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新たな天災の片鱗

これから三千文字くらいに抑えようかなって思ってます。オラ、長すぎるのは良くないってじっちゃが言ってたの聞いたぞッ。


深夜、それでも繁華街の光はより強く光っていた。その光を横目に時代に取り残されたような景観が広がる地獄の結界内。


ここでも静寂とは程遠い戦闘音と色とりどりの光が各地から上がる。東京の温暖な気候とはいえ、冬は寒く険しい。魔術師という中々死ねない身体がある為に凍死はしない。が、底辺魔術師からすれば、すぐ目の前に雨を避け風から逃れられる建物があり、そこでぬくぬくと暮らしている奴がいるのだ。


そんなもの、殺してでも奪い取るにきまっている。その住む家というのがこの結界内で暮らす魔術師の生命線でもあるのだから。


ここでは住む家があるというのは、ある一定の強者だ。証と言い換えていい。何故なら、前に住んでいた奴を殺して奪い取ったものだから。その実力が保証されている。


この蠱毒の壺のような、毒虫達の殺し合い。終わる事の無い戦いに、錆びた刀をガッガッっと引きずりながら歩く男が1人。


「強く…ただ強く。ただこの地獄で生きていける力を…理不尽を跳ね返す…力を」


その瞳は、強い決意と重すぎる義務感に突き動かされている者の目。希望は無く、夢も、願いも無い。あるのは、狂おしい程の後悔からくる贖罪の義務。


この日から殺し合いを続ける毒虫達に新たな毒虫が参戦した。何のことは無い、遠くから見ると美しいと感じる毒虫達が放つ色とりどりの光に赤黒い稲妻の色が混じっただけ。それだけだ。






「……家族…なんだから…相談してくれれば…いいのに」


赤黒い光がまた路地の一角で強く輝いた。その光を拗ねたように見守る青葉。結界内にある周りを見渡せる少し高い建物の屋根に二人はいた。


「そう言うな。今日来たばかりの奴にそれを求めるのは酷だぜ?お前だって半年くらい俺と口聞かなかったじゃねぇか」


腕を組み、優しい微笑みで遠くで戦う史人を見る。その目はまるで反抗期の息子を優しく見守る父親のようなものだ。同じ男として、その気持ちは理解出来る。


「……うるさい……」


「ハッハッハッ!まぁ、別にお前のことが嫌いって訳じゃ無いから安心しな。あんだよ男には、全部背負いこもうとする時期が。器以上のものを望み手を伸ばす、そんな時がよ」


「父さんにも?」


「あぁ。結構最近までな。馬鹿で物事を客観的に見えてない愚か者。でも、その愚か者であった時期が男を大きく成長させる。見守ってやろうじゃねぇか、家族なんだからよ」


「…………ん。わかった…。私の弟だもん…絶対に死なせない」


「随分と史人を気に入ったな。父さん嬉しいぞ、また新しい家族と半年くらい口聞かないんじゃないかって不安だったから」


「うるさい!うるさい!もう!知らない!父さんはどっかいって!」


顔を真っ赤にして過去の自分の行いを喋る大井の口を止めようとする。親は子の黒歴史貯蔵庫だ、この点は永遠に勝てはしない。


「ハハハッ!怖い怖い、じゃ父さんは退散させてもらいますよっと。史人を頼むぞ、お姉ちゃん」


「………当たり前…私、お姉さんだもん」


青葉を残して、屋根から飛び降り先にアパートに戻る大井。真剣な表情で史人を見守る青葉を見て大丈夫だと安心して、も(・)う(・)1(・)つ(・)の(・)面(・)倒(・)な(・)事(・)に取り掛かることに決めた。


「今頃暴れてんだろぉなぁ。結界張ったから出られないだろーけどよ……猛獣に牙を与えていいものか…」


こちらは手のかかるモロ反抗期の娘をどうしようかと頭を悩ませる父親の姿であった。







ガチャとボロアパートの扉が開く音がする。その音に即座に反応する者の瞳は暗闇の部屋と同じく光の無い漆黒に覆われている。


「………そう睨むなよ…」


「……お兄ちゃんは何処?」


感情が一切感じられない声。その手は赤く腫れて、部屋の中に少しだけ暴れた跡があった。


「…はぁ……いやよ。来てすぐに俺を父と思えとはいわねぇよ?それと同じで来てすぐにここを自分の家とも思ってねぇはずだ。でも、これだけ躊躇なく暴れられるなんて…お前頭のネジ何本か外れてね?」


「お兄ちゃんは何処だって聞いてるの…!教えないと…」


「教えないと…なんだ?」


美紗希はまだ魔術師ではない。その才能も未知数だ。そんな者がいくら暴れたとて最強の男と呼ばれた大井は傷つける事は出来ない。どうやって、この荒ぶる娘をおさめようかと考えていた時。


「…こうするのよ!」


「……はっ?」


目をつぶり、ブツブツと何かを呟く美紗希。開いたその目は確かに殺意を秘め、右手を大井に向ける。その体勢はまるで―――。


「死の氷槍よ…その者の時を止める絶対零度で我が敵を滅ぼせ…ブライニクル!!」


右(・)手(・)に(・)魔(・)術(・)陣(・)が(・)現(・)れ(・)、そこから氷柱が放たれた。


「嘘ぉ!?」


心底驚いたが、目の前に防御の魔術陣を表してそれを防ぐ。もう何から驚いていいかわからない。


「ぐっ……まだまだぁ!」


美紗希の周りにもう3つの魔術陣が生まれてマシンガンのように氷柱が放たれていく。


「いやいやいや!待てお前!魔術陣の同時行使?は?嘘だろぉ!」


防御の魔術陣をもう2つ増やしてそこに隠れてやり過ごす大井。まだ目の前の光景を処理しきれていない。


「なんだ…あの詠唱?知らないぞ。ていうか、魔術陣とか全部デタラメじゃん!なんで発動すんの?それで4つの魔術陣同時行使とか…マジかよ…」


「このっ!砕けろ!」


これだけの連射をして苦しそうではあるがまだ魔力は尽きない。史人ならば最初の氷柱を放てるかどうか位の魔力だと言うのに…その妹はその何倍だ?いや、何百倍だろうこれは。


「えっ!?」


防御の魔術陣にピシリという良くない音が聞こえる。それが魔術陣から放たれる攻撃に確かな威力が込められていることが嫌でも分からされる。


「く…そ…お兄ち……だ…せ」


ようやく収まったと思ったらズリズリとはい寄ってくる美紗希の姿。ハイライトの消えた瞳と相まってもう軽くホラーだ。


「……いや…お前…お兄ちゃん好き過ぎんだろ……兄妹か本当に…なんか怖ぇよ…」


普通にドン引きしている大井。その怨念じみた執念はなんなのか。狂気さえ感じる妹の兄、史人への愛はなんなのか。


「何をどう拗らせたらこうなるのかねぇ」


意識を失った美紗希に恐る恐る近づいて起き上がらない事を確かめ、安堵の息を吐く。今日買ったばかりの美紗希の布団に運び寝かせる。


「まさか…俺と同じ天災かよ。初めて見たわ、俺以外って。史人なぁ…あいつ…とことんついてねぇな…茨の道ってレベルじゃねぇぞ」


天災の才はそれを上回る災厄に見舞われる。それを、凡才以下の史人が守るというのだ。努力ではどうしようない程大きな困難に、小さな凡愚はどう立ち向かって行くのか。そんな史人の修羅の未来。


「だから、兄を擦り切れさせない為にお前自身が強くなる必要があるな。俺みたいに跳ね返せよ、天災の力はそれができるんだからよ」


寝顔はまだまだ幼い顔を見せる美紗希。頑張れよと声をかけた後、引き出しから白紙の紙を1枚取り出す。


頭をかいてこれからの美紗希の育(・)成(・)計画を考えていく。天災の育成法は、同じ天災と呼ばれた大井武蔵が1番よく分かっていたから。


この日の夜はこうしてふけていく。家族(ファミリー)の始まりの日はこれからの生活を予感するように騒がしい1日であった。


妹の愛が重すぎる。そして、何処かで聞いたことがある詠唱。……怖いですねぇ…。

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