第37話、研究探索
聡が舞と研究探索のシミュレーションをしたり、手投げ矢の練習、その他事前準備をしている間に、研究探索の日を迎えた。
聡は待ち合わせ場所であるダンジョン館へと向かった。
聡はそこで舞、則教授、研究メンバーと合流する。
「こんにちは。則教授、今日はよろしくお願いします」
「こちらこそよろしく。あなたは木崎勤さんのお孫さんの舞さんね?はじめまして」
「はじめまして、木崎舞です。則教授。今日は護衛としてきました。よろしくお願いします」
3人が挨拶をしたところで実務的な話に移る。
「今日の探索では1層の3地点を回ってデータやサンプルを取ったあと、2層浅部の勤さんの家に向かうわ。
こちらで大体のルートは決めたけど、必要かしら」
「それでは頂きます。……僕たちの方で考えていたルートと大体一緒ですね。
この通りに行きましょう。ただ、モンスターが現れた場合は迂回することもあります」
「細かいことは経験者に任せるわ」
「私は基本的に戦闘を担当します。モンスターが現れたら盾の後ろに隠れて、月野さんの指示を守ってください」
「分かりました。そのとおりにしましょう」
「研究員の皆さんは、道中は無理せず歩くことだけを考えてください。
休憩が必要になったときはいつでも言ってください。
……こちらから伝えたいことは以上です。則教授からはありますか?」
「データやサンプル採取の時間は1回1時間くらいかかるわ。時間的に問題ないかしら」
「それだと、移動時間を含めた探索時間は6時間くらいになります。
余裕を持って計算していますが、トラブルで伸びたりすることも考えておいてください。」
「だそうよ。気合入れていきましょう」
則教授ら研究員はそれぞれの表情で頷いた。
「私たちの方から伝えたいことも以上よ。
問題がなければダンジョンに入りましょう」
「こちらも問題ありません」
聡たちはそれぞれ準備してダンジョンへと入った。
それからのダンジョン探索は順調に進んだ。
聡も舞も1層のモンスター程度は楽に倒せるし、土地勘もある。
研究員も聡たちが想定していたより体力があり、休憩回数も少なかったため初日の探索は5時間程度で終わった。
2層浅部のツリーハウスへ到着すると、勤が暖かく出迎えてくれた。
「私はこのツリーハウスに住んでいる木崎勤だ。
則教授、研究員の皆さん、聡君、舞、よく来たな。
探索で疲れているだろう。早く上がりなさい」
聡たちはツリーハウスの中へ入る。
「今から食事を作るから皆は休んでいなさい」
則教授を含めた研究員たちは、緊張の糸が切れたかのように体を休め始めた。
「月野さん、ちょっといい?」
聡も研究員と同じように休もうとしたが、舞が話しかけてきた。
家の中は研究員たちの目があるので、2人で玄関を出て話す。
「月野さん、今日はお疲れ様。結構順調に進めたわね」
「舞さんもお疲れ様です。僕から見ても順調だったと思います。
まだ1日目ですから皆さん体力が残っているんでしょう。
疲れてくる明日以降が勝負ですよ」
それから聡たちは、夕食ができるまで2日目以降の進行について内容を確認した。
「明日と明後日は沼地を歩きますし、その後も刃鳥が来たら氷のドームが必要です。
体力的にも魔力的にも消費が大きそうなので、疲れてきたらいつでも交代しますよ」
「ありがとう。いざというときはよろしくね」
食事中も、その後も勤と則教授が楽しそうに話していた。
数十年前とはいえ、共に研究した仲だ。積もる話もあるだろう。
聡はその邪魔をしないように夕食の片付けをして早めに就寝する。
次の日の朝、聡たちは勤手作りの弁当をもらい、研究探索に出発した。
道中、則教授とダンジョンについて話をする。
「昔ってスキルの存在は知られてなかったんですね」
「そうなの。呪いの対処法が分からなかった頃は探索者自体が少なくて、衰弱時の幻覚だと思っていた研究者もいたらしいわ」
「それを聞くと今に生まれてよかったと思ってしまいますね」
「この先はもっと良くなっていくはずよ。
魔力吸入器もできたし、探索者の数も増えていくはず。
そうしたら、ダンジョンの謎の解明も進むでしょうね」
「そうだ、ダンジョンの謎といえば、1つ疑問に思っていることがあります」
「どんなこと?」
「モンスターはなぜ人間を攻撃するのかです。
魔力を糧に生きているならば食料は関係ないですし、
単に攻撃性が高いと言うにはモンスター同士で争っているのは見たことがありません」
「実はよく分かってないのよね。
モンスターは他のあらゆる生物を攻撃しようとするの。
動物学者が集まって試しても全く様子が変わらなかったらしいわ」
「体の方はどうなんですか?」
「昔、モンスターを捕まえてレントゲン撮影をしたことがあるの。
もちろん、ダンジョン外だとモンスターは煙になるからわざわざ機械を持ち込んでまでね。
それでも何も写らないから、生物かどうかも怪しいというのが今の見解よ」
聡は困惑した。
研究者に聞けば何か分かるかもしれないと思っていた。
しかし、こうまで何もわからないと言われると自分の道の果てしなさに気が遠くなるような思いになった。




