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第22話、大猿戦2

「舞さん!」

 聡は糸を使って木から飛び降りた。空中から舞の様子を確認する。

 大猿の攻撃地点には氷と岩の破片が山のように積もっていた。

 舞の姿はない。

 聡は舞が生き埋めになったと判断し、大猿を退かせて掘り起こすことを決める。

 大猿は声に反応したのか、聡の方を見る。


 聡は地面に着地し、すぐさま走り出す。

 まずは大猿に対し、粘着糸を放つ。

 大猿は糸の前に手をかざすと、そこから人の拳ほどの岩を生成し、糸を防いだ。

 

 聡は防がれた糸を引き寄せ、先端の岩ごと振り回す。

 それを即席の投擲武器として大猿に放つ。

 投擲した岩は当たらなかったが、大猿を1歩下がらせることには成功した。

 聡はそのまま距離を詰める。大猿は逃げるように木に登っていった。

 

 聡は大猿の投げる石を盾で防ぎながら戦槌1本で瓦礫の山を掘り起こした。

 山のなかにひときわ大きな氷の塊を発見する。

 周りのものをどかすと、それは氷漬けのようになった舞だと分かった。

 自身の至近距離に氷魔法を展開したせいで、閉じ込められたような状態なのだろう。

 氷の中の舞と目が合う。舞は安心したような表情になり、氷魔法が解除された。


「ハァ、ハァ、掘り起こしてくれてありがとう。もう少しで窒息か圧死するところだったわ。」

「怪我はありませんか?」

「なんとか無事よ。追撃が来なかったのが幸いしたわね」

 聡は胸をなで下ろした。


 再び作戦会議をする。今回は押しつぶされるのを防ぐため、盾を固定せず行う。

「あいつのスキルは岩関係でほぼ確定でしょうね。

 作り出した岩を操作している素振りが見えないのを見るに、生成するだけなのかも」

「僕もそう思います。相手に全く近接の素振りが見えないのが厄介ですね。

 3次元機動をしてくるので追うのは難しい。

 どうにか地上におびき寄せて叩くしかないと思います」

 「おびき寄せる方法は……さっきみたいに遠距離攻撃を仕掛けてみましょうか。できなければまた考えましょう」

 「分かりました」


 聡と舞は地上に留まり、氷柱と投石、そして妨害のための粘着糸で遠距離戦をし始めた。

 大猿も投石をしてきたが、手数が違う。

 特に粘着糸は散弾のように発射できるため、大猿に何度も命中する。

 しばらくは、どちらも決め手に欠ける膠着状態が続いた。

 

 それを破ったのは大猿だった。

 大猿が投石を止め、枝から枝へ飛び移る。

 そして、その身体が聡たちの真上に来た瞬間、大猿のスキルによって大岩が出現した。

 大岩は重力に従い、落ちる。

 聡と舞は落下地点から離れるが、頭上にはまた別の大岩が出現する。

 

 大岩の落下と聡たちの回避が繰り返される。しかし状況は徐々に聡たちにとって不利になっていく。

 悪くなる足場や岩の残骸によって次第に動きが制限されていくからだ。

 聡はこのままでは勝てないと悟り、状況を打破する一手を考える。


 「舞さん、大猿は僕が落とします!」

 「分かったわ!」

 聡は戦槌を強く握り、その上から粘着糸で両手を固定した。

 木のそばに近寄る。そのまま足を止め、頭上だけを注視する。

 大猿が聡の真上の枝に着地し、大岩を出現させる。

 それこそが聡の待っていた瞬間だった。


 聡がやることは単純。全力で戦槌を振るうことだけ。

 全ての筋肉を使い、そして全力で魔力を噴射する。

 戦槌が木の幹にぶつかり、幹が折れる。

 木の大部分が消え、大猿が空中に投げ出される。


 大猿は空中へ放り出された。しかし、生成された大岩は消えず、聡の真上に残っている。

 大岩を避けようにも魔力噴射の反動で足が地面に埋まりかけていて、すぐには動けない。

 大岩を砕くしかない。そう考えた聡は木が折れた後も魔力噴射を続け、頭上の大岩に向けて戦槌を振るう。

 戦槌と大岩がぶつかる。一瞬の拮抗の後、聡の腕が押しこまれる。

 聡は全ての力と魔力を振り絞って大岩を逸らそうとする。

 

「月野さん!」

 その瞬間、地面から氷の柱が生えてきて、大岩を支える。舞の氷魔法だった。

 聡はなんとか足を地面から抜き、大岩の下から抜け出す。その瞬間、後ろで大岩が地面に落ちる音がした。

 聡は現状を確認する。戦槌は曲がり、両腕は折れていた。だが、生きている。

 

 聡は、大怪我をした自分から目を離せないでいる舞に向かって叫ぶ。

「大猿はまだ生きてる!トドメを頼みます!」

 ハッとした舞は大猿のもとへ駆け出した。

 岩の破片で不規則な地面の凸凹を氷魔法で均しながら最短距離を走る。


 大猿が体を起こす。それと同時に舞は大猿の元へ到着した。

「ここからは1対1ね」

 舞は防御に回らない。防御に徹すれば、大猿はまた木の上に登り、今度こそ負けてしまうから。

 舞は聡が作ったチャンスで倒し切ることだけを考えていた。

 

 大猿は両手に岩を握り込み、それを振り回して攻撃してくる。

 舞は1歩下がり、全力で氷魔法を放つ。

 空中から襲いかかる氷柱、舞から放たれる冷気、地面から生える氷の棘。

 これらすべてが一斉に大猿へ向かう。

 大猿は両手の岩で氷を砕いて防ぐ。だがすべては防ぎきれない。


 そこで大猿は両手の岩を捨て、手のひらを舞の方向へ向ける。

 そこから厚い板状の岩を生成し、舞からの攻撃を遮断した。

 舞の攻撃が数秒間岩に当たり続けるが、岩はびくともしない。

 その瞬間、壁の上に突如として舞が現れ、大猿に飛びかかる。

 舞が壁の上に現れた理由は単純だ。岩に隠れるように氷の階段を作り、ほかの攻撃を囮にしながら登ったのだ。

 大猿は反応できないまま舞のロングソードに体を貫かれ、内部から凍りつき、煙に変わった。

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