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「哨戒機より報告!フィリピンから国籍不明船団が北上したのを確認!」
台北の地下にある台湾守備隊総司令部に連絡兵の声がこだまする。
「何?南二つの飛行場に緊急発進を知らせろ!」
待機していた機体は南西と南東に四機ずつの七式艦上戦闘機で増槽と対空ロケット弾ポッド、対艦ロケット弾ポッドを抱えて飛び立った。
「国籍不明艦隊はフィリピン沖だ!行くぞ!」
ジェットエンジンが唸りを上げる。第二次世界大戦が伊仏の攻撃で始まってからフィリピンからの国籍不明艦隊や国籍不明航空隊の出現による緊急発進が増えていた。その内一回はフィリピン海軍所属の軽空母マニラ搭載機であるF8Fと衝突事故寸前まで行っていた。
「隊長、電探に機影です。」
「何?」
そう言って自機の電探を確認する。確かに機影が映っていた。
「確かにそうだな、念のため高度八千米に上昇。」
機影が近くなる。
「視認し次第報告せよ。」
艦影にも近い。
「発見しました。下二千米で五時方向です。機種はおそらくF8Fと推定。」
「でかした。旋回して奴等の後上方につく。」
「了解!」
電探と海図を突き合わせるとここは我国の領空だ。
「俺が説得の後応じなければ威嚇射撃する。退かなかったら攻撃だ。」
「了解!」
「フィリピン海軍航空隊に告ぐ。ここは我大日本帝国の領空である。至急領空より退出しろ。繰り返す、ここは我大日本帝国の領空である。至急領空より退出しろ。」
無線で話す。しかし奴らは悠々と飛び続ける。
「領空よりの退去を通告しましたが応答およびその素振りは見られません。威嚇射撃の許可を求む。」
「よろしい、威嚇射撃を認める。」
「威嚇射撃する。」
僚機に告ぐと河口空軍少尉は兵装選択スイッチを機首の12・7mm機関銃にするとF8Fと並行飛行して操縦桿の引鉄を素早く引いた。ダダッ、と機関銃弾が敵の前を流れる。フィリピン海軍の機体は左に急旋回を始めた。あわてて河口もついていくが旋回半径の大きい噴式戦闘機ではついていけない。
「引き返すかもしれん。様子を見ろ。」
僚機はF8Fの編隊を後上方から追尾する形だ。しかしフィリピン海軍は引き返す様子も無く北上を続けた。
「こちら隼、フィリピン海軍機に引き返す様子は見られません。攻撃許可を。」
「よろしい、認めよう。」
「はっ!」
河口は無線を管制塔から僚機に繋ぎ変えた。
「攻撃開始!全機叩き落とせ!」
「了解!」
急旋回すると敵編隊に八本の二十キロ対空ロケットを叩き込んだ。
数機が墜落するが残りは素早く旋回を開始する。強引なエンジンパワーに任せて旋回する。電探と連動した六式照準器が敵を捉えるとレバーを引いた。二〇ミリリボルバーカノンが火を吹いて敵機の翼を剥ぎ取る。
「どうだ?」
元々八機で三機落とされた敵は数的不利もあって直ぐに全機撃墜された。
「敵編隊の殲滅完了!敵艦隊への攻撃許可を求む。」
「いや、待て。その艦隊は領海の外を航行しているので攻撃は不可だ。帰投せよ。」
「了解、帰投します。」
僚機に帰投の旨を伝えると基地へ帰った。この事件は翌日早くも日米関係を更に悪化させた。比島政府は日本政府による宣戦布告と断罪した。ハーグ裁判所に持ち込もうにもオランダ、ベルギーは独仏の最前線になりつつある。仕方ないので今井に仲介を頼みスイスに置いて会談を開いた。参加国は当事者の日比、比島政府を保護国化している米、会談を開いたスイスの四カ国だった。
「事件の経緯ですが日付は六月一日、場所は台湾南東十海里地点上空六千米で間違いないですな。」
「ええ、そうです。」
「我軍の海軍第二哨戒飛行艇隊、陸軍台湾電探部隊及び、空軍台湾駐屯航空隊の報告を照らし合わしますと事件の経緯はまず六月一日午前十時四十三分に海軍第二哨戒飛行艇隊所属の二式大艇が電探上に艦影及び機影を確認、直ぐに台湾防衛軍司令部に連絡、四十五分に台湾防衛軍司令部通信室がそれを受電して軍司令官に報告が行き、空軍の台湾駐屯航空隊に緊急発進命令が下されたのが四十六分、台湾南東及び南西飛行場から各四機の戦闘機が発進したのが四十八分、五十分に南西、南東の航空機が合流、五十四分にフィリピン海軍所属のF8F艦上戦闘機八機と遭遇、五十五分に無線により領空よりの退去を通告、応答がないため五十六分に威嚇射撃許可を求める通信が軍司令部に入りそれを許可、五十七分に威嚇射撃を行うも退去の素振りなし、五十九分に攻撃の許可を求める無線が入る。十一時一分に攻撃許可が降りる。三分に攻撃が開始、七分に艦隊への攻撃許可を無線で求めてきたが領海外を航行していたため拒否、十分に帰投を開始した、ということですが間違いありませんか。」
「こちらは十時五十四分に軽空母マニラに日本戦闘機を視認と報告が入って次の報告が十一時三分の被撃墜報告ですから、まあ合っているのでしょう。」
「ならばただの領空侵犯事件ですよね、なんら問題なくフィリピン海軍に非があるとしか言えません。」
今井が面倒くさそうに終わらせようとする。
「いえ、待ってください、いくらなんでも全機撃墜は酷すぎます。」
「別に、退避勧告、威嚇射撃を行うも退避する素振りが無いためやむを得ず攻撃したのみで特に問題あるとは思えませんが。」
「フィリピン政府が訴えを起こしましたがフィリピン海軍に非があるでしょう。」
今井には日瑞中立尊重条約で日本はスイスの永世中立を尊重し、これを支援するが代わりにスイスは日本に揉め事があった時に仲介するふりをしてさりげなく日本を支援してもらうという内容でもちろん秘密条約だった。
「そうですね、フィリピン海軍が一方的に領空侵犯を行い、我海空軍はそれを阻止しただけですから。」
「ということでこれに関してはこれ以上は無しということで。」
今井が部屋を出ていく。
「米内、鯨はどうした?」
会談についてきた米内に聞く。鯨は伊四〇〇型潜水艦の事で七隻が竣工していた。戦略潜水艦として配備されている。現在配備されている先はソコトラ島、ウランゲル島、ペトロパブロフスク=カムチャツキー、トラック諸島に二隻、アゾレス諸島、クリスマス島である。対米開戦すれば直ちにハワイ、ニューヨーク、ダッチハーバー、マニラ、マダガスカルを空爆可能だった。更にロケットも発射可能に二隻は改造されており、残りも順に改造予定である。補給は二式大艇及び旧式駆逐艦を改造した特別輸送船で送っている。ようは敵の国土に先制攻撃が可能な戦略兵器なのだ。
「は、問題ありません。」
「よし、では、出撃待機かけとけ。」
「了解しました!帰国したら直ちにかけます。」
「うむ、よろしい。」
機体はスイスからドイツへと飛びドイツからロシア、シベリアを経由して帰国した。更に白計画の見直しを参謀本部に命令した。
「白計画の見直しですか。」
白計画は対米、伊、仏、伊蘭の四カ国を相手にした戦争計画だった。
「現状と米国による一方的な宣戦布告を条件に検討し直せ。」
「わかりました。」
本来の白計画の概要はフィリピン沖で海戦、フィリピン占領、ミッドウェー沖海戦、ミッドウェー占領、アリューシャン諸島の戦いを経て太平洋での地盤を固める間にイランを屈服させてマダガスカル島の米軍基地を攻略、アメリカを本土とハワイ、アラスカ以外丸裸にして独英と協調してアメリカを屈服させるという算段だったがこれはかなり他国任せで危険だ、まず独英が伊仏を完全に敗北に追い込むこと、同盟内部で離反が起きないこと、アメリカがその物量チートを発揮するまえにすべての作戦を終えること、等々の数多くの課題をクリアしてようやく米国と講和が結べるかどうか、というかなり難しい戦争だった。ただ日独英等の同盟海軍では米伊仏の海軍を圧倒、陸上でも圧倒していたが何より米本土への攻撃手段が戦略潜水艦の六式対地大型噴進弾と晴空に限られていた。逆にアメリカは台湾ないし沖縄を取れば日本空襲が行えるのだからなんとかせねばならない。そんなビハインドを負っていても日本にあってアメリカに無い物があった。それはリーダーの歴史知識である。アメリカは史実通りの開発(原爆以外)を行っているが日本は兵器先取りと失敗兵器に金と時間を費やさなくて済むのだから相当な物だろう。更に士官学校、下士官学校でも柔軟な絶対的な答えの無い問題を解かせるように改革を重ねた。又工業基盤が弱い亜細亜でも生産可能な三式突撃銃(AK47)と六式歩兵携帯噴進弾(RPG7)をメインとして銃弾も6・5ミリ有坂弾、9ミリパラベラム、12・7ミリ重機関銃弾の三種類に絞った。拳銃はスイスのsigP210を正式採用して、下士官、士官、航空機搭乗員、砲兵、戦車兵、憲兵などに配備された。士官は官給品であるこれを使用し、任務に個人調達の拳銃を持参することを不可とした。又、俺もこの銃を気に入ったのでホルスターと共に一つ手に入れた。更に台湾で義勇市民防衛隊を作り上げた、MP40を主兵器とする対戦車能力は欠けているが対歩兵に特化した軽歩兵だった。食糧、弾薬は支給された。正規軍の訓練の元に組、班、連、郡の四規模の部隊が整備された。一組は四人、五個組で班、二個組で連、三個連で郡を構成した。班に一丁の六式分隊支援火器と一門の九七式対戦車無反動砲が支給されていた。このような准軍組織が2万ほど台湾にいた。




