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悪魔の片鱗

感想ください!


「ハァッ!」


「なっ!」


飛び斬り。手加減無しの最初から全力の攻撃である。躊躇した方が死ぬ。それを分かっている史人は、あり程度戦い慣れている部類なのだろう。


だからこそ、た(・)っ(・)た(・)1(・)回(・)打(・)ち(・)合(・)っ(・)た(・)だ(・)け(・)で、目の前で砕け散る己の錆びた刀を見て目を見張る。


「なんだそれ?玩具みてぇな武器だな。脆すぎる」


「…………」


一旦距離を置いて、2本目をすぐに作り出す。武器魔術師が作り出す武器としては確かに脆い、がそれでもたった1回打ち合っただけで壊れるのは初めてだ。しかも、一撃では壊れないように念入りに魔力を込めた刀だ。いつも使い捨てで出している刀とは違う。


「情報通りだな。武器魔術師にしては珍しいタイプじゃねぇか。錆びた刀なんてクソみてぇな武器しか出せないほど才能無いのに、よくやってるよ。余程実戦経験を積んだな?」


「……さぁ…どうだろぉなッ!」


真っ向から行くのがダメだったら裏から、裏からダメだったら上から、下からあらゆる攻め方を駆使して攻略法を探す。


「ハッハッ!小僧、お前は勘違いしてないか?」


才能が無いのは知っている。なら、己にあるのは工夫と経験と思い切りを総動員して戦うのみ。


「って、思ってんなら……お前は馬鹿だぜ?」


軽く振られたドスと呼ばれるヤクザがよく持っている刀。それを受けようとするが。


「ほれっ」


「なっ!?」


力を込めて守りに入った史人の錆びた刀にぶつかった瞬間、くるりと敵の刀が曲がったような錯覚を覚えて気がついた時には、持っていた刀は宙に舞い上がっていた。


すぐに新しい刀を顕現させようとするが。


「経験も工夫も思い切りも…才能も俺が上だ。高い授業料だったな。死ねや」


刺突の体勢に入りそのまま突き出される刀。


「ぅ、ぉおおお!」


錆びた刀を顕現させるのがコンマ数秒速かった。錆びた刀身で防御するが。


「止まるか…そんな朽ちた鉄で」


再度砕け散った赤錆の破片と一緒に鮮血が飛ぶ。身体に綺麗な銀色の刀身が突き刺さり背中の肉を破るのが良くわかる。身体から血が、力が一気に抜けていく。


「いっちょ上がりだ。雑魚が、身の程を知らねぇからだ」


「…ぐっがぁ…」


ザジュっという、やけに水気の多い音とともにドスが引き抜かれる。それに対し、膝を付いて横に力なく倒れた史人。


「おにいちゃぁぁぁぁん!」


「……う、嘘……た、助け…」


美紗希は悲惨な兄の姿に絶叫し、魔術陣を多数作成する。鮎川はまだ状況の変化についていけない。


「おっと。やべぇなほら、お兄ちゃん、助けてくれよ」


瀕死の史人の頭を掴みあげて魔術陣の攻撃の盾にする。これにより美紗希は攻撃が出来なくなる。


「…お兄ちゃんを離せ…外道…」


「ヤクザが外道じゃなくてどうすんだよ。それにしたって同じ野良魔術師に外道呼ばわりはされたくねぇな。ほら、ほら、お兄ちゃん死んじゃうぞぉー、その魔術陣しまえよ」


「……クズ野郎…」


「口が悪いのはお前の妹かっ!てな!」


「ぐぁぁぁぁぁ!」


今度は史人の背中から刺されたドス。それをぐりぐりと回して、傷をグチャグチャにする、この激痛に史人暴れながら叫び狂う。


「やめて!お願い!やめてください!」


「頼み事をする時は?誠意を見せろよ」


膝をついて頭を下げる。土下座して懇願しようとする、美紗希に違うッ!と怒声を上げる竜二。


「服を脱げよ。それで初めてスタートラインだ」


「なっ!」


「早くしろよ?お兄ちゃん死んじゃうぞ?」


ニタニタと笑う下品な笑みを浮かべる村上竜二。


「…わ、かりました。脱ぐ…ので、お兄ちゃんを離して…」


「言ったろ?そこがスタートラインだって。全部脱いでから離すかどうか決める。あぁ、でも、そこで震えている女も脱いだら考えてやるが」


チラリと鮎川の方もみてそう答える竜二。ビクッと震えて目をそらす鮎川に失望し美紗希が服を脱ぎ始める。


「お、お前だけか?そこの女は役にたたねぇってことか?」


「………そうよ」


「ハッ。気丈だねぇ。俺好みだ。国家魔術師から隠れている間暇だったんだ。お前を調教でもして暇を潰してやるか」


ヒヒヒッと笑うその顔にからは嫌悪感しか抱かない。震える身体を抑えて下着だけになる美紗希。


「男好きするいい身体じゃねぇか。いいねぇ、さぁ。全部脱いじまえ」


「…………わかっているわよ」


「ま、待って。そ、そこまでする?」


鮎川が慌てて止めに入るが、忌々しそうに美紗希が睨みつけるだけだ。


「お兄ちゃんの為ならできるわ、貴方と違ってね」


「…あ…う…」


「いいねぇ。家族愛って奴にしては行き過ぎているが。まぁ、兄が死にそうなんだ冷静にはなれねぇか。そら、そら、速く」



「――――もっと速く目が覚めていれば良かったよ」


「ッ!?」


その一撃を受け止められたのは奇跡だろう。それほどの意識外から、そして速い一撃であった。なにせ、ビリビリと己のドスが震えるのだから。


「史人は返して貰うよ。鮎川…史人を頼むよ。傷を癒してくれ。いや、違うな。やれ、鮎川」


「で、でも。…は、はい!」


相馬の攻撃を受けたことにより史人を離してしまった竜二。史人は相馬の手の中にあり、鮎川に手渡す。


「氷よ全てを――」


「げっ!やべぇ!」


人質がいなくなった以上、美紗希に残ったのは怒りだけだ。己を脱がせたことではない、兄を苦しめた怒り。魔術陣の数を見ればそれがかつてない事がわかる。


「あいつを殺せ!」


「うおっ!やべ!死ぬ死ぬ!」


「死ねよ。僕も…珍しく怒りを抑えられないから」


氷の攻撃魔術を避けた先にいるのは光る剣を持ち待ち構える相馬。青と白の美しいコントラストに村上竜二は逃げることしかできないのであった。






「……お願い…直って!…直って!」


その声が聞こえた時に見た光景は必死な鮎川では無い、後ろで戦う美紗希と相馬の戦いだ。


「な……ん…だ」


「ふ、史人くん!よ、よかった。相馬くんに怒られなくてすむ…」


邪魔だ。そこをどけ。後ろが、後ろの戦いが見えないだろうが。


「……ど………け」


「えっ?何?」


史人に耳を近づけたことによって、ようやく見えるようになった。視界が広くなり改めて見ても異次元の戦いである。


「……ハッ…」


努力でどうにかなると思っていた。いや、なるのかもしれない。あの竜二という男は才能は史人よりはあるが全体では普通か無い方だ。それでも2人を相手に生き延びている。しかし、あの二人は魔術師になって間もない。才人の最初期と凡人の行き着く先が同列……。


魔術師というのは才能に酷く依存すると何度も聞いている。勿論戦い方次第でどのような強敵も打ち破る事は可能だ。


可能…なのか?本当に…勝てる気がしない。美紗希にも……本気のタガの外れた相馬にも。小南という女にも美紗希の援護があって初めて勝てた。いや、もしかしたら美紗希一人で勝てたのではないか。


俺は……何のためにここにいるのか。あっさりやられて、妹に恥辱を受けさせ、最後は足でまとい。


馬鹿みたいだ。俺の努力の全て。


意味は無い訳では無い。しかし、求めるものには到底届きはしない


「だから言ったろ?今回は運がよかった。でも、お前が弱いからあのまま終わっていた可能性だって考えられるよな?」


「早く俺を受け入れろよ。理解はもうしているはずだ。大井?知ったこっちゃねぇよ。あいつの言うこと聞いてこの始末だぜ?」


……………………………………。


「ったく。仕方ねぇな。体験版だ。特別だぞ?」







(ッチィ!面倒せぇな!あの二人!どっかでまた人質を……タイミングを見計らって…関心ないように見せて…今ッ!)


「なっ!?」


「不味い!鮎川!史人!」


一瞬の油断。そこをつかれ再度、戦闘能力の無い史人と鮎川を人質にしようと駆ける。完全に対応が遅れた2人は最悪の事態を回避する事は不可能。


「取ったぜ!今度は女が人質…っ!?」


不可能だったはずであった。動けない史人では、動けても弱い史人では。そこから攻撃を加えることなんて。


「…………寂しいなぁ。もう1回俺を人質にしてくれよ…刺し会いっこしよーぜ?どっちが先に死ぬかのなぁ!キハハハハハハッ!」


まだ傷が直っていない身体から血を垂れ流し、それでも痛みを感じさせない素早い動きで錆びた刀を竜二の腹に突き刺し、更に深く差し込んでいく史人。


ぐりぐりと刺さった刀を動かし傷口を大きくしていく史人の顔は、まるで悪魔のように嗤っていたのだった。


強引な勧誘からの無理矢理、体験版。クーリングオフって効けばいいんですけどねぇ。感想よろしくお願いします!

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