第39話、研究探索3
それに最初に気づいたのは聡だった。
「今起動した機械のところから、濃い魔力が出てます!」
「機械全部止めて!月野さん、どれくらい!?」
「魔石と比較できないくらいです!モンスターが押し寄せてきますよ!」
「総員、撤収準備!機材を置いて逃げるわよ!」
「いえ、この地形だと挟まれます!舞さん、氷のドームで研究員を守ってください!
ここは殲滅するしか手は無い!」
「分かった!皆さん、こちらへ!」
舞が研究員を氷のドームで保護する。
聡たちはドームの外で作戦会議をする。
「私たちは2人で、モンスターは2方向から来る。
1人1方向を守るしかないわね」
「唯一の朗報はスキルを使い放題ということです。
魔力が異常に濃いので、魔力回復の速度が上がるはずです」
「本当ね。魔力吸収を持っていない私でも回復を実感できる。
それなら、片方の道を氷で封鎖できるわ」
「なら、奥側の道を封鎖してください。
無事に帰ることだけ考えましょう」
舞が奥側に続く通路を氷魔法で封鎖する。
「手前側の戦闘だけど、私が範囲攻撃を撃って月野さんが漏れたモンスターを倒す陣形でいいかしら」
「それで行きましょう。舞さん、手のひらサイズの氷柱を出して貰えませんか?
地面に山盛りになるくらいの量をです。
1ついい案が思い浮かびました」
「分かったわ。追加が必要になったら言ってね」
聡たちが準備を終えた瞬間、通路の奥から足音が聞こえる。
音が連なりすぎて、一体どれだけの数がいるのか把握できないほどだ。
そしてモンスターが視界に入る。
そこには2層深部のモンスターも混ざっていた。
舞が地面に沿って冷気を放ち、モンスターを凍らせて魔石と煙に変えていく。
だが、後続のモンスターは仲間の魔石を踏み越え進んでくる。
そして、偶然にも冷気の切れ目を進んできたモンスターが舞に飛びかかる。
だが、その直前で聡の戦槌に頭を砕かれ煙に変わる。
「舞さんは気にせず氷魔法を撃ちまくってください」
「近接攻撃は任せたわ」
氷魔法と聡の迎撃が何度も繰り返され、モンスターの勢いが落ち着いてきた頃、戦場にある変化が起こる。
舞と悟から離れたモンスターが氷魔法以外でダメージを受けるようになった。
その原因は聡にある。舞に作ってもらった氷柱を魔力噴射で飛ばしたのだ。
「月野さん、それ何?」
「さっき貰った氷柱を魔力噴射で飛ばしているんです。
本来は連続で3回しか使えないんですが、魔力が濃いから使い放題ですね。
普段は手投げ矢を飛ばしています」
「攻撃手段が増えるのは良いことね」
戦闘開始から20分ほど経った頃、ようやくモンスターが来なくなった。
聡と舞は座り込んで休み始める。
身体的な疲れは少しだったが、連続かつ多数との戦闘に集中力が消耗していたからだ。
モンスターが来ないことを確認し、舞は氷のドームを解除して研究者を解放する。
「月野さん、舞さん、守ってくれてありがとう。怪我はない?」
「怪我は大丈夫です。ですが、魔力が濃すぎて索敵が使えません。
今日は帰還したほうがいいかと」
「そうしましょう。準備は終わっているから今すぐ出発よ」
聡たちは早足でその場を去った。
3層浅部を出ると、聡は魔力濃度がもとに戻るのを感じた。
開けた空間で拡散したようだ。
聡たちは来た道を戻りながら先ほどの現象について意見を交わす。
「先ほどはどうして魔力が出たんでしょうか」
「そうね……最後に起動した機械は、魔石が魔力を発するようになる光を出すものなの。
その魔力反応で魔石の反応を調べるの。
それを氷に当てたときに魔力が出た。
つまり、氷に見えたものは魔石ということになるわね」
「あれが魔石?では、人よりはるかに大きいということになりますが……」
「そう考えるしかないわね。
あの機械が出す光は、魔石をほんの少しだけ反応させるように調整されてるの。
それでも比較できないほど多くの魔力を出すのは、洞窟の魔石に蓄えられていた魔力がとても多いからと考えるのが妥当ね」
「一部でも持ち帰ることはできないんでしょうか」
「今の技術では無理ね。魔石は大きくなるほど頑丈になるの。
密度が上がると言い換えてもいいわ。
だからあのサイズだと壊せないし、重すぎて持ち帰ることもできないわね」
聡たちはその後は大きなトラブルなく地上へと帰還した。
ダンジョン館で則教授、舞と別れたあと、聡も自分の家へと帰る。
帰り道、洞窟を作るほどの大きさの魔石について考える。
モンスターがドロップするものとは比較にならないサイズ。
聡はダンジョンを作った何かの意図を感じたような気がしたが、具体的なことは分からなかった。
次の舞との共同探索日、聡たちは3層中部まで進むことにした。
研究探索も終わり、これ以上浅部に留まる必要はないと考えたからだ。
すでに入り口は見つけてある。
「じゃあ行きましょうか」
「景色に見とれて警戒をおろそかにしないようにしてくださいね」
聡たちは3層中部へと足を踏み入れた。
リアクション、高評価、ブックマーク、感想をいただけると励みになります。




