ナルシスト、待ち時間を過ごす
馬車に揺られながら、街へ到着するのを待っている五人。馬車の中はお香が炊かれており、花のような匂いが鼻をくすぐる。今はあまり風が吹いておらず、ダイレクトに匂いが伝わってくる。
イータは腰の剣から手を離さずに少し目を瞑り、直ぐに目を開けた。
「そろそろ着くか……よし。そろそろ着くよ」
寝ている皆をイータは起こす。ヤナギ以外は眠そうに目を開け、イータの視線の方向を確認すると、街を囲む壁が見えてきた。
「結構寝たな……まだ寝足りねぇけど…」
「ふあ……このぐらいの距離なら、あと数分で着きそうですね」
馬車が街の近くの門で止まる。五人はそこでおり、馬車に乗せてくれた男に感謝と金を払う。
「ふっ、リラックスするにはちょうどいいお香だったぞ。また乗らせてくれ」
馬車はそのまま次のお客を乗せに行き、遠くに走り出した。 五人は門に身分証を見せ、街の中へ入る。
その姿は以前と変わらずに活気が溢れていた。
「ようやく帰ってきたって感じがするね」
「ああ。色欲に連れ去られたりしたしな……それよりハノ、目的のものは持っているよな?」
「安心してください。ちゃんとカバンに入れてますよ」
ハノはカバンに手を入れ、そのまま宝石を取り出す。その宝石は七色に光っており、綺麗な形をしていた。
「あそこの遺跡、なんでこんなものがあったんだろうね。それにギルドがこのことを知っているのも疑問に残る…」
そんな疑問を抱えながらも、五人はギルドに入る。ちょうど昼頃の時間のため、人が多く混みあっている。何とか人を押しのけて受付まで向かい、依頼の確認をする。
「……申し訳ございません。そのような依頼は取り扱っていません。それに、その時私は休暇を取っていまして……」
「え…で、でもほら!この宝石!確認の品ですよ!」
ハノはカバンから取り出した宝石を見せる。それを受付嬢は丁寧に持ち上げ、そのまま奥の部屋へと入っていく。イータ以外は冷や汗をかきながら、受付嬢が戻ってくるのを待っている。
数分後、受付嬢は申し訳なさそうに戻ってきた。その姿で、何かを察した。
「申し訳ございません……こちら、偽物の宝石でして……成分などを確認しましたが、ただの石でした…」
「……」
ヨウは絶望し、膝から崩れ落ちる。
ミラはただ目を潤わせている
ハノは何も言わずにその場に突っ伏している。
絶望した様子の四人。その四人を連れ、イータは外に出る。
外に出ても魂が出てきているような姿の四人。
「……それはそうだよね。ヤナギは死にかけたし、三人は色欲と戦ったわけだし……」
ハノは深くため息を着く。色欲に嵌められた現実を直視し始めたのだ。
「つまり、僕達は色欲の手の上で踊ってたわけですね……」
「うん…多分だけど、街に潜入するために変身する人を探してたんじゃないかな?」
「はぁ……こういう簡単すぎる依頼は今後、ちゃんと見定めねぇとな……」
どんよりとした空気が漂う。街は活気に溢れ、キラキラと光っているが、ここの空気一帯だけが、ジメジメとした湿り気を孕んでいる。
「……まあなんでもいいが、次に集まるのはいつにする。明日か?」
「ああすいません。僕は明日から五日間はここに来れません」
「なら俺達もだぜ。明日はミラとちと用事があってな。絶対に外せねぇ用事だ。多分だけど、五日はかかると思う」
「なら…俺とイータだけか?」
「それなんだけど、ヤナギくんが色欲じゃないことはわかったから僕は監視から外れ、街周辺の警戒をしなくちゃいけない。隙間時間に訓練の手伝いならできそうだけど……」
ヤナギ以外は見事に全員用事がある。そしてイータも今後は街の監視を行うときた。全員の予定が綺麗に合わない。ヤナギは腕を組みながら、小さく唸った。
「なら、イータ以外は五日後にギルド集合でいいか?」
「はい」
「それなら行けると思うぜ」
「よし、それならイータ、二日後に訓練を頼みたい。場所と時間を決めてくれ」
「……そうだね。じゃあ場所はギルドの裏の広場に来てほしい。僕が貸し切っておくよ。時間は今ぐらいでいいかな?」
ヤナギは問題ないと顔を縦に振った。そしてその後は全員解散し、各自自身の戻るべき所へと戻って行った。
ヤナギはゴリナの待つ店ではなく、雑貨店へとよった。
「俺が寝る前、イータが最後に寝たのはいつだろうかみたいなことを言っていたはずだ……不眠症なのだろうな。よく寝れるアロマと睡眠用具を買って行ってやろう」
「……字がまだまだ読めん、学習不足だな。すまない、この字は……」
ヤナギはイータのことを思い、雑貨店で睡眠道具を買い揃え、ゴリナの待つ店へと戻って行った。
太陽は、未だに大きく輝いて見える。




