再開は苦い味
連投でびっくりした?俺もびっくりしてる!
「結界は破壊出来ましたね。さぁ、次に我々で認識阻害の結界を作りましょう。敵を1人も逃がさない為に!」
「「はい!」」
一網打尽。こんな乱暴な方法がとれるのも全て二百人もの人数がいるからだ。野良魔術師達が作り上げた結界を破壊、そして改めて国家魔術師達が認識阻害の結界をはり直す。これは、国家魔術師の許可無くして外には出られない結界でもある
これを壊すのは国家魔術師側と同じように結界を作れる魔術師が数十人単位で必要になる。
「そんな戦力。ここにはあるわけ無いですからねぇ…」
例外があるとすれば、大井武蔵レベルの存在。あれならばこの結界を容易に壊すことが出来るだろう。しかし、ここにはいないはずだ。
「まぁ…いたらいたで…好都合です。今度こそ、殺してやりますよ」
「よっしゃ。義正はん!もうええな?」
「えぇ、えぇ。ご存分に。ここでは、今まで好きなだけ野良魔術師を駆逐できますよ。うるさい、警察の目も無いですからねぇ」
「それはいいわね。あいつらを堂々と殺せる機会が来たのはありがたいわ。じゃ、行ってくるわね」
「俺も行ってくるでぇ!」
北上と呼ばれた関西の男と小南と言う真面目そうな女性が先頭を切って結界内に歩いていく。小南はあまりこういう虐殺のような行為が好きではないと思ったが、野良魔術師に何かしらの恨みがあるのかその歩みに迷いは無い。
「ではでは、私もいきましょう」
「あの。義正さん。いいんでしょうか?」
「相馬くん。何がですか?」
「いえ、みんなバラバラに行動して…敵が纏まって来たら…」
相馬が心配しているのは統率の問題だ。中世のように隊列を組んで進めという訳では無い。それでも、せめてペアで進むべきではないのか。なにせ、ここは敵地なのだから。万が一の事があるかもしれない。
「…なるほど。相馬くんは彼らがどんな人達かあまりに聞いてませんね?鮎川さんも、詳しいことは?」
「…す、すいません。聞いてません」
「ふむ…これは私が説明していなかったのが悪いですね。まぁ、簡単に言ってしまえばです。少なくともここでは、彼ら彼女らは群れる必要は無いのです」
「…それは…っ!?」
質問を続けようとした瞬間に、国家魔術師達が向かった方向から次々に悲鳴が上がる。
「彼らは地方から集められた精鋭達です。それぞれの地域での最強達なのですよ。ここの親玉ですら1人で仕留めることは容易いはずです。本来、こんな所に二百人もつぎ込む必要なんて無いんですが…まぁ、初作戦の景気づけみたいなものです。言ったでしょう?血祭りだって、初めから戦いでは無いのですよ」
「そ…れって。ただの…虐殺です…よね」
「鮎川さん。勝者の戦は常に結果的には虐殺になるものなんですよ。さぁ、では君達も行きなさい。君達なら、ここの野良魔術師達には遅れはとらないはずです。妙な情をかけなければね」
「………はい…。野良魔術師は悪い人達なんですよね?」
「えぇ。とっても。世界に災厄を撒き散らす存在ですよ。貴方はそれを処理するだけ。それだけです」
「……わかりました…。相馬くん。行こ」
「鮎川は……いや。何でもない。では、行ってきます」
「頑張ってねぇー」
手を振って消えていく二人の新人国家魔術師を見送り、その場にただ1人になった義正。
「さて……先程感じた大井武蔵のような気配。もし…いるのだとすれば…ここで…殺す」
気配を感じた方向を睨み歩を進める。そこに宿敵がいるかもしれない、勘違いかもしれないようか小さな気配でも復讐に突き動かされた男は躊躇なくそちらに向かうのであった。
「あいつマジで執拗いな!それになんであれ食らって生きてんだよ!クソっ!これじゃすぐに史人の元へ行けねぇじゃねぇか!」
悪態をつきながら、壁伝いに隠れ走る。結界内の史人の位置と史人に秘密に連れてきたもう1人の所在を確認する。
「史人の所に知らねぇ魔力が1人。近くに…いるな。合流はすぐに出来るだろ、あいつなら。それより、問題なのは…」
史人に近づく魔力が二人。周りに比べて小さい魔力だが、野良魔術師という感じではない。目下の問題の国家魔術師達だろう。しかし、何故史人の元へ一直線に向かっているのであろうか。
「………っと!やべ!あいつ感知系使えねぇ筈なのに、俺を追ってきやがる!刑事の勘ってやつか?クソくらえ!」
面倒事はごめんと逃げる大井武蔵。それを、何となくいそうな気がするという感覚だけで追いかける義正正義の追いかけっこはしばらく終わりそうにない。
「あぁ、畜生!本当に何やってんだ俺は!」
「テメェ!国家魔術師か!よくもやってくれたな!」
「だから知らねぇって言ってんだろ!クソっ!」
一時的に意識の無い少女を地面に出来る限り優しく転がし、斧の攻撃を錆びた刀で受け止める。重量級の攻撃をまとも受けたことにより錆びた刀が砕け散るがすぐに次の刀を生み出して突き出す。
それを軽々と避けて距離をとり、忌々しそうにこちらを睨みつける。
「錆びた刀…テメェ…俺達、村上組を殺して回ってる赤錆の悪魔か!」
「残念ながらまだ悪魔に魂は売ってないから、違う奴だろ。俺じゃねぇよ」
「そんな言い訳が通じると思ってんのか!」
「思ってなきゃ言わねぇよ。あ、ごめん流石に嘘だわ」
「どっから嘘か分からねぇな!ここで殺してやるよ、俺はな村上組の中でもNo.3!今までの雑魚と一緒にすんじゃねぇぞ!」
「へぇ、俺はこの前No.1取ったぞ?」
「…まさかお前、敵対していた三越組の…」
「ホストクラブでなぁ!」
「ここで1番デケェ嘘言ってんじゃねぇこの野郎!!」
最後だけ本当の事だ。なんて、軽口は出てこない。何故ならデカい斧を構える男に錆びた刀を持って果敢に突撃していたから。
「ハッ!赤錆の悪魔なんて言われてるからよほど強え奴かと思ったが、あんなに簡単に砕けるような武器魔術師かよ!ここで村上組に喧嘩を売ったことを悔やんで、死ね!」
「斧は振る数が少ないから喋れるのな。羨ましいわ、そのまま喋って舌噛んで死ねばいいのに」
なんだかんだ、軽口は尽きずに剣戟を交わしていく。なるほどNo.3と言うだけあって確かに今までの雑魚とは一味違う。だが…。
「俺はこういう事も出来るんだよ!」
一旦距離をとり、錆びた刀の刀身を掴む。錆びて切れ味など殆ど無いから出来ることだ。それでも強く握ると若干血が出来るがそれでもすぐ治る。
「斧みてぇな遅い武器でこれを弾けるかァ!」
「なっ!テメェ!卑怯だぞ!」
「っるせっ!」
槍投げの要領で斧使いの男へ向かい錆びた刀を投げつける。第一投目は斧で弾かれるが、すぐさま第2、第3投目を投げていく。新しい錆びた刀をいくつも出せるのはこういう時に便利である。
「ぐっ!ぬぉぉぉ!」
何とか防いではいるがこれでは厳しいと斧使いがこちらに突撃してくるこちらは全力で刀を投げつけ続ける。
「デカい図体は離れればただの的だな!喰らえ!」
最後の一投、それだけはかなりの魔力を込めて投げつける。今までの速度とは違う一投にギリギリで反応する斧使い。流石No.3この至近距離ででも反応するとは。
「ヌゥっ!?」
「オラァ!」
大きく踏み込み、体勢崩れた男の懐に潜り込む。するりと入った史人の手にはよく切れそうなナイフ。意識を失ったというのにまだ顕現したままの少女の武器を拝借したのだ。
「…ガハッ…!」
「終わりだ。お母さんを殺された少女の全魔力が篭ったナイフで死ねるんだ?クズ組織の斧野郎の最後にしては上等だろ?」
返答は無い。首に刺した為にとめどなく溢れる血と痙攣する身体がドウという音を立ててアスファルトの地面に倒れた。血に濡れた身体を見て顔を顰めるが、すぐに気を取り直して少女を抱えて場所を移そうとする。
「まって!待ってくれ!史人…だろ……?」
足を止めて振り返る。その姿はついさっき斧使いを殺したばかりで血塗られている。
再開する俺たちにとって…何より俺を表す姿としてはこれ以上にわかりやすい姿は無いだろう。なんて、己を嗤いながら。
「あぁ、久しぶりだな。相馬、鮎川。赤錆の悪魔、なんて呼ばれている殺人鬼何のようだ?今度こそ俺らを殺しに来たのか?公僕野郎」
自分でも驚く程の低く、殺意の篭った声。睨みつける目に確かな殺意が込められていたのだった。
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