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鎌倉千一夜  作者: Kamakura Betty
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184/221

第184夜 統制軟膏

髪を刈り揃え

制服に糊を効かせ

規範を唱和し

序列を競う歩駒たち


後にリュックを背にした河童となり

車中の杖老婆に目もくれず

寡黙に掌画面の球を移動させる

まるで荒地の立枯木のように


右に倣えなる成分

突出鎮静なる効能

この国伝承の妙薬軟膏は

広く数多に塗布された


みごとなまでの均一

人も街も匂いも音も

同じであることの安心

フィクションだけの喜怒哀楽


聞こえる歌の

小さな励ましと希望に

能面ヅラで焦がれる

立枯木たちの他力本願


シロツメグサの野原には

ドクダミすら芽吹く余地なく

常に身を低くす

風に靡くこともせず


軟膏の効力は永遠

洗えども擦れども

心まで浸透した成分は

心身に沈殿続ける


軟膏処方前の新たな生命

用意された色鮮やかな玩具でなく

電気仕掛けの黒きスレート

触れば擬似宇宙が広がる


善も悪も

愛も欲も

夢も希望も

全ては映る

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