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第44話、最深部

 聡たちが進んでいくと、道のど真ん中に壁についているものより大きな球体が現れた。

「月野さん。あれって、壁についている玉と似ているわよね」

「僕の目にもそう見えます。見た感じ、材質なども同じようです。研究探索のときに調べてみましょう」


 聡たちは大玉の横を通り抜け、先に進もうとする。だが、進めなかった。

「道がない……?」

「まさか……」

 

 2人は予想外の事実にしばし固まったが、気を取り直してプランを再検討する。

「もしかして、3層深部か中部に別の道があるんじゃないかしら」

「そう考えるしかなさそうですね。

 そうなると、ここはまだ3層深部なんでしょう」


 聡は道を引き返そうとした。しかし舞が聡を呼び止める。

「せっかくここまで来たんだし、あの大玉も調べてみない?」

「そうですね。やるだけやってみましょう」


 聡は大玉に手を触れようとする。

 だが、大玉まであと10センチほどのところで、手が見えない何かに阻まれて触れることができない。

「この大玉、触れません」

 それを聞いた舞も大玉を触ろうとするが、こちらも何かに阻まれた。

「ほんとだわ。見えない壁があるみたい」

「切れ目を探してみます」

 聡は大玉の周囲をくまなく触ってみたが、透明な壁がない場所はなかった。

 

 一通り調査を終えた聡は興奮気味に話す。

「これがスキルだったら大発見ですよ。

 人間かモンスター以外がスキルを発動できるなんて初めてのことです」

「そうじゃなきゃスキルを使えないの?」

「そうなんです。今まで確認された中ではその2種類だけでした。

 ただの透明な物質の可能性もありますけど、それはそれで新素材だと思います。

 できればサンプルを持ち帰ってみたいですね」

「じゃあ、壊せるか試してみる?」

「そうですね。強度を調べる意味でもやってみましょう」

 聡はそう言うと戦槌を振り上げ、透明な壁に向けて振り下ろした。


 戦槌が透明な壁にぶつかった瞬間、大玉に異変が起こった。

 わずかな音を立てて震えると、液体にでもなったかのように地面に広がった。

 聡はそれを避けるように後退する。舞はロングソードを抜いて氷の鎧と大盾を出現させる。

 大玉だった黒い液体が盛り上がり、何かの形に変わっていく。

 最終的に黒い液体は聡と舞の姿を取った。


「巻き込んですみません」

「予想できなかったんだもの、しょうが……」

「巻き込んですみません」

 そのとき、黒い聡の口が動いて聡と同じ言葉を発した。

 声色、声の大きさ、イントネーション、その他細部に至るまで全く同じだった。

「予想できなかったんだもの、しょうが……」

 黒い舞も同じように舞の言葉を真似する。


 聡たちは小声で話し合う。

「あいつら、今話したわよね……」

「見た目同様模倣しているだけだと思います。意味までは理解していないんじゃないでしょうか」

「それは希望的観測かもね」

 そこまで話したとき、黒い聡と舞がこちらに向けて歩き出した。武器を構えながら。

「とりあえず戦いましょう」

 聡たちも武器を構えて前に出た。


 最初に動いたのは聡だった。黒い聡に向けて最大威力で手投げ矢を放つ。

 黒い聡は対応できないまま腹に大穴を開けた。

 しかし、数秒もたたないうちに黒い聡の周囲に飛び散った液体が移動し、穴が修復されてしまった。

「黒い月野さんの後ろを見て」

 舞が指さした場所には黒い液体が動かずに残っていた。それを見た聡は状況を理解する。

「ある程度小さくなると修復能力を失うようですね。」

「細切れにしていきましょう」


 次に動いたのは黒い聡だ。

 人間にはありえない跳躍力で正面にいる聡へと飛び掛かり、戦槌を振るってくる。

 聡はその瞬間、逆魔力探知に魔力反応を捉える。黒い聡はスキルを使った。

 心当たりのあるスキルは一つしかない。魔力噴射だ。

 それに気づいた聡は魔力噴射を最大出力にして戦槌で黒い戦槌を受け止める。

 聡の戦槌は振り抜かれ、黒い戦槌は崩れて周囲に飛び散った。

 思ったより軽い反動に聡は姿勢を崩しかけたが、どうにかバランスを保った。

 飛び散った戦槌を見た黒い聡は跳びのき、戦槌を再生させた。


 聡は模倣されるのを構わず舞に叫ぶ。

「相手は僕たちと同じスキルを使ってきます!それほど硬くありません!」

「分かった!」

 それを聞いた舞は即座に大盾を構え、氷柱を投擲した。

 周囲を凍らされると舞にとっては打開手段がない。だから遠距離戦を選んだのだろう。

 黒い舞も地面から氷の盾を出し、舞の氷柱を防ぐ。こちらも遠距離戦を選んだようだった。


 聡と舞は黒い自分たちとにらみ合う。

 聡が小声で舞に話しかける。

「舞さん。僕がどうにかしてあの氷の盾を壊しますから、その隙に攻撃をお願いします」

「分かった。その間は援護するわね」

「黒い舞さんが僕に近づけないようにしてくれると助かります。黒い僕は自分で対処できますから」

「一人で大丈夫なの?」

「相手はやわらかいので打ち合いだとこちらが有利になります。だから大丈夫です」

「その言葉、信じるからね」

 聡は再び前に出た。

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