第41話、3層深部
「そうね……泊まりがけになるのはやっぱり厳しいわね」
聡は今後の探索計画について舞と話し合った。
「飲食や生活用品の持ち込みは大変ですよね」
「それもあるけど、一番は疲労の管理ね」
「たしかにそういう問題もありますね。
それでも、今まで通り1日8時間を探索にあてて、残りの時間を交代で8時間ずつ休むという形も難しいでしょうか」
「ダンジョンの中には安全地帯は無いから、ゆっくり休むのは難しいと思うわ。
敵が来る度起きなきゃならない。そんな状態で奥に進むのは危険よ」
「結構解決が難しそうな問題ですね。
パーティー人数を増やして、休憩中の安全度を上げる方向しか思い浮かびませんね」
「そうね、私もそれが1番いいと思う。
でも、今のところはそこまで深刻に考える必要は無いわ。
新メンバーを探すのは進めなくなってからでも遅くないと思う」
「では新メンバー探しは後回しで行きましょう。食料に関しては問題ありませんか?」
「まだ荷物には余裕があるから大丈夫よ」
聡たちはダンジョンに潜り、3層中部と深部の境目まで到達した。
そこから深部へ向かって歩みを進める。
光の射す方へ進んでいくと、その場所が石のような色であることに気づく。
さらに近づくと、壁や天井が平たいことも見て取れる。
そして深部に入ると、それらが加工された石畳やレンガで出来ていることが分かった。
しかも天井には電球、壁には燭台が設置され、煌々と光を放っていた。
「人工物……なのか……?」
「なんでダンジョンに……?」
聡と舞は突然現れた人工物を見て、それ以上の言葉を紡げないでいた。
10分以上も立ち尽くしてやっと、聡が口を開いた。
「これらが本当に人工物かどうか、調べてみませんか?」
「月野さんならそう言うと思ったわ」
聡たちは調査を開始した。
まずは地面から調べる。
自分たち以外の靴跡がないか調べてみる。
それらしきものは何もなかった。少なくとも、ここを人間が頻繁に行き来しているようには見えない。
次は石材とレンガを調べてみる。
石材はともかく、レンガは自然にできるものではない。
だが、大きな加工痕など、素人の聡でもわかるような人間の痕跡は見当たらなかった。
その時、舞が声を上げる。
「このレンガ……全く同じものじゃないかしら」
「全く同じとはどういうことですか?」
「言葉通り、何から何まで……言葉で納得させるのは難しいわね。ここを見てちょうだい」
聡は舞が指さした場所を観察する。そのレンガにはわずかな欠けがあった。
そして舞は別のレンガの同じ部分を指さした。別のレンガにも欠けがあった。
最初のものと全く同じ形、大きさのものが。
聡は慌てて他のレンガを調べ始める。5個、10個と調べても全く同じ欠けがあった。
別の部分に関しても同様だった。
「確かに全く同じものだ……もしかして床も?」
聡は床も調べ始める。しばらくして、床の石材も全く同じものだと分かった。
聡が床を調べている間、舞は氷魔法で足場を作り、電球を調べていた。
「舞さん、電球はどうですか?」
「見た限り、白熱球タイプね。それ以上はわからないけど、写真を撮って後で調べてみるわ」
「レンガと石材、燭台も写真をお願いします」
「分かったわ」
聡は燭台を調べ始めた。
これも別の燭台と全く同じものだと分かった。
だが、それ以上に奇妙な点があった。燃えてもろうそくが溶けていない。
聡は炎に手をかざしてみる。ろうそくの火に相応しい暖かさが手に伝わる。
次に火を吹き消そうとする。息がかかっても火は微動だにしなかった。
最後にろうそくを折ってみた。すると2層浅部にある木のように折れた部分が消えてしまった。
「今はこれ以上わかることもなさそうだ」
ひと通り周囲のものを調べつくした聡たちは、ダンジョンを進み始めた。
周囲を索敵しながら進んでいくと、逆魔力探知にモンスターの反応を捉えた。
「モンスターがいます。近づきましょう」
そうして近づくと、モンスターの姿が目に入る。
「人間……」
その姿は西洋鎧を着た人間だった。手にはロングソードを持っている。
「月野さん、あれは確実にモンスターなの?」
「魔力を吸収していることは確実です。それ以上はわかりません」
「なら確かめてみるしかないわね。念のため構えておいて」
「普通の鎧なら、剣より戦槌の方が有効です。あれにも通用するかは分かりませんが……
それでも、戦闘になったら僕が前に出ます」
「分かったわ。剣相手なら盾もいるわよね」
舞が氷魔法で聡の左手に円盾を作り出す。そして鎧を着たなにかに声をかける。
「そこの人!ちょっといい!?」
その鎧に見えるモンスターは声を掛けられると、聡たちに向き直った。
そして剣を構え、こちらに向かって歩いてきた。
聡たちは念のため、すれ違う探索者同士で暗黙の了解になっているポーズをする。
武器の先端を地面につけ、もう片方の手を振る動きだ。
だがそれすらも無視して鎧は歩き続ける。
「どうしようもありません。戦います」
聡は前に出て、鎧と正面から向き合った。
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