第6話、新たに得たもの
本日1話目
聡はダンジョン協会の探索用具店に来ていた。
大蜘蛛戦でボロボロになった防刃作業服を買い替えるために。
その後何回か狩りに出たので予算は十分確保出来ているはずだ。
「金のことは気にしない。生存性第一」
聡はそう自分に言い聞かせて店に入る。
早速防具コーナーへ向かう。
見るのは深層探索向けの装備。
浅層向けと深層向けで違うのは使われている素材だ。
探索者は祝福によって身体能力や強度が上昇する。
これにより、一定水準以上の祝福を得ると身体の強度が防具の強度を上回ってしまうという問題が発生する。
その問題を解決するのが、モンスター素材で作られた防具だ。
モンスター素材には着用者の祝福に反応し、強度を上げるという特徴がある。
だから、深層で探索しようとする探索者はいずれモンスター素材の防具に切り替えなければならない。
聡にとって、それが今だった。
「思ってたよりも少ないな」
深層向けの防具の品揃えは10着程しか並んでいなかった。
深層まで行こうとする探索者は少なく、需要も無いからだ。
その中から頑丈なものを選ぼうとする。
聡が重視するのは防刃性。切られて出血すると体力が削られる。パフォーマンスの低下は致命的になる可能性がある。
最終的に2層浅部に生息する森林狼の毛皮を使ったパーカーと、複合素材のズボンを購入する。
パーカーはフードによる首周りと頭の防御を期待して決めた。
フードを被っていると音が聞こえにくくなるが、魔力吸収による索敵がある聡にとって大きな問題にはならない。
ズボンに関しては弱点箇所の生地が厚めにされていたため、生存性が高いと思えたからだ。
聡は武器や雑貨なども見て回った。
他に買ったのは治療セットと大型ナイフ、替えのプロテクター、その他細々とした雑貨だ。
大型ナイフは子蜘蛛戦の反省を生かして、戦槌を振れないほどの近接戦になった時用の予備武器として購入した。
聡は店を出て、その足でダンジョンへ向かう。
防具の着こなしなどを確認するためだ。
ダンジョン館へ入り、受付を済ませる。
そこで、職員から定型文以外の言葉を聞くことになった。
「依頼されていた鑑定が終わりました。こちらお預かりしていた物と鑑定書です。」
その言葉とともに大蜘蛛からドロップしたスキルオーブと1枚の紙を渡される。
鑑定書には糸放出というスキル名が書かれていた。
ロビーに戻った聡は鑑定書を読み込む。
糸放出スキルは、名前の通り体から糸を出せると書いてあった。
細かいことは分からない。同じ名前が付いたスキルでも効果が全く同じでは無いからだ。
本当の性能は使用者自身しか理解し得ない。
「デメリットも無さそうだし使うか」
聡はスキルオーブを自分で使うことを決めた。
売って装備や消耗品に変えるよりも、使っても無くならないスキルを取った形だ。
使うには手で持って使おうと念じるだけで良い。
聡は糸放出スキルを習得した。
今日の目的がスキルの検証と試し撃ちに変わったが、やる事は変わらない。
聡は新しい装備を着込み、ダンジョンへと向かった。
まずはスキルの試し打ちから。
浅部の人通りが無いところまで移動する。
「使い方は分かるけど、1回はやってみないとな」
まず一本、糸を出してみる。
手のひらから糸が勢いよく飛び出し、2メートル程伸びたところで止まる。
糸の性質は、スキルオーブをドロップした大蜘蛛そっくりだった。
更に切れろと念じる。手から糸が離れ、床に落ちる。
その後も検証を続ける。
出せる糸の長さの限界、操作できるかなど、何時間もかけて試した。
様々な検証の結果、以下のことが分かった。
・糸は身体中のどこからでも出せる。着ているものに限り、服からも出せる。
・糸を出すときは太さ、長さ、粘度、本数、速度を決められる。
・長さの限界は無いようだったが、どんなに頑張ってもまっすぐ飛ぶのは10メートル程だった。
・出した後の糸は操作できない。ただし、身体に繋がっているものに限り、自切できる。
・身体から離れた糸は5分ほどで消滅する。
結果を脳内で纏めた聡は、索敵をしながらモンスターを探して歩く。
先の数回のダンジョン入りで、新しい索敵は近くのモンスターに気づけるようになるまで使いこなせるようになっていた。
聡はこれを逆魔力探知と呼んだ。
逆魔力探知がモンスターを捉える。
慎重に歩みを進め、モンスターの姿を視界に捉える。
一匹の洞窟鼠だった。こちらには気付いていない。
聡は右手で戦槌を構え、左手のひらを鼠に向ける。
粘着性の高い糸を発射。鼠の背中に命中。
そのまま糸を握りしめ、思い切り引っ張る。
鼠が地面から引き剥がされ、こちらへ引き寄せられる。
転がってきた所を足で止め、戦槌を振り下ろす。煙。
「実践使用も問題無さそうだ」
その日は低層で糸を使った狩りを続けた。
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