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第36話、研究探索の準備2

「舞さん。今日もよろしくお願いします」

「こちらこそよろしく。月野さん」

 聡たちの合同探索日、ダンジョン館で合流した聡たちは早速研究探索の話に移る。

「研究探索の件は以前メッセージを送った通りです。

 舞さんには改めて護衛をお願いします」

「分かった。取り分は前に決めた通りで良いわ」


「それで、研究探索のルートは決まっているの?

 探索の日程までに下見しておきたいわ」

「今回のルートは、必須の地点以外は決めていません。

 モンスターを避けながら戦闘の負担を減らして進行したいからです。

 一応、必須地点は聞き出しているので共有しますね」

「なるほど。それじゃあ今日はモンスターを避けながらその場所を回る練習をしましょうか」

「それで行きましょう」


 聡たちはダンジョンへ入った。

「今回の護衛対象は3人なので、隊列を組みます。

 具体的には先頭に僕、最後尾に舞さんでお願いします」

「分かった。月野さんは探知しながら道案内もするのね?」

「そうです。そして、研究者の方々は重い機材を持っているはずです。

 だからゆっくり歩く必要があります。

 その分の遅延も再現しましょう。」

 そうして聡たちは研究者の護衛を想定しながらダンジョンを探索した。


「2層中部までは1人でモンスターと戦えそうですね」

「残った1人は護衛対象に張り付いていましょう」

「僕が戦うので舞さんは氷魔法で守りをお願いします」

「負荷が偏るから月野さんには戦わせられないわ。

 戦うのは私がやる。

 戦闘中は盾を出すから、研究員を隠れさせていれば大丈夫よ」

「舞さんに負担をかけることになりませんか?」

「戦うと疲れるし、疲れた体でリーダーをするのはミスを招くわ。

 いざという時に代わってもらえれば大丈夫よ」

「分かりました。よろしくお願いします」


「1日目の全ポイントを回ったうえで拠点まで2時間か……」

「そのポイントでの研究時間にもよるけど、悪くないペースじゃないかしら。

 モンスターとは1回しか戦ってないし、理想に近いんじゃない?」

「そうですね。このまま2日目のコースも回りましょうか」

 

 聡たちは一通り研究探索の事前探索を終え、ダンジョンを出た。

「そういえば、則教授が研究探索に必要なものは請求すれば費用を払うと言っていました。

 建て替えにはなりますけど遠慮なく買ってください」

「今回の費用は依頼者持ちなのね。

 欲しいもの……今は思いつかないから考えておくわ」

 2人はそれぞれ帰路についた。


 次の日、聡は探索用品店に来ていた。

「何を買おうかな……」

 特に欲しいものはなかったが、購入費が相手持ちなら買いたくなるのが聡だ。

 せっかく予算を用意してもらったのだから、全く費用請求しないのもまた失礼だろう。

 とはいえ、相手は世話になった則教授だ。買い過ぎも良くない。

 

 聡は金額のバランスを考えながら消耗品のエリアを歩き、安い探索用品をいくつかカゴに入れる。

 そうしていた時、聡はあるコーナーに目をつけた。

「投擲か……」

 聡が借金に追われていた頃には使う発想がなかったものだ。

 

 しかし今は金銭的な余裕がある。

 だから使い捨てに近い道具も選択肢に入る。

「使いこなせるかは分からないけど、試してみるのも悪くないかもな」

 聡は手投げ矢をカゴに入れた。

 そして商品を購入し、家へと向かった。

 

 1度家に帰った聡は荷物を整理し、ダンジョンへと向かう。 

 ダンジョンの入り口で買った道具をポーチに入れ、1層中部へ向かった。

 目的は手投げ矢の試し投げだ。

 1層中部に到着してからはモンスターを探す。

 しばらくすると、洞窟猪を見つけた。


 聡は後ろを向いている猪に向けて、ボールを投げるように手投げ矢を投げた。

 手投げ矢は全体が鉄でできており、見た目の印象より重い。

 それは威力があるということでもあった。

 

 1投目は外れ、猪から数歩の距離の壁に命中する。

 猪が振り返る。聡は再び手投げ矢を投げる。

 2投目は猪の眉間に命中した。

 ある程度は刺さったものの、痛手にはなっていないようだ。

「投げ方が悪いのか?」

 

 猪が突進してくる。聡は魔力噴射を織り交ぜたジャンプで躱す。

 その後、聡は外れた手投げ矢を回収しながら様々な投げ方を試す。

 そのどれもがあまり威力を出せなかった。

 やがて何度も猪の突進を躱すのも面倒になってきたので、粘着糸で動きを封じた。


 威力の出し方に悩んでいる聡に1つの考えが浮かぶ。

「手で投げるのが難しいならスキルを使えば良いんじゃないか?」

 早速試してみる。と言ってもこの場面で使えそうなスキルは魔力噴射だけだ。

 聡は手投げ矢を指に挟みつつ、手投げ矢から魔力噴射を使ってみる。

 すると、明らかに手で投げるより速く飛んでいった。


 何度も猪に向けて手投げ矢を放つ。

 繰り返すたび狙いは正確になり、狙いを保ったまま出せる威力が上がっていく。

 そして聡の頭に疑問が浮かぶ。

「全力でやったらどれくらい威力が出るんだろう」

 魔力量が少なくなってきたのもあり、最後に試してみることにした。

 

 聡は動けない猪の腹に手投げ矢をあて、全力で魔力噴射を使った。

 次の瞬間、爆発のような音が響いた。

 手の中の手投げ矢が消えていて、猪の腹には手投げ矢と同じだけの大きさの穴が空いている。

 飛んでいったはずの手投げ矢は見当たらず、あたりには鉄片が転がっている。

 消費魔力は最大量の3割程度だった。

 

「……思ってたより強いかも」

 聡は転がった鉄片を拾いながら、投擲を練習することを決意した。

 

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