ナルシスト、再度魔法を知る
「……あの三人組め、俺の身体をグサグサと刺しよって、服が血だらけだ。明日、訓練前に服を買わなくわな」
服は血だらけ、肌は切り傷や刺し傷だらけのヤナギ。そんなボロボロの状態になっても立って歩けている。
「これは、日々の訓練のおかげか?……いや、それだけでは説明がつかんな」
女神の加護、そんなことを考えたが、あの女神が加護を与えたようには感じなかった。
他に思い当たることといえば。
「MP……だな。未だに理解できていない。また図書館にお世話になりそうだな」
ゴリナの元に戻ったヤナギ。
ヤナギの姿を見て驚きつつも治療をしてくれたゴリナ。そのままいつも通りに夜を過ごし、一日が過ぎた。
「今日はイータとの訓練の日。本当は剣について教えてもらいたいところだが……」
髪を整えながら独り言呟くヤナギ。
現在の持ち金額を確認している。
「……大人しくやめておこう」
そっと袋を閉じ、机の上に置いた。
一通り準備を終えたヤナギは、時間が余っているため図書館に向かおうとする前に。
「服が底を尽き始めたな。まさかいちばん消耗する物が服とは」
制服は一応貴重なものかもしれないため保管している。それ以外の服は一着を除き全て傷だらけだ。
「元々の数も少なかったが、まさかここまでボロボロになるとはな」
「……これは、俺の美貌を更に引き立てる服を探さなくてはな」
図書館に向かう前に服屋に向かったヤナギ。
昔元の世界で服を選ぶと、親に本気でやめておけと言われたヤナギ。そこから服は親が買ってきたものを着ている。
「そこまで絶望的なセンスだったのか?一度選んだ服を店員に確認してもらうか」
そこでも本気で止められたヤナギは、大人しく自分に合う服を選んでもらい、その服を購入し、そのまま着衣し図書館に向かう。
「……今後、服はおすすめ以外買わん」
二度も本気で止められたヤナギは、服についての自信が無くなっていた。
「げ!まじでまた来やがったっすね……」
「せっかくの珍しいお客様だぞ?有難く思え」
「図書館にお客様は要らないっすよ。ここは本を保管している場所っす。それを全員が見られるようにしてるだけっす」
「御託はいいから、早く門を開けろ」
まだ三回程しか来ていないのにここまで対応。だがヤナギは海よりも広い心でその態度を許した。
いつものように字の練習をする前に、魔法などの詳細を載せている本を探した。
すると、いつも如くまた本棚がズレて見える。
「ここまで来るとわざとだろ……一度司書を呼ぶか」
司書はダルそうにしながらこちらに向かってきた。
「マジじゃん……なんで?毎回閉めたこと確認してんのに」
「俺が来ると毎回こうなっているぞ。お前、わざと空けておいてるだろう」
「んな事するわけないじゃないっすか……めんどいし、あんたに教えてやるっすよ……一回入ったから知ってるだろうけど」
「司書がそんな適当でいいのか……というか、わかってたのか」
「私の事舐めすぎじゃないっすか?明らかに態度が違ったっすよ」
奥の扉を進み、またあの部屋を訪れたヤナギ。
嫌な記憶が頭に蘇る。
「はい、ここは死んだ人の記憶を保管しているところっすよ。全部……とはいかないっすけど、だいたいの人の記憶はここにあるっす」
「何故、人の記憶を保管している?趣味が悪いぞ」
「それは私じゃなくて国に伝えてくださいっす。私も悪趣味だと思ってるっすよ。でも、多分魔法を学習するとかなら一番効率がいいからじゃないっすか?」
「余計な記憶も入ってくるからここに閉まっていると……本はどこからやってくるのだ?勝手に生まれる訳ではないだろう」
「不正解。勝手生まれてくるっすよ。安心してくださいっす。この部屋は別の次元にある、だから本でパンクすることはないっすよ」
「随分ハイテクなものだな。ついでにひとつ。MPについて詳細に書かれている本を教えてくれ」
司書は無言のまま、どこかに向かった。
暫く待っていると、一冊の本を持ちながらこちらに向かってきた。
「……この本を見ればいいと思うっすよ。精神がぶっ壊れてもこっちのせいにしないでくださいね?」
「この本は一体誰の記憶だ?伝説的な魔法使いか?」
「見たらわかるっすよ。でも、ホントに自己責任っすよ?」
念を押されつつも、ヤナギは本のページをめくる。
一ページ目をみると、画家が絵を描いているようだ。その絵に、ヤナギはそっと触れた。




