第25話、2層深部
聡たちに近づいてきたのは、鳥のモンスターだった。
人間の身長の半分ほどの翼を広げてこちらへ飛んでくる。
「空を飛ぶモンスター……厄介そうね」
「移動が速いので見つかったら即襲撃されそうですね」
鳥が勢いそのままに突進してくる。狙いは聡だ。
聡は両手から地面へと粘着糸を伸ばし、避けるタイミングを計る。
鳥がぶつかるまで1秒を切ったところで、聡は上へ跳ぶ。
鳥の進路上には粘着糸。相手に絡ませて地面に引きずり落とす作戦だ。
だが、鳥は粘着糸を難なく通り抜ける。
聡が糸を確認すると、鋭利なもので切り裂かれた跡があった。
「舞さん、あの鳥は切り裂く攻撃をしてきます!」
「分かった。あれの名前は草原刃鳥で行きましょう!」
刃鳥が旋回して再び突進を開始する。狙いはまた聡だ。
「今回は防ぐわ」
舞が聡の隣まで移動し、何かを呟く。
すると聡たちを覆うほどの氷の盾が生み出される。
刃鳥は氷の盾の直前で突進の方向を変え、衝突を回避する。
そのまま上空での旋回に移った。
「刃鳥は飛ぶのが速いから、僕はタイミング勝負しかできなさそうです。何か策を思いつきますか?」
「今思いついたわ。私が攻撃を受け止めればいいの」
「大丈夫ですか?相手の威力は未知数ですよ」
「さっきあいつは氷の盾を避けていた。壊せないってことよ。なら十分止められるわ」
「分かりました。頼みます」
しばらくすると、刃鳥は上空から突進を始めた。
今回は舞を狙っているようだ。
聡はサポートに入れる位置に待機する。
舞は上を見上げ、何かを呟きながら刃鳥との距離を測る。
刃鳥が落ちてきて、舞の身体とぶつかる。
舞は金属鎧の他に、もう一つの半透明な鎧をまとっていた。氷魔法で作り出した即席の鎧だった。
舞はよろめきながらも、刃鳥を抱きかかえて離さない。その上から氷魔法で凍らせていく。
やがて刃鳥が完全に凍りつき、舞の腕の中で煙に変わった。
「お疲れ様です、舞さん」
「月野さんもね」
2人はお互いをねぎらいながら小休憩を取った。
そこから1分もしないうちに、聡はモンスターの反応を捉えた。
「舞さん、あっちからモンスターが来ます。おそらく集団」
「分かったわ。連続で襲われるなんて運が無いわね」
「まったくです」
聡と舞は休憩を中断してモンスターの来る方向を見る。
モンスターは狼のような見た目をしていた。全部で4匹。
だが明らかに普通の狼とは違う点がある。
胴体から植物の蔦のようなものが生えているのだ。
「あれは草原蔦狼で行きましょう」
「分かったわ」
蔦狼は一斉に近づいてくる。
聡は粘着糸を撒いた後、舞の後ろに隠れる。舞は氷の大盾を作り出した。
蔦狼は粘着糸を避けながら近づき、最初の1匹が大盾の手前で止まる。
そこから胴体の蔦を大盾の上側に伸ばし、先端を絡ませた。
続く3匹の蔦狼は伸ばされた蔦を足がかりに大盾の上へと登り、聡たちに襲いかかる。
舞はすぐさま盾をドーム状に展開したが、1匹はドームの内側に入り込んでしまった。
「盾に集中して!僕が倒します!」
「分かった!」
聡は戦槌を捨て、ナイフを取り出す。
空いた手で粘着糸を蔦狼に発射する。
蔦狼は蔦を器用に操って粘着糸を絡め取る。
そして粘着糸が付着した部分を自切して放り捨てた。
みるみるうちに蔦が再生してゆく。
聡は蔦の完全な再生を待たずに前に出た。
蔦狼がこちらに蔦を伸ばしてくる。
聡はジャンプで蔦を躱すと、半回転してドームの天井を蹴った。
その勢いを使って蔦狼に蹴りを放つ。
蔦を伸ばした直後ということもあり、蔦狼は反応できなかった。
胴体に聡の足がめり込む。
聡はそのまま馬乗りになり、蔦狼をナイフで切りつける。
何度目かの切りつけで蔦狼は煙に変わった。
氷のドームの中で聡たちは作戦会議をする。
「蔦狼と戦ってみてどうだった?」
「やっぱり蔦が厄介ですね。切ってもすぐ再生するから、無視して力押しが安定すると思います。」
「分かったわ。細い入り口を作るから、そこで1匹ずつおびき寄せましょう」
舞は言葉通り、ドームに蔦狼1匹が1匹ずつしか通れない大きさの穴を開ける。
しかし蔦狼は中に入ってこなかった。穴の付近で中を観察しているようだ。
「やっぱり頭が良くなってますね。ある程度は正面から行くしかないようです」
「そうね。じゃあ、ドームを一気に消すしかないわね。それと、消す前に相手の足元を凍らせるわ」
「分かりました。僕は右から叩きます」
「じゃあ、カウントダウンで行くわよ。3、2、1!」
蔦狼に対して、地面沿いに冷気が襲いかかり、足元を凍らせる。
その直後にドームが解除され、聡と舞は蔦狼に襲いかかる。
2人がそれぞれ1匹を撃破し、最後の1匹に攻撃しようとしたところで、聡は違和感を覚える。
周囲を見渡す。上空に2つの影。片方が舞に向けて落ちてくる。
「舞さん!」
「きゃっ!」
聡は咄嗟に、蔦狼にトドメを刺そうとしている舞に覆いかぶさる。
その直後、舞の首があった辺りに刃鳥が通り過ぎた。
「刃鳥が2匹います。敵の来るペースが早すぎる。撤退しましょう」
「分かった。出し惜しみなしで行くわ」
出てくるモンスター1体1体には対処できる。
だが、囲まれると対応しきれない。聡は今までの経験からそのことをよく知っていた。
そこから聡たちは撤退を始めた。
追ってくるモンスターを氷魔法と粘着糸で足止めし、時には倒しながら2層中部へと戻った。
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