ナルシスト、洞窟に向かう
「ゴリナさん。今帰った」
「おう、遅かったな。図書館に行くって言ってたが…何してたんだ?」
ゴリナは店の締め作業をしていた。果実はほぼ残っておらず、店の人気度がわかる。
「ああ、少し勉強していた。ご飯なんだが、俺が作ろうか?ゴリナさんは疲れているだろうし」
「疲れてんのはお前の方だろ。包帯巻いといて、顔色も悪りぃ。俺が作るから、部屋でゆっくりしときな」
「…ありがとう。感謝する」
ヤナギは一度部屋に戻った。そして、図書館での出来事を思い出す。
あの光景、人を殺す瞬間と、死の瞬間がフラッシュバックする。
「……」
表情が思わず強ばる。
「…考えるだけでは仕方ない。ひとまず、トレーニングを始めるか」
ヤナギは日課のトレーニングを始めた。腹筋、腕立て、スクワッド、股上げ、クランチ二十五回を三セット。それを終えたあとは、柔軟をした。
「ふぅ…いい感じに身体がほぐれたな。…そろそろか」
ドアがノックされ、ゴリナが入ってくる。
「おい、飯できたぞ。来な」
「わかりました」
ヤナギは身体の熱を抑えながら、食卓に向かった。机の上には、肉や野菜、パンとスープが置かれていた。
「おお、食いごたえがありそうだ。じゃあ、いただきます」
肉を噛む度に旨みが湧き出てくる。パンは肉の旨味を引き立てており、スープはタマネギの旨みがよく出ている。
「…美味い…やっぱりゴリナさんは料理上手ですね」
「いいや、俺なんか全然だ。妻の料理は絶品でな…」
そんな話を交えながら、ヤナギは料理を平らげ、風呂場へ向かう。
「ここだったよな」
洗面所の扉を開け、洗面台の隣のドアを開けると、そこには風呂場があった。
「着替えはまだ買えてないが…仕方ない」
ヤナギは包帯などを外し風呂に入り、出ると同じ服を着た。
「もう夜も遅い…寝るとしよう。明日はギルドに行かないとな…」
ヤナギはそのまま意識を手放した。
「……朝か…」
起きると朝のストレッチをし、手鏡を使い寝癖などを整える。
「よし。完璧な俺の出来上がりだ」
ヤナギはそのまま部屋を出て、ゴリナの手伝いをしに向かった。
「おう、今日は朝早いな。そこの箱を運んでくれ」
「了解です」
戦いのお陰か、箱は軽く持ち上げることができた。今までの自分では考えられない力だ。
「これも異世界のおかげ…か?」
箱を全て運び終えると、そのまま店の外へ向かった。
「…ギルドに向かう前に……」
前回の戦いでボロボロになった短剣を、新しいものに買い換えた。
「…すまない。短剣が買いたい。いくらだ?」
「はいはい、こいつは銀貨五枚だ」
「じゃあ金貨一枚で頼む」
「はい、お釣りで銀貨五枚だな。もしも壊れかけの武器があるから、こっちで買い取るぞ」
ヤナギは壊れかけの短剣を渡し、銅貨一枚を受け取った。武器を新調し、気分が上がったヤナギはそのままギルドに向かった。
扉を開けると、ハノがいた。その周りには、二人ほど誰かがいた。
「ようハノ。一日ぶりだな。こっちは誰だ?」
「来ましたね、ヤナギさん。紹介します。この人達は今からパーティを組む人です。右の人はヨウさんです。前衛担当です」
その人は、腰に大剣を持っており、短めの黒髪でヤナギより少し小さめの身長だった。頭には猫のような耳が着いていおり、しっぽのある。
「お前がナルシストで噂のやつか」
「根拠のある自信は悪いことでは無いだろう?」
「まあなんでもいい。パーティ組むんだ。仲良くしようぜ!ナルシ!」
「…ナルシ?」
変な呼び方をつけられ、なんだか複雑な気分なヤナギ。
「左の人はミラさんです。この人は後方で支援を担当してもらいます」
「…よろしく」
暗めの印象だが、身長はヤナギより一回り大きく、綺麗な黒髪が目立っている。
「ふむ…色々と個性的なメンバーだな」
「一番個性的なヤナギさんが言います?…とりあえず、パーティを組むことは大丈夫ですかね?」
「ああ、問題ない。それで?これからどうする?依頼を受けるか?」
「もう依頼は受けてあります。場所は南にある洞窟です。結構遠いので、馬車で向かいます」
ヤナギ達は早速馬車のあるところに向かった。どうやら金はもう払っているらしく、すんなり乗れた。
馬車の上では、色々と雑談をしながら、洞窟に着くまで待った。
「…着きましたね。ここが、今回の依頼の洞窟です」
「いい雰囲気では…無さそうだな」
なんとも禍々しい風が洞窟から吹いていた。冷たい風が肌を撫でる度、ゾワゾワした感覚になる。
「なんだか…嫌な感じがプンプンするぜ」
ヨウは警戒しながらも、そういった。
「まあ、行く以外に選択肢は無い訳だがな」
「…行きますか!」
ヤナギ達はそれぞれ足並みを揃えて、洞窟の中へと向かった。




