第38話、研究探索2
「でも、分かっていることもちゃんとあるのよ」
「どんなことですか?」
「例えば、魔力についてね。魔力は生物の精神に反応することが分かっているの」
「精神と言うと……感情などですか?」
「それもあるけど、意思と言ったほうが分かりやすいかもね。
魔力を持つ生物は、その生物のやりたいことを実現するために魔力を操ることができるようなの。
それがいわゆる祝福ね」
「あれは実際には筋力を増加させているんじゃなくて、体の中で魔力を使ってアシストしているの」
「それなら体を動かすだけで魔力を消費しそうなものですが……」
「それで合っているわよ。その魔力消費の代償が呪いなの。
しかも面白いことに、今まで実験した生物は全て魔力を自力で作ることができないの。人間を含めてね。
だから外部からの供給がなければ体を動かすだけ、息をするだけで魔力を使い果たし、死んでしまう」
「それでは、ダンジョン外でスキルを使うための魔力が回復するのはどういう理屈なんですか?」
「普通の栄養と同じ仕組みよ。
疲れ果てるまで体を動かしても、体の中に残った栄養が体力と傷を回復しようとするように、魔力も体のどこかから補充される。
その補充ができなくなると衰弱していくの」
「なるほど……教えていただきありがとうございます」
聡はその後も則教授と話しながら探索を続けた。
聡たちは2日目の調査を終え、勤のツリーハウスに帰還した。
2層中部の沼地で予想以上に時間がかかったり、
深部で氷のドームを使ったらモンスターが追加で襲ってくるなどのトラブルはあったが、
全員が無事に帰還することができた。
「今日はモンスター肉の料理だぞ。しかも取れたてだ」
「えっ?おじいちゃん、本当?」
「さっき魔石狩りに出たら、偶然にも肉がドロップしたんだ。
事前に用意していたわけではないから、金額は気にしなくとも大丈夫だ。」
研究員の目が輝く。勤に何か交渉を持ちかけているようだ。
聞いてみると、ドロップしたばかりのアイテムのデータ取りをするため肉片を要求しているようだ。
勤は快く応じ、肉を切り分けて研究員に渡していた。
勤が料理を作り、テーブルに並べる。
ここでも研究員は期待に満ちた眼差しで料理を見る。
モンスター産の食材は地上では高級品だ。
しかも探索者の生存に必要と知られているため、倫理的な面でも一般人には買いにくいのだ。
それがタダで食べられるとなっては期待しないのも難しいだろう。
聡たちは夕食を食べた。
モンスター肉の料理は美味しかった。
ドロップ品自体は普通の味なのだが、勤の腕が良いのか、旨味が引き出され、独特の風味があった。
聡たちは2日間の疲れもあり、食事を終えると早々に眠りにつく。
次の日の朝、聡は舞と護衛計画を再確認する。
「今日は3層まで行きます。注意点は2層深部のスキル使用です。
刃鳥対策でドームを作ったら昨日のようにモンスターが来ると思います。
だから、そこでは2人で戦いましょう」
「分かった。流石に1対多の戦闘が続くときついからありがたいわ
それから、中部で歩くペースをもう少し下げましょう。
沼地は慣れていない人にとってきつい環境よ」
「そうですね。では半分のペースで行きましょう」
聡たちは再び勤手作りの弁当をもらい、研究探索に出発した。
今回のデータ取りは1カ所だけのため、道中は昨日よりスムーズに進行できた。
聡はまた則教授と研究結果について話す。
「今日はスキルについて話そうかしら。月野さんも持っているわよね?」
「はい、いくつか持っています」
「スキルってなんだと思う?」
「ええと……祝福を得た探索者だけが使える、魔力を使って何かしらの現象を起こす能力だと思います。
今考えてみると、昨日の魔力の話にも通じるものがありますね」
「そうよ。スキルも祝福も根本は同じ。
ただ、スキルはできることの範囲が決まっているの。
これは使用者の無意識が決めていることだと言われているわ」
「ということは、本気で願えば、望んだスキルを手に入れることができるということですか?」
「スキルだけじゃない。それに縛られない、自由な結果を引き出せると言われているわ。
……理論上の話だけどね。
人間の脳はそれをするにはスペック不足と言われているわ」
「なかなかうまくは行かないものですね。
では、スキルオーブはスキルの使い方を使用者に教えているんですか?」
「そう考えるのが自然ね。
スキルオーブもモンスターと同じで原理不明だから推測になるけれど」
聡たちは話しながら、時には戦闘をしながら3層浅部までたどり着いた。
3層浅部での幻想的な光景に、研究員たちも見とれているようだった。
もう少し進むと、聡たちは調査地点に到着した。
「では調査を開始します。皆、機材を準備して」
則教授の指示で周りの雰囲気が変わる。
研究員たちはテキパキと作業を開始し、聡たちは前後で警戒を続ける。
調査が始まって10分ほど経ったあと、状況が変わった。
そのきっかけはある機械だった。
「魔石反応調査、始めます」
研究員の声がけとともに機械から光が放たれた瞬間、地震のような揺れが聡たちを襲った。
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