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第43話、3層深部3

 舞との合同探索日となり、聡はダンジョン館へ向かった。

「舞さん、今日もよろしくお願いします」

「こちらこそよろしく、月野さん」

 2人はダンジョンへと潜り、3層深部まで到達した。

 4層への道を探して探索する2人の前に、鎧が現れる。斧槍を持った個体だ。

「今回は私が戦うわ」

 そう言って舞が前に出た。


 舞は氷で大盾を作り、その陰に隠れながら鎧に近づく。

 大盾の裏では右手を引き絞り、常に突きを放てる体勢を取っている。

 対する鎧は10歩以上離れた距離から舞に向けて走り始めた。走りながら斧槍を構える。

 そして舞との距離が2歩ほどにまで近づいたとき、鎧は跳んだ。

 ただ跳ぶだけでなく、舞の大盾に足を向けているような体勢だ。

 舞は鎧が大盾を蹴ろうとしていることに気づいたのか、一歩前に出る。

 その勢いのまま大盾を押し込み、シールドバッシュのような形で対応する。


 鎧は思わぬ行動に出た。舞の盾を蹴ってさらに上に跳んだのだ。

 舞は予想していたほどの衝撃が来なかったのか、大盾に引っ張られるようにバランスを崩す。

 鎧は上に跳んだあと、前方に回転しながら舞に向けて斧槍を振り下ろす。

「舞さん!」

 聡は魔力噴射を使って全力で前に出る。だが間に合わない。

 斧槍の斧部分が舞の背中に当たる。服が裂け、血が飛び散る。

 聡は戦槌を振って着地しようとしている鎧を全力で叩き、煙に変える。


 舞は勢いよく地面に倒れた。聡もそこへ駆け寄る。

「舞さん、大丈夫ですか!?」

「なんとか生きてるわ。傷はどれくらい深い?」

 聡は傷口を確認する。傷は広いが、深くはないようだ。

「傷は深くありません。下級ポーションで治りそうです」

「分かった。自分の分を飲むわ。体を起こすのを手伝ってもらっていい?」

 聡は舞の肩を支えて上半身を立てる。

 舞は自分のポーチから下級ポーションを取り出し、飲む。

 少しの間を置き、傷がふさがる。聡はそれを確認して舞に伝えた。


「月野さん、さっきは援護ありがとう」

「あれくらいお安い御用です。今日はもう撤退しますか?」

「大丈夫よ。傷はそれほど深くなかったし、ポーション代も稼がないといけないから」

「分かりました。また痛むようなことがあったらすぐ言ってください」

「分かったわ。無理はしていないし、これからもしないつもりよ」

 そう言うと聡と舞は立ち上がり、探索を再開した。


 2人は歩きながら話す。

「さっきは備えが足りなかったわ」

「そうですね。今の鎧の弱点がもろに出たといってもいい展開でした」

「これからは戦闘前に必ず氷で鎧を作らないとだめそうね」

「消費魔力は問題なさそうですか?」

「鎧くらいのサイズなら消費はないも同然よ。月野さんにも作りましょうか?」

「僕は……素早い動きの邪魔になりそうなので遠慮しておきます」


 そんなことを話していると、聡たちは4層との境界を見つけた。

 壁の材質がレンガからごつごつした岩に変わっている。

「今日は進んでみましょう。まだ少ししか探索していないから時間も体力もあるはずよ」

「そうですね。舞さん、ポーションはどれくらい残っていますか?」

「中級ポーションが1本あるわ」

「それなら大丈夫そうですね。進みましょう」


 聡たちは4層に向けて進む。

 歩いていくと次第に壁の素材が魔石に変わっていく。

 聡は表面に一定間隔で丸い玉のようなものが並んでいることに気づいた。

 その玉を掴み、引っ張ってみる。それはわずかな抵抗と共に壁から外れた。

 手を開いて観察しようとしたとき、驚くべきことが起こった。

「なんだ?」

 その玉がひとりでに元の位置へと戻ったのだ。


「舞さん……今の見ましたか?」

「ええ、玉が元の位置に戻ったように見えたわ」

 聡は再度玉を壁からはがし、今度は手で握ったまま観察する。

 手触りは非常につるつるしていて、気を抜くとすぐ手からこぼれ落ちそうなほどだった。

 見た目は真っ黒な球体で、光をほとんど反射していない。

 周囲を見たり指で触って確認したが、切れ目のようなものは見えなかった。

 そして手を離すと再びゆっくりと壁へ戻っていった。

 

「それなら……舞さん、ちょっと手伝ってもらってもいいですか?」

 聡は舞に頼んで玉の周囲を氷漬けにしてもらい、壁へと固定した。

 そして戦槌を振りかぶり、玉へ叩きつけた。

 聡の手に帰ってきたのは、魔石を叩いた時と同じような非常に硬いものを殴った時の手ごたえだった。

 玉を見てみても傷らしきものは見当たらなかった。

 

 聡は最後に、玉を握りしめたまま張り付いていた場所から離れてみる。

 最初は何も感じなかったが、5歩ほど離れた場所から元の場所に戻ろうとするわずかな力を感じ始めた。

 さらに10歩ほど離れた時点で聡の力では引っ張れないほどの強さになった。

 聡はあきらめて手を離しながらつぶやく。

「この玉は持って帰れそうにないな……則教授のところで分析したかったのに……」

「月野さん、また研究探索の予定を立ててここに来ましょう」

「そうですね……すぐには難しそうですが、いずれやってみたいですね」

 そう会話すると、聡たちは再び先へと進み始めた。

 

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