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第35話、研究探索の準備

 「月野です。お久しぶりです、則教授」

 「こちらこそ久しぶりね。月野さん。今回は研究探索の件よね?」

 「そうです。具体的な日時や内容についてお話ししたく連絡しました」

 「日程は今から2週間後ね。急で悪いのだけど、調整お願いできるかしら」

 「分かりました、探索者は日程の融通が利きやすいので問題ないと思います」


 「よかった。それで期間なのだけど、2泊3日で予定が立ったの。

 1日1層ずつ調査して、最終日は3層を調査した後帰る予定。

 私を含めて3人で行くつもりよ」

 「失礼かもしれませんが、足腰の方は大丈夫ですか?その、杖を突いていらっしゃるので……」

 「大丈夫。いわゆる転ばぬ先の杖よ。無くても歩くのには問題ないわ。

 それで、これが勤さんに渡してほしい手紙」

 「渡すのは任せてください。もう話はつけてあるのでこっちも大丈夫だと思います」

 「まあ、若いのにしっかりしているのね」


 「それで、もう1つ条件を付けて悪いのだけど……滞在中の食事の用意をお願いしたいの。

 研究のために必要な機材の量を試算したら、生活用品を持っていく余裕がほとんどなくなったの

 だから、勤さんの家を拠点にしながら進行するのが現実的な選択よ」

 「事前に勤さんの家に機材を運び込んでおくのはどうでしょうか?」

 「残念だけど、高額な機材も含まれているから研究員以外には預けられないルールなの。

 月野さんを信頼していないわけではないのだけど、私たちで持っていくわ」

 「分かりました」

 「その代わり研究協力費は奮発するし、後で領収証をもらえれば食費も払うわ。

 ……大きな声では言えないのだけど、予算が多めについたから『護衛に必要なもの』を買ったときは請求して頂戴」

 「なるほど……分かりました」

 

 「最後にもう1つ。2層中部以上に行ける人は少ないから、実際に行ってみた感想が聞きたいの。

 服装や装備を決める時の参考にさせてほしいのよ」

 「それくらいならいくらでも話しますよ。まずは2層中部なんですが……」

 それから聡たちは地図や舞の撮った写真を並べながら、2層と3層の地形やモンスターの特徴について話をした。


 ひと通り話し、研究に必要な情報を伝えた聡は則教授の研究室を後にした。

 厄介な条件が増えなかったことにほっとしつつ、帰路につく。

 帰り道、舞にメッセージを送り則教授と話したことを共有した。

 帰った後は準備をしてダンジョンに潜る。そして2層浅部にある勤の家に行った。

 

 「お邪魔します。月野です。お土産をどうぞ」

 「おお、よく来たな聡君。土産をありがとう。研究探索の件だな?」

 「その通りです。則教授から手紙を預かっています」

 「見てみよう」

 聡から手紙を受け取った勤は手紙を読み始める。


 手紙を読み終わった勤は聡に返事をした。

 「分かった。研究チームの滞在を受け入れよう。

 ワシは料理をするから、食料の買い出しは頼んだぞ。」

 「ありがとうございます。迷惑ではありませんか?」

 「迷惑なんてとんでもない。久々に賑やかなことになりそうで嬉しいよ。

 寂しい老人の人生に刺激を与えてくれたことに、正直言って感謝している。」

 

 「それで、探索の調子はどうだ?」

 「随分進みました。今は3層浅部を探索しています」

 「それでは2層深部はどう攻略した?あそこはモンスターの密度が高くて2人では到底突破できないはずだが」

 「魔力消費を抑えてモンスターに見つからないように進めば突破できます。

 探知スキルが無くても、何度も挑んで最短距離を見つければ、1人でも行けるはずです」

 「おお、攻略法まで編み出したのか!頑張っているな!」

 

 「普通の探索者はせいぜい2層中部までしか行かないというのに凄いじゃないか」

 「ありがとうございます。これも舞さんがいてくれたおかげです」

 「謙遜するな。舞はそこまで強くない。いや、強くなかったというべきだろうか。

 舞1人だったら2層深部は超えられなかっただろう。

 誰かと共に、文字通り懸命になって活動することが舞を強くしたんだ」

 

 「なんというか、大げさすぎませんか?僕はともかく舞さんの氷魔法スキルは汎用性がありますし、時間さえあれば3層到達は十分可能だったと思います」

 「スキルが強くとも本人が強くならねば意味はない。

 舞はスキルに頼り切った戦闘をしているから、あのままでは探索者として続かなかった。

 その点、君はスキルだけでなく持てる全てを使い戦っている。

 ワシはその考え方を学んでほしいと思ってパーティー組みの許可を出したんだ」

 「あの時の戦闘を1回、しかも遠目から見ただけなのに、そこまで見てくださったんですね」

 「当たり前だ。かわいい孫に悪い虫が付くことは祖父として許しておけないからな。

 無論、君のことはそう思っていないから安心したまえ」

 そう言って聡は豪快に笑った。

 

 聡はまたしても食事をご馳走になり、勤の家を後にした。

 資金稼ぎのために軽く狩りをしてダンジョンを出る。

 帰り道も、家に帰った後も研究探索によって進むダンジョン研究のことを想像しながら、その日は休んだ。

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