ナルシスト、魔法を知る
「まあ暗い話はここまでにして、そろそろ朝ご飯にしようか。みんなお腹がすいていると思うんだ。ヨウくんもミラさんも、匂いに誘われて起きると思うからね。僕が作っておくからね」
イータは腰を上げ、そのまま料理道具を取り出す。慣れた手つきで魔法で火をつける。
「えっと…食材はどこかな?」
「あっ、そのカバンの中です。僕も手伝いますよ」
「いいや、大丈夫だよ。料理の腕には自信があるんだ。それよりも、ハノさんはヤナギくんの魔法の練習に付き合ってやって欲しいな」
「ん?」
ヤナギは手鏡で自身の身なりを確認している時に声をかけられた。そして、集中しておりあまり話を聞いていなかったようだ。
「別に俺は何も言ってないが……練習と言ったな?まあ好都合だ。よしハノ、こっちに来い」
ハノはヤナギに言われるがままについて行く。イータは二人が行ったことを確認すると、そのまま料理に移る。
二人は森の開けた場所まで移動している。ハノは起きてすぐのため少しだけ眠そうに欠伸をしている。
「……ここらでいいだろうな。いい感じに開けている」
「それで…魔法と言ってましたが、魔法使えるようになったんですか?」
「その通り。これを見ろ。あまりの美しさに恐れおののくなよ?」
ヤナギは指を一本空に向けて伸ばす。指にどんどんと黒い闇がまとわりついていく。指の周りには少しだけ風が吹いていた。
「これが俺の魔法だ、どうだ?」
「ヤナギさんは闇適正でしたか……そうですね…精度はあまりよくはないですね」
「…いざ言われると案外来るものだな……まあいい、ここからトレーニングの時間だ。俺に魔法を教えてくれ」
「ふふっ…いいでしょう!」
ハノは得意げに笑顔を見せる。それも当然、ハノは全ての属性を使うことができる。そのため、魔法についてはヤナギに教えられるという自信があった。
「まずは魔法について簡単に教えましょうか。魔法はその人に宿る【絵の具】を具現化させるものです。簡単に言うとパレットですね。基本的に一人一つの色を初めから持っています」
「パレットと言ったな?あとから色を足したり、混ぜたりできるのか?」
「混ぜることはできます。前に僕がやった、具現化させた魔法同士を混ぜるものですね。あと、色を足したりはできませんね。できるとしても道具で一時的に色を足す、と言った感じですね」
ヤナギは眉間に皺を寄せている。
「…お前は魔法を全属性使えるのだろう?そういったものはどういうものなのだ?」
「元々持っている色が多い人のことです。二種類ならそこそこいるのですが、全種類はそうそういませんね。どうです!すごいでしょう!」
「はいはい…では疑問だが、ただ色を具現化させるだけなら、威力や上級、初級は変わらないのではないか?」
「威力は、今持っている絵の具、つまりMPの量です。多ければその分強くなり、少ないとその分弱くなる。そして、使いすぎては直ぐに底をつく、というものです」
「なるほどな…」
ヤナギが指先にMPを集中させる。普段以上に力を込めたためか魔法が不安定で、すぐに辺りに散布される。
「MPの入れすぎですね。もっと心を落ち着かせて。こんな感じに」
ハノの指先に火がつく。ヤナギのように不安定な魔法ではなく、安定した火力で、吹いている風に負けずにつき続いている。
「ふむ……ちなみに、魔法の格付けなどはどのように決められているのだ?」
「それは筆のことです。たとえどれだけ絵の具を持っていようが、筆が悪ければあまりいい絵はかけないでしょう?……僕はいい筆は持っているんですけど、MPが多くないので使ったら一瞬でMPがすぐに空っぽになるんですよね…」
「それは…まあ………それより、基本的なことはわかった。次は闇魔法を教えてくれ」
「そうですね、闇魔法はかなり戦闘向きな属性です。殺傷能力の高い魔法がかなりあり、多分ヤナギさんの使っているその初級魔法でもかなり戦えるでしょうね」
「…なるほど、なら次はどうする?」
「やはり、実戦が一番成長できます。なので今から、ここで魔法のみでの模擬戦をしたいと思います。…準備はいいですか?」
空気が切り替わる。模擬戦とはいえ、手を抜くつもりなどない。ヤナギは自然に指先に力を込めた。
「…かかってこい」
「こっちが挑んでるみたいな言い方しますね…」
お互いの身体にMPが循環し始める。ハノの表情は、先程の眠たそうな顔ではなくなっている。柔らかい雰囲気ではなく、一人の魔法使いとしての顔となる。
「…ファイア!」
ハノの魔法により、戦闘の火蓋は切られた。




