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ナルシスト、模擬戦を行う

魔法と共に、ハノが攻撃を仕掛ける。様々な魔法を組み合わせた攻撃。色とりどりのその様子は、まるで花火を見ているようだった。

ヤナギは迫る魔法を一つ一つ捌く。だが量が多いため、全てを打ち消すことは出来なかった。

ヤナギは避けに専念し、攻撃が緩んだところに追撃を仕掛ける。その魔法は弾かれるが、確かにハノの喉元に食らいつける一撃だった。


「やはり筋はかなりいいですね……でも、魔法を使ってる年数が違うんですよ!」


更に攻撃が激しくなる。ハノは魔法の一撃の威力を下げ、量でそれらを補っているため、弾幕の数を増やすことが可能なのだ。

ヤナギは片手が弧を描きながら魔法を弾き、体勢を低く沈め、そのまま木の後ろで魔法を避ける。

ヤナギが魔法を使ってまだ一日も経っていないのに、何故ここまで戦えるのか。それは、元々の才能もあるが、本の中の動きがこびりついているからだ。

明らかに今は負けている。だが、ヤナギは勝機を見出していた。


「一つ一つはそこまで大したことがない。それを量で何とかしている……なら…」


ヤナギは魔法が重なっているところを狙い、強力な一撃を放つ。その一撃は、空気を切り裂きハノの魔法を打ち消しながら進み、何とかハノに命中する。

打ち消した分威力は下がっているが、ヤナギにとっては大きな進歩だった。


「ふっ、この程度か?魔法使いさんよ」


「随分僕も甘く見られましたね……」


ハノは腕につけられた傷を抑えながら、持っている杖に力を込める。風の流れが、ハノ中心になる。空中のMPがハノに向いているのがわかる。


「こっからは本気ですからね……何とか耐えてくださいね!」


ヤナギは構え、攻撃に備える。が、ハノから放たれた魔法を、ヤナギは見ることができなかった。その一撃は音を置き去りにし、ヤナギの腹に命中した。ヤナギはその衝撃に耐えきれずに、そのまま後ろに吹き飛ばされた。


「…この魔法は得意なんですよ。これでも、まだ余裕な態度を取れますか?」


「いや……これを見せられては、余裕が無くなってしまうな。何せ、髪型が崩れてしまった」


ヤナギは絶え絶えになりそうな息と崩れた髪を整えながら、腹にMPを集中させる。誰に教わった訳では無いが、MPによる身体強化は、魔法を使える者にとっては呼吸のようなものだった。


「ちなみに、魔法の詠唱というのは効果があるのか?さっきから俺もしていないし、ハノもしてないようだが」


「する意味は無いです。でも、初めて使う時や慣れていない時は詠唱した方がいいですよ。そっちの方が上手くMPが集まるので。あと……」


「ファイア!サンダー!」


前方から来る魔法を、こちらも魔法で相殺する。しかし、先程までいたハノの姿はなく、どこかに消えていた。すると突然、後ろから魔法が放たれ、そのままモロに食らってしまう。


「こんな感じに、不意打ちに使えるので」


「……お前も卑怯な奴だな……!」


背中にほとばしる痛みに耐えながらも、身体を起こす。ヤナギはそのまま魔法を放つ。こちらの利点は、純粋な身体能力だと理解している。そのためできるだけ身体を動かし魔法を避け、MPを消費させる作戦だ。時折魔法を放つことで、防御にMPを割かせ、消費スピードを更に加速させている。


「あなたも結構小賢しいですよ…でも!」


突然突風が吹く。ヤナギだけを狙うように吹き荒れる暴風。風が当たる度に冷たい感覚が肌を突き刺す。風により音も、視界も奪われる。抜け出すことは可能だが、防御を辞めると肌を風邪が切り裂き、タダではすまないだろう。

ヤナギは何が来ても耐えるために、MPを全て防御に使う。


「さあこい!この美しい城を落としてみろ!」


ヤナギはハノを挑発する。挑発に乗り、攻撃してきたところを反撃するためだ。

全神経を研ぎ澄まし、音に注目する。


「……こういう所が、歴の長さの利点ですよ」


音もなく、後ろからハノの手が当たる。風により雑音が多く、普段の感覚を使うことができなかった。瞬間、身体に激痛が走る。全身の血管がかき混ぜられているかのような感覚。肌に触れる風は冷たいのに、内側は焼けるように熱い。


「これは、どの属性にも入っていない魔法です。身体のMPを暴走させる魔法。防御にMPを使うほど、どんどんと痛みは増していきます……あっ」


ヤナギは身体をピクピクと痙攣させ、その場に倒れ込んでいた。見ているだけでわかる。身体に限界が来たのだろう。ハノはやりすぎたことを後悔し、額に手を当てる。


「……一応…僕の勝ちですね…」


「負けでいいから……手を貸してくれ……こんな姿は長時間もしたくない……」


勝利宣言を行い、ヤナギをおんぶしながらイータ達のいる場所へと戻る。ヤナギの身体は、未だに痙攣を起こしている。


「…ミラさんに治してもらいましょう……」


ヤナギは返事をせずに、ただただ痛みに耐えていた。

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