第27話、2層深部3
「今までモンスターが向こうから現れたのは、すべて戦闘直後かその最中でした。」
「言われてみれば確かにそうね。でも最初の刃鳥は?」
「あれは深部に入った時から近くにいました。
ただこっち側から近づいたから気づかれたんだと思います。
それで、今の戦闘では敵が来なかった。
今回とそれまでの大きな違いはスキルを使ったかどうかです。
このことから、モンスターは探索者のスキル使用を何らかの形で探知できると考えています。
だから舞さん、今から検証に協力してもらえますか?」
「もちろん。手伝うわ」
聡たちはモンスターが近づいてくるか検証を始める。
舞は氷魔法で周囲に平たい岩を出し、聡は魔力噴射を地面に向けて使った。
岩が平たい理由は、視覚的に見つかりにくくするためだ。
待機時間で、先ほどの話の続きをする。
「さっきの話の続きになるけど、スキルを探知するってどうするのかしら」
「たぶんですが、スキルを使った際の魔力反応をキャッチしているのではないかと思います。
モンスターも僕と同じように魔力を吸収しています。
その仕組みが同じなら、逆魔力探知も同じようにできてもおかしくありません。」
「モンスターが逆魔力探知をできると思った理由は?」
「勤さんが、ツリーハウスにあれほど厚い壁を作った理由が鍵になりました。
舞さんはその理由について聞いたことはありますか?」
「魔石を使っているとモンスターが寄ってくるから……
逆魔力探知とは断定できないけど、確かに魔力を探知できると考えたら納得がいくわね」
聡たちが話していると、逆魔力探知にモンスターの反応があった。
それと同時に上空に影が見える。刃鳥だ。数は2匹。
「モンスターが来ました。氷魔法を使ってから2分も経っていません」
「じゃあ、スキルがモンスターをおびき寄せる可能性はかなり高そうね」
「でもまだ確定じゃありません。せめてもう一度試してみましょう。
でも、危なくなったらスキルを使ってください。安全第一です」
「分かった。そっちも使っていいからね」
聡たちは2匹の刃鳥と交戦を開始した。
刃鳥は二手に分かれ、聡たちに向かう。
聡に対しては上空から、舞に対しては正面から突撃してくる。
刃鳥と戦うときは相手の勢いを落とすことが重要だ。
刃鳥は高速で動く上にスキルで翼が刃のようになっているため、接触することは難しい。
しかも、それをスキル無しで行わなければならない。
普段とは違った技量を要求される戦闘に向けて、聡は自分を奮い立たせた。
とはいってもスキルを使わない聡に取れる選択肢は少ない。
基本は待ち。刃鳥が突っ込んできた瞬間、カウンターで仕留めるしかない。
聡は戦槌を短く持ち、刃鳥の攻撃を避ける。
頭上からの攻撃は防御がしづらい。防ぐなら正面からの攻撃だ。
刃鳥の攻撃を避けながら舞の側の刃鳥も警戒する。幸運にもこの戦闘の間はどちらも狙いを変えなかった。
何度目かの突進を避け、ついに刃鳥が正面から突っ込んできた。
聡は刃鳥の動きを凝視し、狙いを見定める。
刃鳥が近づくほどに狙いが明確になる。上半身。右側。右肩。
聡は刃鳥が衝突する寸前、右肩との間に戦槌を滑り込ませた。
金属同士がぶつかるような甲高い音とともに聡の腕に衝撃が伝わる。
刃鳥は勢いを大きく落とすも、墜落するまでには至らない。
聡は戦槌から左手を離し、羽ばたいて上昇しようとする刃鳥の尾羽の部分を掴んだ。
刃鳥のスキルが発動し、再び体が刃に包まれるが、勢いのない刃は手袋の表面を傷つけるだけに終わった。
そのまま地面にたたきつけ、足で踏みつけて自由を奪う。
聡は拘束した刃鳥に戦槌を振り下ろし、とどめを刺した。
聡は周囲を警戒する。逆魔力探知にも視界にも舞と戦っている刃鳥以外のモンスターは見当たらなかった。
周囲の安全を確認した聡は舞の援護に入ろうとして止める。
スキルを使えない以上、遠距離からできることはないし、近づいてもお互いの動きを邪魔するだけだからだ。
聡は舞と刃鳥の戦いの様子を観察することにした。
舞は攻撃を受け止めるのではなく、攻撃中の刃鳥を打ち落とそうとしているようだった。
刃鳥の攻撃に対して足さばきで避けつつ、上下から切りつけている。
刃鳥の飛行が速すぎて、ロングソードがその体を捉えられていない。
だが、回数を重ねるごとにロングソードは刃鳥の体に近づいている。
あとは時間の問題だろうと、聡は舞の戦闘について考える。
聡から見た舞の戦闘スタイルは氷魔法を多用するスタイルだ。
手に持っているロングソードも、そのもので戦うというよりは敵に突き刺し、氷魔法発動の起点としていることが多い。
そのスタイルゆえか、スキルを使用した戦いに慣れておらず、立ち回りが消極的になってしまっていると聡は考えていた。
スキル使用がモンスターを呼ぶとすれば、今後もスキルを使わず戦わなければならない場面も出てくるはずだ。
聡は舞がロングソードの扱いに慣れることを願った。
10分以上が経った後、ようやく舞と刃鳥の戦闘が終了した。舞に怪我はなかったが、ひどく疲れているようだった。
「お疲れ様です。舞さん」
「月野さんもお疲れ……私は体力を使いすぎたかも」
「舞さんは休憩していてください。見張りは僕がやっておきます」
「そうね、お言葉に甘えさせてもらうわ……ところで、月野さんはあんまり疲れてないの?」
「こっちはスムーズに終わりましたからね。周囲を警戒していました」
舞は何か言いたげな視線で少しの間聡を見つめたが、体力回復を優先したのか目を閉じて休み始めた。
その後30分経っても新たなモンスターは現れなかった。
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