ナルシスト、覚醒する
「はぁ…はぁ…イータちゃん……やってくれるわね」
息を荒らげながら森のどこかでボロボロになり、身体の半分を失っているメモータルの姿があった。
「お陰で、残りの能力全部使っちゃったじゃない…MPも空っぽ……」
木にもたれかかり、空を見上げる。
「星が綺麗ね……」
ポツリと、メモータルは呟く。
場面は代わり、遺跡に向かって全速力で向かっている一行。
「ハノ君、大丈夫かい?結構急いでいるけど、無理そうなら僕だけで先に向かうけど」
「大丈夫…です。これくらい、どうってことは…」
「俺は全然行けるぜ。この程度ならなんてこたぁねぇ」
「…きっつい……」
イータは何かを考えながら、その場に止まった。
「…仕方ない。三人とも、僕に捕まってくれ」
「え?」
困惑しながらも、三人はイータの身体に捕まる。
「よし、しっかりと捕まってね。あと、舌を噛まないように」
瞬間、イータは全力で飛び上がる。地面が揺れる。イータは空中で更に加速し、遺跡へ一直線で向かう。長い間走っていたが、そんなのを無に消すかのように、遺跡に数秒で着いた。
「みんな無事かい?でも許してくれ、あの速度で向かってたら数時間はかかっただろうしね」
「すっげぇな!あんな速度出るんだな!」
ヨウ以外メンバーは、まるで魂が抜けたかのようにその場に座っていた。
「無理をさせたね…悪かった。……その様子じゃ無理そうだね。ヨウくん、二人を頼む」
イータは素早く遺跡の中へ入っていった。ハノは頑張って立ち上がろうとしているが、上手く足を動かせていなかった。
「助け…たいのに…」
イータは遺跡の中に入ると目を閉じて、ヤナギの居場所を調べていた。イータは太陽神の加護により、様々な能力を得ている。その中のひとつ、【MP検知】で居場所を確認している。
「…見つけた」
イータは一直線でその場に向かった。地面をぶち抜き、一直線で。
「こいつら…倒しても倒してもキリがないな……まるで俺の美しさのようだな」
戯言を言っているが、ヤナギの体力はどんどんと削られている。無限に湧き続けるモンスター達、ヤナギはもうボロボロだった。しかし、命は消えかかる度に燃え上がる。
「……ふっ、死にそうになっているのに…なぜこんな笑みが出るのだろうな…理由はこれだろうが」
ヤナギの瞳には、確かな闘志が燃え上がっていた。
すると、とある記憶が頭を過ぎる。ヤナギの口角がどんどんと上がっていく。
「あの本の記憶……忘れたくても忘れられなかった惨状…だが得たものはあった!これだ!」
あの忌々しい本……まるで地獄に居るかのような感覚だったが、得たものはあった。
本の中で使っていたあの魔法。
ヤナギは二本の指をモンスターに向かって突き出す。その手には黒い【何か】がまとわりついている。まるで空間を切り裂くかのように横に素早く移動させる。
「【影断】」
指の動きに連動するかのように、闇に包まれた斬撃が現れる。一直線に斬撃は飛び出し、モンスターの身体を一刀両断する。
「……なるほどな。本の中で使ったのと比べると、劣るが確かに強力な魔法だ。気に入ったぞ」
どんどんと現れるモンスター達、そのモンスターに向けて再び指を向けるヤナギ。
「…俺はどうやら武器を持つとすぐに壊れたり無くしてしまう運命にあるらしい……だが、これで安心したぞ。どうやら最強の刃は、俺のこの手をようだ」
ヤナギの身体の状態とは裏腹に、ヤナギの瞳からはどんどんと闘士が溢れ出していく。




