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第23話、大猿戦後

 舞は大猿を倒したあと、ドロップ品も確認しないまま一直線に聡の元へ向かう。

「月野さん、大丈夫!?」

「あんまり大丈夫じゃないですけど、命に別状はありません。

 今腕が使えないので、僕の腰の左のポケットのポーションを飲ませて貰えませんか?」

「……今回はこっちを使うわ」

 舞は自分の中級ポーションを取り出して聡に飲ませる。

 一瞬の間を置き、聡の両腕が完全に治った。

 

「ありがとうございます、舞さん。でも中級ポーションまで使う必要ありましたか?」

「低級だと3本は使わないと治らないくらいのひどい怪我だったわ。

 治るのが遅れて後遺症が出たら困るでしょう?」

「分かりました。お気遣いありがとうございます」

「お互い様よ。私も大猿を落としてもらえなかったら負けてたと思うわ」

「僕も、その後大岩から助けて貰ったので感謝してます。」


 聡と舞は一通りの治療を終え、改めて大猿のドロップ品を確認しに行った。

 そこには魔石と金属塊があった。

「モンスターはこんな物もドロップするのね……」

「非常に低い確率らしいですが、人工物のようなものもドロップするらしいです。

 僕も実際に見るのは初めてですけどね」


 とりあえず聡たちは金属塊を持って地上へと進む。

 氷魔法で担架のようなものを作り、それを2人で運んだ。

 その金属は聡の戦槌より大きかったが、戦槌より軽く、運ぶのは難しくなかった。


「ドロップした金属は加工することができると聞いたことがありますが、具体的にどうすればいいのか分からないですね。舞さん、何かご存じですか?」

「私も分からないわ。だからおじいちゃんに相談してみるつもり」

「では、この金属はツリーハウスまで?」

「地上がいいわ。結局、加工も売却も地上でするから運んでおきましょう」

 

「もし加工できるとしたら、この金属は舞さんの装備に使ってください」

「どうして?」

「さっきの中級ポーションのお礼もあります。

 それとは別に、舞さんには氷魔法があるとはいえ、盾役をやってもらっているわけですから防御力が高いに越したことはないと思います」

 

「月野さんは使わないの?」

「僕は回避重視の軽装ですから金属防具は合いません。

 攻撃も魔力噴射があるので、一撃の威力を出せる重めの武器のほうがスタイルに合ってます。

 だからこの軽い金属とはあまり相性が良くなさそうなんですよね」

「分かった。ありがたく使わせて貰うわ」

 ダンジョンを出た聡たちはダンジョン館で鉱石を舞の家に送る手続きをした後、それぞれの家へと帰った。


 次の日、聡は探索用具店に向かい、戦槌を新調した。

 モデルは以前と同じものにした。

 スキルオーブを買ったばかりで金がなかったのと、大岩を叩くような事態はイレギュラーな事だと判断したからだ。

 また同じようなことが起きない限り、まだ使い続けられるだろうと考えている。


 聡はその足でダンジョンへと向かう。

 目的は金だ。舞が自分に使ってくれた分の中級ポーションを返すために。

 長くソロ活動を続けてきた聡にとって、ポーションは命綱と同じだ。

 それを使わせたのだから、一刻も早く補填しなければならないという焦りが、聡を動かしていた。

 

 中級ポーションの値段は低級ポーションの約10倍。

 探索者の収入では1週間ダンジョンで狩りを続けてやっと購入できるほどの金額だ。

 舞は防具の完成を待つため1週間はダンジョンに潜らないと言っていた。

 だから、その待機時間に稼ごうという算段だ。


 1層深部でひたすら狩りをする。

 ここは、リスクを取らない探索者や食料品目的の探索者がいないこともあって、モンスター密度が高めだ。

 そのため、ある程度以上の探索者にとっては良い狩り場だった。

 

 聡は出会ったモンスターを全て煙に変えながら走る。

 その途中で魔力噴射も加え、更に加速した。

 この1週間を魔力噴射の修練にも充てるつもりだからだ。

 今回の目的は柔軟な出力操作と身体操作だ。

 出力操作は文字通り出力の操作、身体操作は身体から直接噴射する使い方をそう呼んでいる。

 

 出力操作は、最初は戦槌の素振りで鍛える。

 コントロールできるギリギリの強さと最小限の強さを交互に噴射。

 次は中間の威力で噴射する、それが出来たらまたその中間、というふうに出力のグラデーションを細かく分割し、1つずつ使えるようにする。

 そしてモンスター相手に実戦の動きをしながら出力調整をする練習をする。

 最後はそれをひたすら繰り返し、意識しなくとも望みの出力を出せるように身体に覚え込ませた。

 

 納得がいくまで出力操作を練習した聡は、身体操作の練習に移る。

 まずは魔力噴射を使いながら歩くところから始め、次第に走る、ジャンプ、宙返りなど複雑な動作を織り交ぜていく。

 その次は空中で加速したり、2段ジャンプなど、スキルがなければできない動きを試す。

 最後はモンスターとアクロバティックな動きをしながら戦った。


 鍛錬と狩りを繰り返しているうち、あっという間に1週間が経ってしまった。

 その途中で、戦槌が手からすっぽ抜けたり、モンスターの目の前で転んでしまったりした。

 しかし、なんとか1週間で中級ポーションを買いつつ魔力噴射の練度を上げることに成功した。

 ダンジョン館で合流したタイミングでポーションを舞に渡す。

 

「舞さん、前回頂いた中級ポーションをお返しします」

「必要経費だと思ってたけど、まさか補填してくれるとはね」

「チームメンバーだから助け合うのは当たり前じゃないですか。

 ダンジョンで魔力噴射の練習がしたかったので、そのついでです」

「ついでにしては額が大きいけど……ありがたく使わせてもらうわ。

 私の鎧も完成したから後で見てみて、驚くわよ」

「それは楽しみです」


 聡と舞はダンジョンへと入っていった。

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