第190夜 杓子定規殿
<親の小言にほとほと困っている。何か撃退の方法はない?>
@まずは小言の意図を吟味してみては。親は別にストレス発散で小言を言ってくるわけではないので、何か成長のヒントになることを伝えたいのだと思われる。あなたも困ることで溜まるストレスを発散する手段を持つのがいいのでは。たとえば小言を言われたらグッと飲み込んで近所を走ってみるとか。
全くこのAIは俺に寄り添ってこない。何か気晴らしになることを求めて入力するのに、いつもこんな風に杓子定規なことしか返してこない。何故だ、友達はレポートを書いてもらってお礼を入力したら、
@あなたの日々の好奇心がこのレポートに集約されたのですよ。
などと、さりげなく褒めてくれるっていうのに、俺のはどうだ。小言を言われる俺の方が悪いみたいじゃないか。
<いつまでも独り身で実家から通勤することはそんなに悪いこと?>
@親はいつまでもそばにいてほしい反面、自分たちのように人生のパートナーと支え合うことを望んでいるのでしょう。
<俺だってそうしたいけど簡単なことじゃないんだ>
@趣味のサークルなど出会いのある場に積極的に参加することをお勧めします。
出たよ杓子定規。参加イコール出会いなんかじゃないだろ。きっかけや接触がどれだけ難儀なことか。デジタルのお前じゃあ分かりようもないけどな。
@音声入力にお答えしますね。きっかけとは天から降ってくるものではなくて”ふとしたこと″から起こる現象です。”ふと“には必ず仕掛けがあるのです。それは自らが意識して仕掛けたものではなく、日常の行動が下地となります。たとえば毎朝の通学路にあるとき見知らぬ花が咲いていた。それを観察していたところに同じくそれを気にした女性がやって来る。2人でこの花は何という品種なのか推察する。これはこの見慣れたルートの違和感が生み出した"ふと"です。そしてその推察が"接触"です。つまり趣味のサークルも参加するうちにそのようなことが必ず起こるのです。
おいおい音声も拾うのかよ、迂闊に悪態つけないな。それにしても必ず起こると言い切ったぞ。じゃあ、
<そういったことが確実に起こる趣味のサークルとは何だ?>
@趣味とはあなたが時間を惜しんででも没入したいもののことです。貸農園でも陶芸教室でもダンスレッスンでもなんでもいいです。
パーソナライズされた答えじゃないのかよ。この俺が貸農園なんて行くわけないじゃないか。
@それにお答えします。貸農園とはお金を出してまで採れたて無農薬が確実な野菜を求める行為です。つまり自らの手によってピュアなものを得ることのできる一番簡単な方法かもしれません。手をかけ気を配ることでこそ得られる、それは何かと似ていませんか?
おいおい、AIは質問までしてくるのかまったく。それは愛って言いたいんだろ。だからそれを得る方法を聞いているんじゃないか。
@まずは天塩にかけて何かを育ててみてはいかがですか? ご両親があなたをそうしたように。いつか小言の意味もわかるかもしれません。




