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ナルシスト、カツアゲされる

「カツアゲ……そうだ。今ん所は、カツアゲ」


「何やら深みのある言い方をするではないか。もういいか?俺は帰るべきところがあるのだ」


「ちょいちょい。待て待て。今の状況わかってない?」


ヤナギの目の前にはそれぞれ短剣を構えた男が三人。この場所は街のはずれで人通りは少ない。そして今は空が真っ黒で、月の光が微かに入ってきている。


「わかったかな?今、君脅されてんの。逃げようとしたら、わかるよね?」


真ん中の男が短剣を揺らしながらジリジリと近寄ってくる。ヤナギのことを明らかに挑発しているのがわかる。

ヤナギの顎に向かって短剣を向ける。鋭い先端が顎に当たりそうになる。


「何が目的だ?まさか、俺の美貌の秘密を知りたいのか?そうだな……まずは普段から努力を怠らず――」


「おい!!!!あんま舐めんなよ?」


男の怒号が辺りに響く。品性のかけらもない、怒りに任せた声。ヤナギは自身の話を遮られたことに少し苛立ちを覚える。


「せっかく美貌の秘密を教えてやろうと思ったのにな」


「……一回立場を分からせねぇと行けないようだな」


二人がヤナギの後ろに周り、三人がヤナギのことを包囲する。目の前に立つ男は顎から喉元に向けて短剣を動かす。

残りの二人はニヤニヤとしながらこちらを見つめてくる。


「今、俺は不愉快な気分だ。今のうちに辞めるが吉だぞ」


「馬鹿は黙ってろよ!」


男が素早く短剣をヤナギの喉元に差し込む。ヤナギは寸前で身体を仰け反り避ける。

ヤナギはその勢いで地面に手を付け、押し出し男の顎を思い切り蹴りあげる。

男は短剣を握りしめながら宙を舞った。


「てめぇ!よくも!」


「先に手を出したのは貴様らだからな。正当防衛ということでいかせてもらう」


二人は短剣を力任せで振り回す。

ヤナギは短剣の起動を見切り、少ない動きで攻撃を避け続ける。二人が疲労で隙を見せた瞬間、ヤナギはその隙を見過ごさず、一人に顔面に素早いジャブを打ち込む。

男は鼻血を出しながら後ろに仰け反る。

もう一人の男には回し蹴りを喰らわせる。頭に直で喰らった男は思いっきり吹き飛ばされる。


「狙う相手を間違えたな。いや、ここで負けたのは結果的に良かったかもしれん。自分達が弱者だと知れたんだからな」


「なめんな……よ!!」


一番初めに絞めた男の手から水魔法が飛び出す。反射的にヤナギは魔法で防ぐが、あまり強くなく無駄だった。だが、ヤナギの視界が飛沫で塞がったその瞬間、男達はどこかに消え去った。


「逃したか。まあいい、俺はあいつらと違って弱者を痛ぶるのは趣味じゃない。俺の美学に反する」


ヤナギはそこまで気にせず帰路に着く。いつものように手鏡で髪の毛を直していると、後ろに立っている三人組が見えた。

ヤナギは見えた瞬間、後ろに向かって回し蹴りを行う。だが、急いでいたため距離を見誤り、蹴りは空を切る。

男の一人はその隙にヤナギの脚に短剣を差し込み、グリグリと回し始める。

ヤナギの表情が痛みで大きく歪む。血液が服に染み始めた。刺された部分が熱くなり始める。


「はははは!!!弱者はお前なんだよ!!大人しく俺らにぶっ殺されてろ!!」


その表情は狂気に満ちており、人間ではないなにかに見えた。その顔は、人間よりも獣に近かった。ヤナギはそう感じ、恐怖を抱いた。

残りの二人はヤナギの横に回りこみ、横腹目掛けて短剣を刺そうと腕を伸ばす。

ヤナギは痛みに悶えながらも、伸ばされる腕を上から叩きつけ短剣を落とす。


「貴様らには……この程度はあまっちょろいようだな!!」


脚にしがみつく男の脳天に向かい、力いっぱい拳を喰らわせる。何回も、何回も。

男は痛みでそのまま地面に倒れ込む。

横の者たちは痛みを耐えながら、もう片方の腕で短剣を拾う。お互いに、体力はあまり残っていなかった。


――能力を使う


そんな考えがヤナギの頭を通る。だが、今使えば一人しか倒せず、気絶したヤナギはそのまま殺されるだろう。それに、人に向かって使うには圧倒的に威力が大きすぎる。確実に殺してしまう。

それは、ヤナギの美学に反することだ。

八方塞がりの状態になり、二人はヤナギににじり寄ってくる。どんどんと壁際に追い詰められてくヤナギ。


「こうなれば、やるかやられるか……となれば」


ヤナギは覚悟を決めた。


被弾覚悟でヤナギは全力で走り出す。男にぶつかり、そのまま壁へとぶつける。男はヤナギの背中を短剣で何度も何度も刺し込む。

血が服に滲む。

じんわりとした温かさが背中に生まれる。

ヤナギは痛みに悶えながらも男の顔面に膝蹴りを思い切り打ち込む。男はそのまま気絶し、短剣を地面に落とす。

後ろから近寄る男には、魔法を纏わせた短剣を投げる。運が良いのか悪いのか、短剣は男の【急所】に刺さる。


「あっ……」


「……………」


暫く沈黙が続く。

段々と男の顔色が悪くなる。赤、緑、青と色とりどりに。

汗がダラダラと流れる。

その痛みは想像もできない。

男は叫ぶでもなく、股間を抑えながら、その場に座り込み、動かなくなった。

そして、一言。


「……すまん」


ヤナギは気まずい空気になりながらも、無事に帰路に戻る。

そこから、三人組を街角で見かけるものは居なくなった。

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