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ナルシスト、最強に付きまとわれる

「…ホントに来るんだな。お前」


「仕方ないさ。まだ色欲の疑いが君にある。だからこうして、僕が見張らないと」


イータとヤナギは、パーティメンバーのいるギルドへ向かった。街一番の変人と最強の男が一緒に歩いているため、二人は奇っ怪な目で見られていた。


「まあそこまで気を張らなくていいよ。護衛でついた、みたいに考えた方がいい」


「ちなみに……もし色欲がこの状況で現れたらどうなる?」


イータは、青年の顔から、【処刑人】の顔になった。


「それは、疑いが完全に腫れるだろうね。僕も色欲の討伐に動くため、君は自由の身さ」


「…ならわかった」


ヤナギはイータの方向を見つめながら、宣言した。


「俺が、色欲の罪、メモータルを討伐してやろう。見た目を変える能力を持っているなど、自分に自信がないと言っているのと同義。そんな半端者、この俺が片付けてやる」


イータは強ばった顔を緩め、笑顔になった。


「本当にそうしてくれたらありがたいんだけどね…着いたよ」


二人はギルドの扉を開け、中に入った。


「この空気にも慣れてきたな…お、ハノ。それとヨウとミラ。昨日ぶりだな」


「あっ、遅いですよヤナギさ……え?」


ハノは自分の目を疑った。ヤナギの後ろには、この国最強の男、イータが立っていたからだ。ハノはヤナギの横に立ち、小声で話した。


「……ヤナギさん。一体何があったんですか?」


「話せば長くなる。簡単に言うと護衛が着いた」


「もう何も聞きません……」


ハノは頭をかかえ吹っ切れたのか、依頼を内容を伝えた。


「今回は、遺跡の探索です。かなり遠くなので、三日間の予定です。馬車も森の中は通れないので、一日目は森を通り、二日目で遺跡に到着、探索し、三日目に帰る予定です」


「なるほどな。理解できた。もう出発か?」


「はい、拡張カバンに食料などをしっかり入れておりました。回復用のポーションなどもです」


ハノの用意周到なところが、なんだかヤナギは誇らしくなった。だが、パーティの視線が一人に注目した。


「……どうしたんだい。僕の顔になにか着いて?あっ、安心してくれ。僕も戦うけどみんなに成長してもらいたいから、そこまで参加しないよ。報酬もいらないさ」


「……なんでもいいが三日間も出かけるなら、それを伝えないといけない人が居るのでな、先に門で待っててくれ」


ヤナギとイータは一足先にギルドを後にし、ゴリナのいる果物屋に向かう。いつものに果物屋は賑わっている。


「こんにちは、ゴリナさん。朝ぶりですね」


「おう、どうしたんだ?なんか用か?」


「実は…」


ヤナギは色欲に疑われたこと、三日間の依頼のことを簡潔に伝えた。するとゴリナは豪快に笑いだした。


「そうかそうか!まさか色欲に疑われるとはな!それで、三日間いないんだっけか?安心して行ってこい!」


「ありがとうございます…では」


「…あっ、これ持ってけ」


ゴリナは、果実をひとつヤナギに渡した。


「それはナナバっつう果実だ。お代は、無事に帰ってくることだ!」


「…はい!」


ヤナギは果実をしっかり持ち、皆の待つ門に向かった。イータとヤナギの沈黙のなか、ヤナギはその沈黙を破った。


「そういえば、イータは腰に剣をつけているな。俺も最近短剣から切り替えたのだ。良ければ、色々と教えてくれないか」


「ああ、大丈夫だよ。しっかり、鍛えてあげるね」


イータの不気味な笑みに、ヤナギは少し後悔した。門につき、森の目の前までは馬車で行き、そこから先は徒歩で向かった。


「やっぱり森はジメジメしてんな…そう思わねぇか、ナルシ」


「全くだ。髪がすぐに崩れてしまう。ちなみに、どのくらい歩くつもりだ?」


「えっと、だいたいこの時計で、九時まで歩くつもりですね。途中で休憩は入れますけど。今は…丁度一時間なので、あと三時間ほどで休憩としましょうか」


森の中を雑談を交えながらも歩き進める。洞窟と違い、これといった罠がないため特に何も起きずに順調に進めた。丁度三時間ほど経ち、十分ほど休憩をしていると、森がザワザワとし始めた。


「…なんだか騒がしいな。動物達がうるさくなってきたぞ」


「……皆さん、警戒態勢を。どうやらモンスターのようです」


全員が武器を構え、戦闘態勢になる。木々を押し退けながら現れたのは、大きな熊であった。その熊は額に角があり、筋肉が大きく発達していた。


鬼熊(オーガベアー)です。皆さん警戒を…」


ハノが指示を出し、全員が攻撃の構えをとる。しかし……


「…安心してくれ、君たちの安全を、僕が保証する」


イータは前へ歩きだし、腰の剣を抜く。

オーガベアーはイータに向かって全力で攻撃し始める。爪を尖らせ、牙を立て、体重を乗せた攻撃をする。

しかし、イータには傷一つつかず、ピンピンとしている。


「知っているかい?オーガベアーは、筋肉が硬くてあまり食べられてないんだけど、手の肉球は柔らかくて、旨みが染みてて美味しいんだよ」


イータは平然と話し続ける。

オーガベアーは、その姿に怯えたのか、文字通りしっぽを巻いて全速力で逃げ始める。逃げるオーガベアーに向けてイータは軽く剣を縦に振る。

突風が吹いた。剣から放たれた斬撃が、オーガベアーの身体を真っ二つに割いた。


「……よし、夜はオーガベアーの肉球を食べようか」


オーガベアー…ウサギ親方以上の怪力と俊敏性、そして耐久性を持つ。並の力では太刀打ちできない。そんなモンスターを、軽い一撃で葬ったイータ。


「……は?」


全員理解が追いつかなかった。攻撃を受けても平然としており、話し続けている。

四人は、自分たちとイータの間にある絶望的な差を理解した。

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