第26話、2層深部2
聡と舞はダンジョンの外に向かいながら反省会を開く。
「さっきの奇襲、事前に気づけなくて申し訳ありません」
「いいのよ、結局助かったわけだし。でも、逆魔力探知は使えなかったの?」
「スキルでできたドームの中にいたからだと思います。
スキルは魔力を発するから、僕とモンスターの間にあると魔力吸収反応が見つけられないんです。」
「分かったわ。連携もメリットだけじゃないってことね」
「それで、深部の敵が多すぎる問題はどうしましょうか。
まずは原因を調べてみる?」
「もう一度深部に行ってみて、今回のケースが偶然かどうか確かめましょう。
それで同じだったら、原因を調べて再挑戦する。
これくらいしか思い浮かびませんね」
「分かったわ。それで行きましょう」
聡たちはダンジョンを出て、それぞれ帰路についた。
聡はモンスターの索敵方法や生態について調べてみる。
ネット上には、モンスターには特殊な索敵能力はない、と書かれていた。
この話は聡の経験則とも一致する。
つまり、モンスターはある程度までは探索者に近づいているという仮説が立てられる。
「そうなると、深部のモンスターは広範囲を動くのかな……」
その予想が当たっているなら、聡たちにとっては大幅に不利だ。
なぜなら、ダンジョンのモンスターはどこからともなく現れ、一定数を保つようになっているからだ。
なぜなのかは分かっていないが、密度などを計測した結果、そうだということだけは分かっていた。
こちらが動かなくとも、戦闘中であっても、どんどんモンスターがやってくるということ。
リソースがどんどん削られていき、やがて対処できなくなることは明白だ。
聡はその説が否定されることを願って検索を続けた。
他の記事を探してみても特に根拠のある話は見つからない。
探索者の持つ魔石にモンスターが反応するだとか、人間を第六感で捉えているなどの根も葉もない噂ばかりだ。
論文などを漁るにしても、聡には時間が足りなかった。
再び舞と探索する日になった。
聡たちはダンジョン館で合流し、ダンジョンへと潜っていく。
「一応モンスターの生態について調べたんですけど、モンスターの索敵については信頼できそうな情報はありませんでした」
「こっちもよ。再挑戦の後に調べるって話だったのにお互いモンスターについて調べたのね。
どっちも素直じゃないみたい」
「それは向上心があるってことじゃないでしょうか。
もしくは執着みたいなものかも」
「私たちの場合、執着の方が正しいと思うわ」
聡たちは再び2層深部へと侵入した。
通常の何倍も周囲を警戒しながら先へ進む。
しばらくはモンスターとは接触しなかった。
「モンスターは出てきませんね」
「そうね。無条件で知覚されるということではないみたい」
その後も速度を上げず、慎重に進んでいく。
そうしてやっと、草原蔦狼が姿を見せる。数は3匹。
「今回は私が倒すわ。月野さんは周囲を警戒していて」
「分かりました」
舞は左腕に氷で円盾を作りながら、蔦狼たちへと向かう。
蔦狼と舞の距離が縮まると、蔦狼は2匹が前に出る陣形を取った。
そして2匹が舞に向けて蔦を伸ばす。
舞は1匹の蔦をロングソードで切り裂くが、もう1匹の蔦は受けてしまう。
舞の左腕が拘束され、蔦狼と綱引きのような状態になった。
残った1匹と蔦を切られた1匹は舞が自由になるのを待たず飛びかかる。
飛びかかったうちの1匹は舞が追加で出した盾に阻まれ、もう1匹はロングソードで切り裂かれ煙に変わる。
舞は煙でお互いの視界が遮られたタイミングで、左腕に巻き付く蔦を切る。
残る蔦狼は2匹。舞は残りの2匹のうち片方に氷柱を発射する。
蔦狼たちは協力して蔦を使い、氷柱を止めようとするが勢いを殺しきれず、1匹が煙に変わる。
その隙に残った1匹へとロングソードを突き刺し、凍らせて倒した。
聡たちは周囲を警戒しながら魔石を拾う。
「今回、モンスターは来るかしら」
「それは時間が経たないと分かりませんが……あっちからモンスターが来てます」
「駄目みたいね」
「今度は僕が相手をします」
「索敵はいいの?」
「これくらい視界が開けていると、逆魔力探知の索敵距離と、目視できる距離がほぼ同じになるんです。
だから僕じゃなくても大丈夫です。」
「分かった。ちゃんと見張っておくわね」
聡の目の前には蔦狼が2匹。
聡は魔力噴射を使う必要もなく、2匹を余裕をもって倒した。
「次はどうなるかしら……」
「またすぐにモンスターが来たら撤退しましょう」
「いえ、今回は敵の強さも分かっていて、魔力にもまだ余裕がある。すぐには撤退しなくてもいいと思うわ。
調査をするなら、ある程度の時間留まっていろいろ検証したい。
余裕がなくなったり、戦闘中に次が来たら撤退でどうかしら?」
「分かりました。それで行きましょう。
もし魔力に余裕がなくなったらすぐに教えてください」
「もちろんよ」
聡たちの予想に反してモンスターは現れなかった。
10分、20分と経っても視界の先には何の変化もない。
「20分は経ったわよね……」
「はい。22分経っています」
「じゃあ、連続でモンスターが来る時は何かの条件があるのかも」
「それについてなんですが、1つ仮説が思い浮かびました」
聡はその仮説について話し始めた。
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