第24話、新しい鎧
ダンジョンに入った聡は舞の新しい鎧を観察する。
一般的な全身鎧と違って、体の外側に括り付けるような形で、聡のプロテクターにも似ていた。
身体の前面はカバーできていたが、後面はカバーできていない部分が多かった。
「全身防御を固めるというより、要所を守る形なんですね」
「そう、本当は全身鎧にしたかったんだけど、金属が足りなくてこんな形になったのよね。
最低限急所と手足は守れるから許容範囲ってところかしら」
「僕は機動性とのバランスが取れていると思います。
後ろから奇襲を受ける場面はなかなかないですし、あっても僕のスキルで気づけますから前面を中心にしたのは良い選択でしたね」
「そう言ってもらえると嬉しいわ。さっそく実戦しましょう。
この金属は軽いから着けていても負荷が全然無いのよね」
「分かりました。行きましょう」
聡たちは2層中部までやってきた。
「じゃあまずは大蟹と戦いましょう。あの泡を受けて耐久試験と行きましょう」
「僕の探知はよほどのことがないとモンスターを区別できないんです。
だから蟹だけを探すのは難しいですね」
「じゃあどんなモンスターでも良いわ」
舞は新しい防具が嬉しいのか、明らかに前のめりな姿勢になっていた。
聡はそれを咎めない。一過性のものであること、戦力的には余裕があること、楽しみを邪魔したくないという感情が聡をそうさせた。
聡たちはしばらく歩き、モンスターを逆魔力探知に捉える。
「あっちの方向、1匹います」
「分かった。ほかの反応は?」
「ありません。奇襲は警戒しなくて良さそうです」
「じゃあ行きましょう」
聡たちは泥に隠れたモンスターに近づくと、舞の氷爆弾で戦闘を開始する。
姿を現したモンスターは、湿地ワニだった。
体高は人の膝上程度だが、全長は人の背丈をゆうに超えていた。
「耐久試験には向いていなさそうですね」
「そうね、あれに噛まれるのは遠慮したいわ。さっさと倒して、次行きましょう」
ワニは大口を開けて聡たちに突進してくる。
舞は氷柱を作り、ワニに打ち込む。
ワニは突進を中断し、身体に力を込めるような素振りを見せた。すると体が銀色に光る。
直後、氷柱がワニに命中した。氷柱はワニには刺さらず砕けた。
「硬化系のスキルかしら、次は凍らせるわ」
「いえ、僕が行ってきます。舞さんは魔力を温存してください」
「分かったわ」
聡が前に出る。ワニは大口を開けて待ち構える姿勢をとった。
聡は戦槌を振り上げつつゆっくり近づく。
聡とワニの距離が5歩を切ったタイミングで、ワニが聡に飛び掛かった。
聡は予備動作なく左に避ける。魔力噴射による移動だ。
攻撃を空振ったワニは、すぐさま銀色に光る。
聡はワニの顎に向けて戦槌を振り下ろす。
硬い感触が手に伝わり、ワニの上顎が少しだけへこむ。効いている様子はまったくない。
聡は1度下がり、作戦を立てる。
先ほどは、打撃なら内部に衝撃が伝わると思い殴った。
しかし、硬化した表面が外骨格のような役目を果たしているのか、大きな効果は得られなかった。
加えて、硬化している間は2回とも動きが止まっていた。つまり安全に近づくチャンスでもある。
「次は硬化を解いた瞬間を狙おう」
聡は再びワニに近づく。ワニは先ほどからほとんど動いていない。
聡が近づいても、見つめるだけで動かない。
聡は魔力噴射も使った大ジャンプをしてワニの頭上を取る。
ワニが硬化を使う。硬化したワニには攻撃が効かないということは分かっている。
聡は攻撃する代わりにそのまま着地し、ワニの背中中央に戦槌をゆっくり押し当てた。
数秒間は何も起きなかった。
ワニの表皮から銀色がではなくなった瞬間、聡は全力で魔力噴射を発動し、戦槌でワニを押し潰す。
その衝撃でワニの背中の高さが半分ほどになり、煙に変わる。
聡が魔石を拾っていると舞が話しかけてくる。
「お疲れ様。魔力噴射の使い方、さまになっていたわよ」
「ありがとうございます。特訓した甲斐がありました」
その後、湿地大蟹を見つけた舞は聡のサポートの元、思う存分スキルの泡を受け、鎧の使い心地をチェックした。
「舞さん、泡を食らいまくってましたが、怪我はありませんでしたか?」
「大丈夫、無傷よ。この鎧、衝撃吸収性能はあまり無いわね。むやみに攻撃を受けるのはやめたほうがいいかも」
「僕が言えることじゃありませんけど、身体は大事にして下さい。
……そろそろ、深部まで行ってみますか?」
「そうね。スキルも鎧も増えたし、挑むにはいい頃合いよ」
2人は2層深部へ向けて進み始める。
進むたびに木々がさらに減り、完全に無くなる。
足元は泥と沼から乾いた地面、そして短い草に変わってゆく。
最後には見渡す限りの緑。2層深部は、草原だった。
「2層は全体的に変わり目の景色が良いわね。2つの地形がグラデーションになってる感じがあって良い……」
舞はカメラで周囲を撮影しながら独り言をつぶやく。
聡は無言で周囲を警戒する。
中部以上に視線を遮れるものが少ない。
つまりモンスターから見つかりやすいということだ。
「月野さん、もう少し景色を楽しんだら?索敵でモンスターが近づくのは分かるんでしょう?」
「近づいてくるのが分かることと、対処できるのは別です。
それに、初めて戦うモンスターはどんなスキルを持っているか分かりません。警戒して損はありません。
……ほら、早速1匹来ましたよ」
聡は戦闘態勢を取る。
「後で撮影の時間をとってもらうからね」
舞もカメラをしまい、聡に続いた。
執筆のペースが上がってきたので明日から毎日投稿します。また変えるときはあとがきと活動報告でお知らせします。
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