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第29話、2層探索の終わり

 聡はダンジョン館の前で舞と合流した。

「月野さん、今日もよろしくね」

「こちらこそよろしくお願いします」

 今日の目的地は2層深部だ。

 

 聡も舞も、今のところスキル無しでモンスターを倒せる。

 とはいえ、前回の戦闘を見るに、舞にはまだ余裕があるとは言えない。

 更に深層に進むためには、十分余裕を持って倒せるようにならなければならない。

 そうしなければ帰り道などに事故が起こるからだ。


「舞さん、資金繰りの方は問題ありませんか?」

「問題ないわ。急にどうしたの?」

「魔力吸入器が一般販売され始めた影響で、探索者が増えそうなんです。

 だから、狩場にも影響が出るかもしれません」

「なるほどね。簡単な構造だから安く買えそうだし、

 将来的には全探索者が持つことになりそうね」


「そうですね。ドロップ品の摂取間隔が2倍以上になると分かりましたし、買わない手はないかと」

「待って、今……摂取間隔が2倍以上になるって分かったのは最近って意味で言った?」

「そうです」

「私を勧誘したときはまだ分かってなかったの?」

 

 聡は動揺した。今考えるとそうだ。

 自分は、まだ実験中の不確定な事実をもとに、舞に消えない借金のような呪いを積み上げさせる道を選んだのだ。

 もし逆の立場だったら、と考える。

 ごまかすのも1つの手だった。

 だが、これからも一緒に潜っていく関係である以上、都合の悪いことを隠したままにはできない。

 聡が選んだのは、正直に話すことだった。

 

「……そうです」

「はぁ、大蜘蛛の話を聞いたときもそうだったけど、月野さんは嬉しいことがあると短慮になる癖があるみたいね。

 そこはパーティーメンバーとして、必ず改善してほしいわね。

 深層では1つの判断ミスが命取りになるかもしれないから」

「……分かりました」


「それと、考えてることがすぐ顔に出るからそこも直したほうが良いかもね。」

「そんな顔してますか?」

「ひどい顔よ。反省してることは十分わかったわ。

 変な言い訳もしなかったし、この件はこれで手打ちにします。

 だからいつもの調子に戻って」

「努力します」


 聡たちは2層深部に到着した。

「1戦闘あたりの消費魔力は5%までよ」

「気をつけます」

 しばらくはモンスターと出会わなかった。

 逆魔力探知に魔力吸収反応を捉える。

 

「モンスターがいました。4匹で、地上にいるから蔦狼ですね」

「スキルでおびき寄せる?」

「こっちから行きましょう。おびき寄せると他の集団も来るかもしれません」

「わかったわ」

 聡たちは息を殺しつつ、武器を構えてゆっくりと蔦狼に近づく。

 

 集団まであと10歩ほどの距離まで近づいた時、蔦狼が聡たちに気づいた。

 聡はナイフと戦槌を、舞はロングソードを構え、横並びで蔦狼を待ち構える。

 蔦狼たちが一斉に突進してきた。聡に1匹、舞に3匹が向かう。

 

 聡は前に出て、向かってきた1匹を素早く倒そうとする。

 前に出たのは、少しでも早く舞の援護に入るためだ。

 蔦狼が聡の胴体へと巻き付けるように蔦を伸ばした。

 聡はそれをあえて左手で受けて、すぐさま蔦を引き寄せる。

 蔦狼が引っ張られ、聡の目の前に倒れ込む。

 聡は隙を晒した蔦狼を逃さず、戦槌で煙に変えた。


 舞の方を見る。舞は背後と左腕に氷の盾を展開し、回り込まれないようにしつつ、蔦狼たちをさばいている。

 有効な反撃は与えられていないようで、蔦狼の数は3匹のままだ。

 聡は舞と蔦狼が睨み合っている間に蔦狼の背後に忍び寄る。


 気づかれず近づけた聡は、蔦狼のうち1匹の胴体に戦槌を打ち込み、煙に変える。

 残った2匹のうち、1匹が聡の方を向く。

 これでどちらも1対1の構図を作ることができた。

 

 聡は後ろに下がり、こちらを向いた蔦狼に連続して粘着糸を放った。

 蔦狼は蔦を駆使して粘着糸を防ぎ、自切して放り捨てる。

 聡は蔦が再生するまでの間に距離を詰め、戦槌を蔦狼の頭に振り下ろす。

 頭を潰された蔦狼は煙へと変わった。

 

 聡が舞の方を見ると、舞がロングソードで蔦狼を倒した瞬間だった。

「お疲れ様。さっきは1匹追加で受け持ってくれて助かったわ」

「こちらこそ、最初に3匹を相手してもらったから自由に動けたんです。

 怪我などはありませんか?」

「大丈夫、無傷よ。でも少し休みたいかも」

「じゃあ、休憩しましょう」


 聡たちは休憩中、ダンジョンについて話す。

「月野さん、1層では先に進むと層の境目があったけど、2層ではどうなると思う?」

「そうですね……正直わからないです。

 モンスターがスキルを使い始めるのが原因だと思いますが、2層中部辺りから情報が手に入らなくなるんです。

 だから場所も見た目もほとんど知られていません」

 

「場所はともかく見た目が分からないのは難しい問題ね」

「地道に探すか、知っていそうな人に聞いてみるしかないようです」

「答えを見るのは面白くないわ。これだけ視界がひらけているんだもの、探せば見つかるはずよ」

「では、最初は僕たちだけで探す方針で行きましょう」

 聡たちは広大な草原で、次の層への入り口を探し回ることに決めた。

 

 数回の探索後、聡たちは3層に繋がる入り口を見つけた。

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