから……でも、安心して」


始祖は、街の中心に移動していく。王達は追いかけようにも、どんどんと身体が溶けていく。痛みも酷くなっていくばかりで、移動なんてする暇はなかった。今はただ、建物の中に避難することを考えていた。


「……もう、楽になればいい」


始祖は、天を仰ぎ、空を見つめる。

その瞬間、世界から音が消える。白い閃光が辺りに光り出す。身体を見つめると、どんどんと消えていっている。だが、不思議と痛みはなく、暖かい何かが身体を包む。そのまま、その国の住人は全員朽ち果てた。

国があった場所には、大きなクレーターができており、その中心にはやせ細った者が一人立っていた。

その者はただ歩き始めた。色のない世界を。

何週間か経ったあと、扉を開けた。

そのままいつものよう椅子に座る。もう石のように固くなった絵の具に筆をつけ、乾燥して色落ちした描き途中の絵を描き始める。色は、ハッキリと見えていた。

その姿が発見されたのは、この出来事から一日後。突然消えた大規模国家。それを一夜にして消した者。

その罪を全て画家は認め、大罪人として処刑された。

最後に画家が書いた絵を。

その絵は、世界一美しい絵と評価された。

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